死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第71話〜謝罪〜

 ミナ王国の王城に4人が降り立つ。

「見つかったのか?」

 ミナの前に二人を寝かせた。

「そうですか。悲しいですね。捜索隊をひきなさい」

「はっ」

 モンブラン達は何も口にしていないが、ミナは悟ったように口を開く。

 大きな布に包まれたものが二つ。小さな布に包まれたものが二つ。察するなと言う方が無理な話である。

「よく見つけ出してくれました。本当に助けられてばかりです。それに対して、私たちは何もできていません」

「いいですよ。もう少し早ければ」

 モンブランを遮ってミナが口を挟む。

「それ以上言われるとこちらの立場がありません」

 言い終わると、ミナは二人の布を外し顔を確認する。

「間違いありません。マイとアイです」

 少し間を置いてミナが口を開く。

「それでも感謝しなければなりませんね」

 モンブランにはその言葉の意味が理解できない。

「こんなに綺麗な状態で返ってきたこと。拐われ無残な姿で返ってくる子達に比べれば、マシかもしれませんね。そう思いませんか?」

 今にも泣き出しそうなのを抑えた、怒りの混じった声。その言葉にモンブランは言葉を返すことができない。

「マイ! アイ!」

 しばらくの静寂を割って咲くように、少女のエルフが王女に入ってくる。

 二人のことを聞いてやってきたのだろう。少女は二人の傍で泣き続けている。

「どうして? どうして助けてくれなかったの?」

 少女は怒りの声をモンブラン達にぶつける。

「やめなさい! それを言うことは許しません。みんな辛いのです」

 ミナから想像もできないような怒声が飛び出す。

 だが、その声でも少女は口を止めない。

「約束したのに。どうしてどうしてなの?」

 よろよろと立ち上がり、モンブランの元へ進んでいく。

 部下の一人がモンブランの前に立ち塞がろうとすが、イチルがそっと体を引き妨害する。

 少女はモンブランの胸を何度も叩く。

「どうして? どうしてなの? 教えてよ? 二人が何をしたって言うの?」

 モンブランは何も答えない。

「二人はなんで死ななくちゃいけないの」

 やがて、力を失ったように少女は倒れ込む。

「どうして」

 モンブランは少女の頭に手を近づける。

 その光景を周りいた者は心配そうに見つめる。

 だが、ミナは違っていた。少しの間だけだが話していて分かったのだ。モンブランと言う人物を。その中にある、底無しの優しさを。

 モンブランは少女の頭にそっと手をのせる。

「ごめんな。僕のせいだ。僕がもっとはやく行動していれば、防げたかもしれない」

 その言葉に返事はない。

「必ず仇はとる」

「そんなの、必要ないよ。二人を返して」

 少女はボソボソと口にする。

「そうだな。仇をとっても二人は返ってこない。すまなかったな」

 モンブランはそっと頭を下げる。

 その行動を見て、イチルもそっと頭を下げる。続いて残りの二人も頭を下げる。

 本来ヴァンパイアは気高く。誇り高い者。それが、エルフに頭を下げる。本来ならありえないことだ。その光景に殆どの者が驚愕している。

 その行動が、モンブラン故なのか。相手のことを思った自発的なものなのか。それは本人たちにしか分からないだろう。

 頭を上げてモンブランは外へと歩いていく。

「少し落ち着いたらまた来ます。その時にでも、今後の話をしましょう」

「ありがとうございます」

 ミナもモンブラン達に頭を下げる。

 門を出て少し進んだところで、モンブランは足を止める。

 次の瞬間。自分の体を全力で殴りつける。

 モンブランの半身は消し飛び、周囲は真っ赤に染まる。

 すぐにモンブランの体は元通りに復活する。

「すまない。鬼人化が終わりそうだったから」

 納得した様子の二人。そして、全てを悟っているかのような、イチルがそこにはいた。

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