神は思った。人類の7割をアホにして、楽しく見守ろうと

4.1 1.2 4.2

私は思った。彼はやっぱりMかもしれない

 
 私はショックな事があり、朝からテンションが下がり気味だ。それじゃなくて朝はテンション低いのに………

 なぜ私のテンションが下がっているのか。それは、登校してすぐのこと。私は教室に向かって廊下を歩いている時、前を蓮くんが歩いているのを発見した。

 私は朝、教室以外で会うのは珍しいと思い、肩を叩き「おはよう」と挨拶をした。

 その彼の反応が酷かった。

 私は肩を叩き、こっちに振り向いた時、軽く手を振ったのだが、その時すごくビクついていたのだ。

 確かに私は少しSぽい部分があるかもしれない。しかし蓮くんに対して叩いた事はないのだ。

 私が暴力を振るう女だと思われても仕方ないが、そう思われてると分かるととてもいい気分じゃない。そんな事がありテンションが下がっている。

 故に私は朝からため息が多い。意識して、ため息をやめようと思ってみるも、ため息をやめようと考えるだけでさっきの出来事を思い出し、またため息が出でしまう。一種の悪循環だ

 そんな時、ため息製造マシーンの私に津々井さんが心配そうな声で話しかけてきた。

「優衣っち、どうしたの?ため息ばかりついて。何か嫌事あったなら、相談のるよ?」
「津々井さん、ありがとございます。実はですねーーー」



「なるほど……暴力女だと思われて少し傷ついたと」
「はい」

「それならさぁ、今日一日蓮ちゃんに優しくしてみたらいいんじゃない?そしたら印象も変わるでしょ!!」
「なるほど、押してもダメなら引いてみろという事ですね。わかりました、やってみます!!」

 というわけで、今日は蓮くんに優しくしてみようと思う。

 まずは普段している弄りをやめてみよう。
 今は1時間目と2時間の間の10分休憩。ここは無難に次の授業の話を自然な流れで話そう

「ねぇ、蓮くん、次の授業って何か宿題とかあったけ?」
「いや、ないけど。てか小早川なら俺なんかに聞くより教科書を見たほうが早いだろ。どうせどっかにメモってんだろ?」

「まぁ………そうね」

 ダメだ!!  弄らない事を意識してなにも話せない。そもそも蓮くんとまともな話をした記憶がない。普通に話すってなんだっけ?  えっ?  分からない。  どうやったら普通に話せるの?

 私が黙りこんでいると、不思議そうな顔をしながら話しかけてきた

「なんだ、考えごとか?   あんまり考え過ぎると、ストレスで禿げるぞ〜」
「デコハゲにーー    ゴホン…………確かにありえるかもね、気をつけわ」

 危ない危ない、危うく弄るところだった。これでは相談に乗ってくれた津々井さんにも、申し訳ない。

 この作戦はやめよう。

 そもそもこれはレベルが高い。優しさを表すなら、話す内容より物を拾ったり、制服に着いたゴミを取るだけでも私の印象も変わるだろう。

 よし、これを実行しよう

 
 
 

 2時間の授業中に何回もシュミレーションしてきた事を実行する時、こういうのは怪しまれてはいけない。さりげなく立ち、さりげなく横を通り、さりげなく言葉を交わしゴミを取る。

 これなら無理に話すより、失敗するリスクは少ないだろう。

 ここで大事なのは無言で取らず、取る前に一言なにか言う事。無言で取ったら何か悪戯したと思われる可能性もあるからな

 私は意を決し、席を立ち  横を通り  ゴミを取り一言。

「蓮くん、ゴミ」

 我ながら素晴らしく自然に言えた。これなら少しはやさしい女になれただろう。もしかしたらこれだけで、やさしい女にランクアップできるかも!!

 そう思っていたのは私だけのようだ

「いきなりゴミはやめてくれ。弄られ続けた俺でも地味に痛い」

 現実はそう上手くいかない。

 小早川は工藤に触るか触った分からないほどソフトに触ったため、工藤にはゴミを取ってもらったという認識はなく「蓮くん、ゴミ」と言われたけだった。故にこんな反応なのだ

「そうゆう事じゃなくて………」
「??  どうゆう事だよ」

「師匠、弄りに理由を求めてはいけませんよ。理由があるとすれば、弄りたいから弄るのです。なので師匠も私の事を弄っていいですよ。性的に」
「いや、そういうの良いから。取り敢えず俺トイレ行ってくるわ」

「トイレですか?もしかして私と話しててムラっと来ちゃいました?  いいですよ、未来のお嫁さんとして、お手伝いします」
「いや、いいから。ついてきたら………今日1日無視する」

