死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第17話〜魔物〜

「もっと飲め飲め!」
「君は恩人だ。食べろ食べろ!」

 時刻は夜。サイクロプスの村にて司の歓迎会として宴が行われていた。村には全員で二十体程のサイクロプスがいた。ルギスがどう説明したのかは分からないが、司は村の全員からすごい歓迎を受けている。ただ食べ物をあげただけなのに。司は驚くことしかできていなかった。話によれば、ルギスはこの村の長老の息子らしい。

 テウスぐらいのサイクロプスは見当たらず、どうやら村に一体だけの子供のようだ。やはり、村全員が親バカ? のような感じになるのもうなずける。

 でてくる飯も飲み物もおいしく、司は感激していた。あれ? そういえばテウスはお腹を空かせている様子だったのに、どうしてこんなに飯があるんだ? 司は疑問に思ったが言葉に出すのはやめる。仮に相手が無理をしていたとして、それを聞くのは失礼だろう。

 宴も終盤に差し掛かり、盛り上がりも収まってきたころ。司は木に腰掛け、一人で悩み事をしていた。これからのこと。どうすればさらに強くなれるか。花音を守るために。

「何か悩み事かな?」

 突然声をかけられる。司が声の方を向くと、年老いたサイクロプスがいた。ここに来てから初めて見る顔だ。

「そうですね。俺は司っていいます。どちらにおられたんですか?」

「儂は長老のオルドと申します。このように老いぼれですので、こういうのは少し抵抗がありまして。家にずっとこもっていました」

 オルドは笑いながら受け答えをする。本当に良いおじいちゃんのようだ。近くにいると安心する。老いの影響なのか、何かひきつけるものがあるように感じた。

「オルドさん。実は…………………」

 司はゆっくりと自分に起きたことを話し始めた。自分に何が起きたか、自分がどれだけ辛い思いをしたか初めて全てのことを伝えた。今まで他人にこの話をしたことはなかった。

「そうか。その若さでつらい経験をしたんじゃな。よく頑張った。よく頑張ったな」

 司はオルドに抱きしめられる。司の目には、いつの間にか涙があふれていた。やはり、誰かに相談した方が心が楽になるらしい。司は実感した。

「花音という子を守るためには、やはり自分の力を知ることじゃ。力に恐怖しているうちは、絶対に他人など守れん。力を使いこなすこと。それができれば君の夢に一歩近づくんじゃないのかな」

 アインの言葉をオルドに伝えたわけではない。だが同じような言葉が返ってきた。自分の力を知ること。それが今一番の目標だ。

「余計なお世話かもしれんが、死なないからといって無理はしないことじゃ。生物は心と体でできておる。どちらが欠けてもいけないんじゃ。誰かにのために自分を犠牲にできる。それはとても素晴らしいことじゃが、危険なことでもある。覚えておきなさい」

「ありがとうございます」

 二人の会話が終わると同時に、遠くから光が近づいてくるのを見つけた。

「なんだあれは?」

 司が首をかしげていると、オルドが大きな声をあげる。

「人間が来る!」

 オルドは急いでルギスのもとに走っていった。すると、ルギスが血相を変える。

「人間が来るぞ! 急いで避難しろ!」

 ルギスの指示で村の全員が移動を始める。司が眺めていると、再びオルドが近づいてきた。

「人間が来る。あの服はこの付近の国の物。インテグラル王国とは関係ないはずじゃ。ここに残っても大丈夫だとは思う。一緒に行くか?」

「行きます」

 司は少し悩んだが付いていくことを決断した。なんだかんだで居心地がいい。その場所を離れたくはない。オルドさんもいることだし。強くなるためには最高の環境だと司は思った。

 移動を開始して数分で、ルギスが何かに気づく。

「テウスがいない! 人間を怖がらないからこうなるんだよ! みんなは先に行っていてください」

 ルギスが急いで反転し、引き返していく。その後ろには村の全員の姿があった。振り返り、ルギスは戸惑ったったような表情を見せたが、すぐに前に向き直る。全員で助けに行くようだ。それだけテウスは大切にされているのだろう。

「ここにいたらいい。人間と戦うのは見てられんでしょう」

 オルドはそういうとルギス達についていった。ルギス達のさらに後ろを司はついていくことにした。

「死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く