死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第33話〜誓い〜

「珍しいな。神祖までご登場とは」

「そういうことだ。神祖様と俺達が相手で勝てると思ってるのか?」

 圧倒的自信の表情を浮かべるヴァンパイア。魔王に対して向けられているとは思えない表情からも、実力があるのは明らかだった。

「まあいい。今日は十分楽しめた。楽しみは最後まで取っておくとしよう。いつか必ず滅ぼしてやるよ。この借りはいつか返すぞコウモリ!」

 シンは言い放ち、クレーターを悠々と歩き消えていく。

「ああいう挑発はよくないですよ」

 フードを被っていたヴァンパイアがフードをとる。その姿は、魔性の女といわれるもの、そのものだった。

「申し訳ありません」

「流石は魔王といったところでしょう。この数でも戦っていたら痛み分けでしょうね」

「そんなことはありません!我らの力があれば……」

「黙りなさい。私たちは完璧ではありません。うぬぼれは足をすくわれますよ。さあ目的を果たしましょう」

 数体のヴァンパイアが司に向かって移動を始める。

 バルクは理解する。ヴァンパイアの発言が本気であることを。神祖とは本来、姿を現すことはないヴァンパイア。口ぶりや服装からもそのヴァンパイアが目の前にいる。

「やめろ! モンブラン君に触れるな! その子は人間だぞ!」

「分かっています。サイクロプス族の王よ。あなた方の仲間もこちらで保護をしています。皆さん無事ですよ。話は帰ってからにいたしましょう」

「スリープ」

 バルクは急激な眠気に耐えられず、意識を手放す。

「ほんとにこいつであっているんですか? ただの抜け殻のように見えるんですが」

「大丈夫です。この方は強い。必ず我らの王となります」

「了解です」

「スリープ」

「目的は果たしました。帰りましょう」

 ヴァンパイアたちはバルクと司を背負い、薄暗い森の中へと消えていく。


 司は、見慣れた場所で目を覚ます。
 
「なあ、君は何がしたいんだ? 逃げろって言ったのに」

「俺は強くなりたかった」

「そうだな。なら、なんで諦めた?」

「それは………」

「その程度なのか? 君が決めた目標は? 全てを守るって言ったのにあれは嘘か?」

「そんなことはない! 俺は全てを守りたい!」

「それがあの行動につながるのか? 笑わせるなよ! 命まで奪うことを乗り越えて、また諦めただろ?」

「…………」

「僕に代われよ。僕ならすべて守ってやれる」

「それはできない。俺は俺だ!」

「なら、少しは変われよ。このやり取りは何回目だ? 何度お前は諦めた? アインさんに見逃してもらったあの日、花音を守ると誓って飛び出したんだろ。その思いを思い出せ!」

「そうだったな。俺は強くなるんだったな。すべてを、花音を守れるぐらい強く。そのために手段は選ばない。邪魔をする奴は…………」

「「殺す!」」

「僕はもう必要ないかな。その思いを忘れるなよ。僕」

「ありがとう。ゆっくり眠れよ。さようなら。俺」

 その日、司の中で何かが変わった。いや本来あるべき姿にもどったのか。その出来事が、この世界にとって良いことか、悪いことは誰にも分からない。

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