死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第39話〜守護者〜

 仮面の男の出現に、セイヤは距離をとる。

「守護者? ここはお前の支配領域ということか?」

「そういうことだ」

「司なの?」

 花音はモンブランに向かって声をかけるが、モンブランは反応しない。

「この人間たちに守るほどの価値はない! 今なら見逃してやる。さっさと立ち去れ!」

「それは、俺が決めるだ! あと、俺に指図するな」

「一つ言っておく。俺は魔王セイヤだぞ?」

「だからどうした? 俺の名はモンブラン。魔王へと至るものだ」

「よし分かった。全員!この男を始末しろ! その間に、俺はこいつらを殺す」

 セイヤの一声で、塀の上にいた戦士たちがモンブランのもとへと移動を始める。人間だけでなく、様々な種類の魔物が含まれていた。

 モンブランは、ゆっくりと両手を空に掲げる。

赤い雨ブラッド・レイン

 モンブランの声と共に巨大な魔法陣が空に出現する。インテグラル王国すべてを呑む込むような、規格外の魔法陣だ。

「まずい! 全員、守護魔法を使え! 待っていない者は全力で退避しろ!」

 セイヤの焦った声と共に、真っ赤な雨が国中に降り注ぐ。

「さあ、死ね!」

 退避が間に合わず、一滴でも雨に触れた者は例外なく絶命する。普通の死に方ではない。全身の血が抜けたように、干からびている。

「あいつ! モンブランなんて名前聞いたことないぞ」
「ですね。ヴァンパイアなのは確定なんですが」

 セイヤと、セイヤに触れている四騎士は雨が通過していて効果がない。他にも防御魔法によって雨を防いだ者達もいたが、魔王軍の数は半分近くまで減っていた。

 雨が止んだと同時にセイヤと四騎士が一気に行動を開始する。

「あれだけの魔法を使えば魔力がきつい筈だ。今のうちに叩く! 他は後回しだ」
「久しぶりに楽しめそうな相手だな」
「勇者パーティー復活だ!」

 セイヤがモンブランの懐に突っ込み、一気に斬りかかる。モンブランは剣でセイヤの一撃を受け流す。と同時に、セイヤの背後から魔法が飛んでくるが、ギリギリのところで体をよじらせ回避する。体勢の崩れたところで、上方から大量の矢が降り注ぐ。

「守護!」

 モンブランは中級の防御魔法を発動する。

「力を貸せ、我が剣! 我らに勝利を!」

 セイヤ達五人の武器が輝かしい光を放つ。モンブランが発動した魔法がセイヤによって砕かれる。

「くそ!」

 崩れた体勢から、剣を構えて降り注ぐ矢をしのぐ。

 モンブランの意識が矢に向かった瞬間、両サイドから騎士が襲う。モンブランも反応が出来ず、体を槍で貫かれる。手首を狙い動きを封じるように貫かれたことで、身動きが取れない。大量の矢がモンブランに降り注ぐ。

「トドメだ! 勇者の一撃セイバー!」

赤い盾ブラッドシールド!」

 モンブランは上級の守護魔法を発動する。

「どれだけ魔力があんだよ。だが、それは想定済み。奥の手は最後まで取っておくもんだよな」

 セイヤは攻撃を放つことなく、体をどける。そこには巨大な魔法陣が展開されていた。そばにいたセイヤの剣の光によって、背後で何が起こっているのか分からなかったのだ。

太陽の一撃サンシャインフレイム!」

 小さな太陽ともいえるような、巨大な火球が目の前に発生する。

「死ね! ヴァンパイア」

 モンブランの発動したブラッドシールドに、騎士が放った魔法が激突する。シールドが砕けたと同時に火球も消滅する。

 だが、モンブランには息をつく暇もない。身動きが取れないところに、一本の矢が当たる。矢から魔法陣が発生した。モンブランはこれが、魔法の発動を阻害する魔法であることを察知する。

「これで王手だ。さようならモンブラン。お前は中々強かったぞ。すぐに守護対象も送ってやるから少し先に逝け」

 セイヤの剣がさっきよりも強い輝きに包まれる。

勇者の勝利アロンダイト!」

 その剣は狂いなく、モンブランを襲う。モンブランの体は綺麗に両断された。

「きゃああああああ! 司が、司がああああ!」

 その姿を見て、花音は絶叫していた。

「こいつ強かったな。一対一だったら絶対に負けてた」

 一人の騎士がつぶやく。
 
「そうだな。予想よりずっと弱いよ。お前ら」

 五人が声の方に向くと、そこには傷が癒えたモンブランがたっていた。

「魔王を含めた五対一でこれか。これなら余裕そうだな」

 さっき降った雨が、倍ぐらいの量になってモンブランのもとへ集まり始める。それは、さっき干からびた者達の血であることは誰の目からも明らかだった。

 モンブランの足元から全ての血が吸収される。体が赤く発光し、赤黒い模様が体中に浮かぶ。

「鬼人化!!! こっからは少し本気だ。楽しませろよ。元!勇者御一行様」

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