死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第60話〜策略〜

 朝になり、エルフと男たちは目を覚ましていた。

 事情の説明を求めても、男たちが口を割ることはなかった。

 エルフたちは何かに怯えて、口を開こうとはしない。


「行き詰まりですな。彼らが口を開いてくれない事には何とも」

「そうですね。でも、昼ごろにはシーナさん達が来るという連絡もありましたし、そこで改めて話を聞くのもありでしょう」

 昼ごろになり、ミナ王国からシーナとその一同。合わせて九十ほどのエルフが武装をして訪れた。

「門を開けろ!」

 口調も態度も明らかに違う。何か嫌な予感がする。報告を聞いた幹部たちを緊張がめぐる。

「まあいいさ。通してください」

 エルフを引き渡すことに変わりはない。そして、ミナ王国の機嫌を損ねるようなことをしたわけでもない。どっしりと構えておけばいい。司はそう思っていた。

「同胞を返してもらおう。綺麗な顔をしていても所詮は魔王ということだ。やましいことがあるからこそ仮面を外しているのだろう。証拠は挙がっている」

 ミナ王国との国交も深まり、いつまでも仮面をつけているわけにもいかない。と思い仮面を外していた司なのだが、何か勘違いしているようだ。

「どういうことだ?」

 司も理解が追い付かず、説明を求める。

「ケイネル魔法国からヴァンパイアがエルフを誘拐していたという情報が来た。さあ、同法を返してもらおう」

「え? 俺達の手紙で来たのでは?」

「なんの話をしている。同胞を返せ!」

 夜のうちにミナ王国に送った手紙はどうやら届いてないらしい。

「何か勘違いをしています。我々は二人のエルフを人間から保護したんですよ」

「なら、早く二人を連れてこい!」

 奥の部屋からバルクに連れられて二人のエルフがでてくる。

「やはり誘拐していたな」

「だから、話を聞いてください」

「まあいいさ。二人から話を聞けばすべてわかることだ。覚悟しておけ」

「何があったの? 話してみて」

 シーナは二人を抱きしめそっと話を促す。

 すると、驚愕の一言が二人のエルフから飛び出す。

「この人たちに急に襲われました。ヴァンパイアです。間違いありません」

「なんだと?!」

「やはり黒か。いい顔して私達の国に近づき、エルフをさらうのが目的だったか。許しはせんぞ」

「誤解だ。この人間たちが誘拐していたのを助けたんだ」

 とらえた男たちを部屋から連れてくる。

「こう言っているが、どうなんだ?」

「違う。この人たちは私たちを助けようとしてヴァンパイアと戦ってくれた」

「バカな!」

「だそうだ。脅して違う答えでも言わせようとしていたのだろう。反吐がでる」

「そんなことはない! 信じてくれ」

「他の国の魔王の言葉と自身の国の民の言葉、どっちを信じるかは明らかでしょう。またいずれ来ます。その時は必ずこの国を潰します。こんな国と国交をしようとしていたとは、恥ずかしくてしょうがない」

 シーナ達一行はすぐにモンブラン王国から去っていった。

「クソ! どういうことだ」

 司が怒りを口にする。

「辻褄が合いすぎています。我らの手紙の件もそうですし、あのエルフたちも記憶障害とは思えません」

「そうなら、誰かが裏で糸を引いているんだろうな」

「確かにその可能性が高いな。この男たちを使い、我らが不利になる状況を作ったのじゃろう。そして、その可能性がもっとも高いのは」

「「ケイネル魔法国」」

「状況によれば誘拐しているように見えるかもしれないが、怪しすぎる。あんな夜に出歩いているなんてことがあるのだろうか。遠くの国の近くでたまたまとは」

「ですな。そして、それに気づかれることに気づかない国ではあるまい。その上で行動に移したということは、確実に潰す気で来る。ということは」

「全面戦争ですか」

「その可能性が一番高いですね」

「だが、誤解はそう簡単には解けんぞ。何かいい方法があれば」

 広間に静寂が訪れる。

「クソ!」

 数日後、モンブラン王国に手紙が届いた。

 我々ミナ王国とケイネル魔法国は同盟を結び、邪悪なる超合衆王国モンブランに宣戦布告を行う。

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