死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第47話〜残虐〜

「何を言ってるんだ?」

 ターレンは首をかしげて司の顔を見る?

「死ね」

 言葉と共に、狂気にも似た絶対的な殺意が司から解放される。それは禍々しく、世界中に轟く。それは魔王となった司からの、世界へのメッセージとなる。

 俺の邪魔をする奴は誰であろうと殺す!

 それを感じ取ったのは魔王ぐらいだろう。普通の人間や魔物は、押し寄せる悪寒にただ体を震わせることしかできていなかった。

「こいつヤバい! 一時撤退だ! おい! 何をしているお前たち!」

 ターレンの言葉に、他の三人は返答しない。三人とも抜け殻のように虚ろな目をしている。

「さっきの殺意に当てられたか。クソッ!」

 ターレンが移動を開始しようとしたとき、腹部に異常なまでの違和感が襲い掛かる。ターレンの腹部には腕一本分の風穴が空いていた。

回復ヒール

 瞬時に回復魔法を使い腹部の穴を塞ぐ。と同時に、次は右腕がなくなっていた。その間、司は一歩も移動していない。いや、ターレンの目では移動を認識することすらできない。速すぎるのだ。

「後悔するぞ! ベラ様はお前より何倍も強い!」

「黙れ」

 両腕を消飛ばされ、ターレンは地面に膝から崩れ落ちる。

 ターレンは瞬きなどしていない。だが、いつの間にか仲間の三人が司の頭上に移動していた。頭が一直線になるようになっており、司の一刺しで三人の頭を貫通する。まるで串団子のように。

 魔王の配下であるターレンですら、その光景には恐怖を感じていた。

 司は一瞬ではるか上空に移動する。そして、国全体を覆うぐらいの巨大な魔法陣を発生させた。

 その間にターレンは逃げたりしない。無駄だ。強者だからこそ分かっている。こいつからは逃げられない。

「眠れ」

 ターレンの頭上から無数の赤い雨が降り注ぐ。いや違う。赤い槍だ。それは当たったものを血へと変換していく。生物だけではない。家屋や、木々までもが変換されていく。

「ベラ様! 万歳!」

 ターレンや、国のものすべてが血に変換され、クレータの中央に集まる。

 降りてきた司は、血でできた池にゆっくりと入っていく。浮力に身を任せ、血でできた池に浮かぶ。

 ああ、虚しい。悲しい。

 やはり、司に出てくのはその感情だけだった。

 司は全ての血を吸収し、空を見上げる。

 今度こそ帰ろう。皆の待つところに。花音のいるところに。


「勧誘の件ですが、どうやら断られたようですね」

「そうね。四人の力も感じなくなった。殺されてしまったのね。かわいそうに。いつか必ず殺しに行くわ。新しい魔王さん」

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