死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第88話〜王手〜

「奥義 空間斬」

 その技は二アスに傷をつけた。

「バカな」

「これは俺たちの研鑽の証だ。お前をいつか殺す為に積み上げてきたものだ。さあ、眠りにつけ。怠惰の王」



「俺の勝ちだ」

 二アスの前でシバは膝をついて倒れ込む。初めは圧倒的にシバが優勢だった。だが、時間が経つにつれてそれは覆る。二アスには無数の傷ができていたが、それ以上にシバはボロボロだった。

「素晴らしい技だった。空間を切り裂くなど、人間が達していい領域を超えている。だが、俺を殺すほどではない。俺は人間をやめた。地力が違う。一撃で仕留められない時点でお前の負けだ。目は慣れる」

「俺は、俺たちはこの時の為に」

「さらばだ。シバの名を受け継いだ王よ」

 二アスの刀が振り下ろされる。

「すまない。先代達」

 カキンッ

 諦めを口にしたシバだが、体は違っていた。いや、刀に引っ張られるように腕が勝手に動いていた。

「そうですね。最後に一足掻きといきましょう」

 シバは立ち上がり刀を鞘にしまう。そして、抜刀の構えを行う。

「無駄なことだ。体もとっくに限界だろう」

 二アスも同じく、抜刀の構えをとる。

「奥義 空間斬 乱れ」

「奥義 万閃」

 激しい撃ち合いの中に何かが割ってはいる。

「「モンブラン?」」

 両者刀を止める。だが、司は細切れになっていた。

「何故このようなことを?」

 シバは理解が追いつかない。唖然としているシバの目の前で、司は瞬時に再生される。

「これが、魔王の力」

 シバはその光景に驚きを隠せない。

「姿が変わって強くなつもりか。お前では俺には勝てんぞ」

 二アスの言葉は少し震えていた。

「花音が危ない」

 司は刀を作り出し手をかける。

「来い。モンブラン」

「あり・・・・えない」

 二アスは事実を受け止められない。視界がずれ、地面に向かって落ちていく。抵抗することはできない。二アスの首は鈍い音をたてて地面に落ちた。

 司は最後の発動者の方へ向かっていく。その時、巨大な咆哮を聞いた。そして、それは全ての終わりを告げるものだった。

「ありがとう。シン」

 発動者の元へ到着すると同時に、アイネル達によってそれは殺された。

「俺たちの勝利だ!」

「「うおおおお」」

 雄叫びを上げるヴァンパイア達。だが、司の憎悪はまだ止まらない。すぐさま二アスの元へ戻り、頭を持ち上げ叫ぶ。

「さあ言え。ベラは! あのゴミ屑はどこにいる」

「あの、二アスはもう死んでいます」

 シバから司に呼びかけがあるが、叫ぶのを止めない。

「言え! 言ってから死ね」

 次の瞬間。二アスの目が開く。

「どうなってるんだ?」

 驚愕するシバ。だが、それは二アスも同じだった。

「俺は確実に死んだはず」

「黙れ! ベラは、ベラはどこにいる」

「ベラの場所はわからない。全てワープを使っての移動だったから」

 司のあまりの形相に、二アスは素直に答える。

「クソが。他にないのか」

 司は二アスの頭を何度も地面に叩きつける。

「あ、あいつは必ず戦闘を直に楽しむ。どこかに見えないワープゲートがあるはずだ」

「そうか。死ね」

 司がそう言うと二アスはそっと目を閉じた。そして、司は見つけた。肉眼では見えないような、ほんの僅かな空間の歪みを。

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