「これは俗に言う放置プレイ………そそります。師匠〜 待ってくださ〜い」

 行ってしまった……

 西園寺さんのおかげで思惑がバレる事はなかったが作戦は失敗してしまった

 まさか触った事に気がつかないとは……優しく触り過ぎも禁物のようだ。次は気をつけよう。


「て 具合で、作戦があまり上手くいってないんですよ」
「確かに上手くいってるとは言えないね。まず自分が得意な事からやってみたら?」

「私が得意な事……弄ーー」
「優衣っち、それじゃあ意味ないよね。優衣っちさぁ、勉強得意なんだから蓮ちゃんに教えてあげればいいじゃん」

「なるほど、それなら優しさアピールもでき、勉強出来るアピールも出来る。一石二鳥ですね!!  頑張ります」
「うん!!  失敗しないようにね」

 決意したものの3時間目は国語で私が教える事は特にない。しかし4時間目の数学の授業なら教える事が出来るかもしれない。


 3時間目が終わり、いよいよ4時間目の数学の授業。しかもこの時間はタイミングよく自習になった。どうやら神までもが私の味方をしているかのようだ。

 そして自習の時間。予想通り、蓮くんは数学の課題で頭を抱え悩んでいる。

 ここは私の出番のようだ

「蓮くん、何か解らない問題でもありました?」
「あぁ、ちょとこの問題が解らなくて」

「どれどれ……あぁ、この問題は、ここをこうしてこことここをかけて、その出た答えをここの数と足してあげると答えが出ますよ」
「なるほど、ありがとう。それにしても今日の小早川、なんか優しいな」

 おお!! ようやく効果が出ました。ここまで長かったです。やっと積み上げてきた優しさアピールが報われ優しい女になる為の第1歩を踏み出すことができました。

「そんな事ないですよ。他にわからないところはありますか?」
「んんーー、じゃあここも教えてもらえる?」

「いいですよ!!  ここはさっきの問題の応用でーー」

 凄いです。普通に蓮くんと会話出来てます。怖がられる事なく話すなんて、なんて素晴らしい事なのでしょう。新鮮な感じがします。

 心なしか蓮くんもいつもより対応が優しい気がします。私が対応を変えるだけでこんなにも関係が変わるんですね

「どうした、今日の2人は仲がいいな」

 そんな幸せ絶頂の小早川の元に現れたのは相原だ。相原も工藤 同様、小早川に勉強を教えてもらいに来たようだ

「それがさぁ、今日の小早川の優しいだよ。勉強を教えてくれるし」

「ほほぉ〜ん、それはごく稀に発生するデレ期ってやつだな。デレ期はいつ終わるかわかんないから、しっかり楽しんどくんだぞ」
「へぇー、デレ期ね。デレ期が終わったらどうなんだよ」

「デレ期が終わったら………お前は死ぬ」
「はぁ?  何言ってんだ。冗談はケツ目だけにしとけよ」

「おいおい工藤くんよぉ〜   俺にそんな態度とっていいのかなぁ〜  工藤がどうなってもしらないから。本当に知らなよぉー  俺」

「い、今のはジョークに決まってるだろ。あれだよ、冗談はイケメンな顔だけにしとけってって言おうと思ったんだ。俺とした事が言い間違えてしまった。 ところで喉なんて乾いてないか?  昼にでもなにか奢ってやるよ」

「おお、わかってるじやない。まぁ、許してやらんでもない」
「じゃあ、俺がなぜ死ぬのか教えてもらおうか」

「それは…………俺が知るわけないだろ。しかし飲み物は買ってもらう。そう言う約束だからな!はああああああ」
  「クソ、騙されたか………(まぁ、この前奢ってもらったし、そのお返しでいいか)」

 そんなくだらない話を聞いているうちに4時間めのチャイムがなり、いつも通り蓮くんは購買にお昼ご飯を買いにいった。

 それにしてもさっきの時間はいい感じに接する事が出来た。これなら私に対する考え方も多少変わったことでしょ。

 そうだ、お昼はお弁当のおかずを少し分けてあげよう。そしたらどんな反応をするのだろう。蓮くんが驚く顔が目に浮かびます。

 蓮くんが戻ってくるまで時間がかかりそうなので、お手洗いにでもいこうかな

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 それにしても、今日の小早川はなんか変だ。さっきの数学の時間なんて、あんな風に小早川の方から教えてもらったことなんて、一度もないのに。仮にこれがデレ期だとしても、流石にデレ過ぎだろう。

 それとも、何か企んでいるのか………それか本当に俺は死ぬのか?  小早川のデレ期を体験した為に死ぬ?  流石に代償がデカ過ぎないか?  こうなったら、教室に戻ったら聞いてみるか。

