死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第41話〜 過去〜

 あの日、俺達はこの世界に恐怖と共にやってきた。クラスごとの転移だった。

 そして、あの男と出会った。あの男は言った。

 この世界は魔物によって汚されていると。魔物は命を奪う悪そのものだと。魔王を殺せと。

 俺達は訓練を積んだ。何日も何日も何日も。

 初めて魔物を倒したとき、恐怖が達成感に変わるのを感じた。自分の力でこの世界が平和に近づく。そのことがたまらなく嬉しかった。

 ただただ殺した。殺し続けた。自分のステータスのために。自分が満足感を得るために。何体も、何十体も、何百体も何千体も。

 俺達は強くなった。向かうところ敵なしの最強の勇者パーティーになっていた。

 その後も殺した。たくさん殺した。平和のために魔王を殺すために。

 そして、その時はやってきた。魔王との決戦だ。

 クラスメイトの誰が死ぬこともなく、俺達は勝利をおさめた。魔王の残した言葉、その言葉がなければ歯車が狂うこともなかった。いや、狂うべきだったのだろうか。

 魔王は言った。何が楽しい? 領地を踏み荒らし、民の命を奪い、それが嬉しいのかと。泣いて命を乞うものの首を飛ばすことがそんなに喜ばしいのかと。何をしたわけでもない。ただ暮らしていただけで殺される気持ちが貴様にわかるのかと。

 それはただのきっかけだった。今まで気づかないふりをして、自分に言い聞かせてきたことが間違いではなかったのかと、心が揺らぎ始めた。
 
 俺は魔王になっていた。俺の何が変わったわけではない。ただただ力が手に入ったことが、単純にうれしかった。そのことがさらに歯車を狂わせた。

 その後、魔物が悪ではないことを知った。独自で調査をして、パーティーの皆と魔物に会いにいったりもした。

 俺は語った。真実を。魔物が悪ではなく、共存できるのだと。魔物も襲われるから、人間を襲うのだと。

 だが、それは逆効果だった。俺はおかしくなったのだと言われた。魔王になったことで頭に異常が出ていると笑われた。勇者パーティーも魔王である俺にそそのかされていると。

 俺は諦めなかった。何度も何度も何度も、真実を語った。その度に笑われ、罵倒されようと諦めることはなかった。

 だが、いつからか変わっていった。俺ではなくクラスメイトが。本気で疎んでいる。そんな表情に変わっていった。

 ついに、歯車が外れ、暴走が止まらなくなる日が来た。俺は襲われた。襲われたんだ。クラスメイトに。ちょうどパーティーがいない時を狙われて、一斉に。

 俺はクラスメイトの中で危険人物になっていたら。魔物は悪ではないと言い、おまけに魔王である。危険じゃないほうが無理があったのだろう。

 俺は自分を守るために剣を振るった。しょうがないことだと自分に言い聞かせた。今までに笑われ罵倒されたことが、関係あるかもわからない。だが、初めて人間を殺した。そこからはよく覚えていない。

 気が付いたときに目に入ったのは、肉塊になったクラスメイト。そして、血だらけになった自分だった。

 パーティーの皆は俺を責めなかった。だが、そこで責めてくれていれば何か変わったかもしれない。

 いつかあの男、人間を騙すヘルメスの命を奪うと誓った。魔物を守っていくことも。そこからは繰り返しだった。召喚されてくるものを探し、洗脳されているかを探り、されているならば殺す。

 さまざまな魔物が仲間になった。国は発展し、活気が出てきた。その者達の助けも借りながら、召喚されてくる人間を殺し続けた。


 今回もダメだ。そう思っていた俺の前にイレギュラーな存在が現れた。そいつは守護者を名乗り。強大だった。かつて敵なしだった勇者パーティーでも足元にさえ及ばなかった。

 俺は仲間を失った。大切な友を。幾度となく困難を乗り越えてきた親友たちを。愛する者さえも。

 奴は言った。俺が悪いのだと。俺は間違っていたのか? そんなことが誰にわかる! 俺はそうするしかなかったんだ! 俺だって本気でやってきた! この世界がよくなるように必死に行動してきた! その結果がこれなんて、悲しすぎる。

 俺はここで終わるんだろうか。いや、それでいいはずがない! 愛する者を、友を失って終わるわけにはいかない! 

 必ずあいつを、モンブランを殺す!

 力を貸してくれ、皆!


「お前は絶対に許さない。必ず殺す! 地獄の果てで後悔させてやる」

「それが本性か。良いぞ、俺の力の糧となれ。雑魚が!」

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