 昼飯は買った事だし、後は相原の飲み物を買うのみか。自販機なら2学年の階にもあるから、そこで買うか。わざわざ人の多い1階で買う必要もないしな。てか、あいつ何好きなんだろう……まいっか。適当に買ってささっと教室に戻ろう。

 そして工藤は購買のある1階を上がり自販機のある2階へ向かった。やはりこの時間帯は人が少ない。大体の生徒が購買で食べた物を買うついでに隣の自販機で飲み物を買ってから各自の教室に戻るためである。

 俺は自販機の前に立ち、何を買うか迷っている。そんな自販機の前で腕を組み悩んでいると後ろから小早川の声が聞こえてきた。この時間は教室にいるはずなのだが………

「蓮くんどうしたですか?」
「小早川か、相原の飲み物何にしようか迷ってるだよ」

「律儀に買うなっていいんだか、悪いんだか…………はぁ、しょうがないですね。さっきのは私にも原因があるから、私も半分出しますよ」

「いや、別に良いって、これは相原へのお返しも含まれてるから、わざわざ小早川が出さなくても大丈夫だよ」

 しかし小早川は、俺の言う事を聞かずに投入口にお金を投下してしまった。

 俺はお釣のレバーを下におろし小早川にお金を返そうと思ったが、すかさず腕を掴み小早川が睨みつけてくる。

 今日の小早川は優しかったので、余計怖く感じてしまった。なので俺は、渋々受けてる事にした。今度小早川にもお返ししなければいけないな。

 そもそもこんな事が起こるのがおかしい。俺のためにお金を使うなんて、天変地異の前触れとしか言いようがない。

 ここはひとつ小早川に聞いてみるか……

「あの……小早川。優しくしてくれるのは嬉しいのだが、なんでこんな急に?」
「べ、別にいいじゃない」

 そんな事言われてもなぁ……気になるものは気になるんだよなぁ〜  あっ!

「津々井なら何か知ってるかも!!」

 えっ!?  今、津々井さんに聞くと言いました!?  たしかに津々井さんなら私のしようとしている事を知っています。というか、知ってるも何も、提案者でから、知ってて当然ですけど……それなら私から言った方が、後々印象がかわるのでは……

「あの!!  その、なんていうか……これは蓮くんに優しく接しよういう作戦で………」
「なんでそんなことを?」

「それは朝、蓮くんがあんな反応するから」
「あんな反応?」

 ………あんな反応………あんな反応………あんな反応………あっ、あれか

「あれは小早川にびっくりしたわけではないぞ。あれは天井からぶら下がってたクモにびっくりしてただけだぞ?」

「私の………勘違い?」

 その瞬間、私の顔は一瞬でタコように真っ赤になり、全身が熱くなるのを感じる。それじゃあ私がしてきたことは意味が………

「まぁ、あれだ。今日の小早川は優しくてよかったけど……俺の調子が狂うから、いつものSっけ満載の小早川に戻ってくれ」

「………………」

 意味があったのか無かったの分からないけど、いつもの私で良いってことですよね?わざわざ 優しいキャラを作らなくていいってことですよね?  じゃあ、いつも通りにしようじゃないか。

 そうですか………普段の私でいいんだ………

「蓮くん、ありがとう。どうやら私は変な勘違いをしていたようです」
「そうか。じゃあ問題も解決した事だし、教室に帰るか」

「その前に………ん」
「………んん??」

 小早川が手のひらを、俺の方に差し出してきた。これはなんだ、まさかデレ期はまだ続いていて、手を繋いで的な!?  

 まぁ……そんなことはなく

「なに、ぼーっとしてるのよ。さっきのお金返して下さい」
「えっ?  でもこれってーー」

「それとさっきから社会の窓空いてましたよ。しかもワイシャツが顔を出していました。恥ずかしいですね」

 工藤は下に視線を移す。そして俺は驚愕する。小早川の言った通り思いっきりシャツが飛び出している。

 俺に視線が集まるのは、てっきりモテ期が到来したのだと思っていたのだが、もう1人の俺の方に視線が集まっていたとは………勘違いしていた俺を殴りたい。

「まさか、蓮くんは自分がモテてると思ってたんですけ?  残念、視線が集まっていたのは変態的な意味で集まってたんですよ!!それともそうゆうのに興奮する変態ですか?  あっ、間違えました蓮くんはもともと変態でしたね、間違えてすみませんね、変態蓮くん」

 なぜ俺の考えいる事が分かる。怖いじゃないか。そして今日俺を弄ってない分、凄い勢いでいじりられ、俺のストレスメーターがぐんぐん上昇していく。

 それでも、いつもの小早川に戻っていて安心している俺もいる。やっぱり俺は………ドMなのか?





 はぁーー、弄るのを我慢してたから、つい沢山弄ってしまいました。

 それにしてもいつもの私がいいだなんて……蓮くんはやっぱりドMですね

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