銀色の雨
第1話 感情無き私に歌をⅠ
    二一〇〇年、エーレは十五歳の少女となった。
ここ、ユグネトコトとガシラトウの二つの国は、二〇四〇年から現在にかけて、戦争が続いている。
原因は一切不明、国民は訳の分からない戦争に日々怯えて暮らしている。
    まもなく、スターエギドナ、スターエギドナ。
地下の電車に揺られること半日、やっとスターエギドナに到着した。
スターエギドナはユグネトコトの首都にあたる場所で、この世界での唯一の技術先進国、エンジナルグローの技術が様々な場で使われている。その他にも、ショッピングモールやテーマパークなど、私の少し前まで住んでいたヤンバラロックなどの田舎では、あまりお目にかかれないような娯楽施設も数多く備わっている大都市だ。
    電車は徐々にスピードを落とし、《シューー...》という、空気が抜けるような音なのにとても大きい音がでる。不思議だ。
電車のドアが開き、中にいた人たちが滝のように一斉に外に出る。その中にはエーレはいた。
    外に出ると、大量の馬車が入れそうなほどの大きなドーム状の空間に出た。
また人ばっかり...でもないようだ。
人ばっかりと言われればその通りだが、そこには初めて目に入るものがたくさんあった。
    とてつもない大金をかけて作ったのだろう、大きな金の竜の像が所々に飾られている。
大きな柱の中に人がいて、上下に動いては、人が乗り降りしている。
そして人々が持ち歩いている手のひらサイズの薄い板のようなもの...。
......どうでもいい。
     私には人がわからない。
何故皆で集まって食事を取りたがるのか、何故初めて見るものに興味を持つのか、何故笑うのか。
私には、分からない。
    エーレは大きな柱の中に入り、最上階の地上で降りた。
外に出ると、強い晴天の日差しがエーレを照らす。しかし、日差しとは反対に、エーレの心は、モヤがかかっているように何も見えない。
辺りには祭りのように大勢の人たちが賑わっている。
そんな人たちとは裏腹に、エーレは1人、人気の少ない道の端を歩いた。
    そういえばエーレがここに来た理由は、国際女子戦闘員教養学校(通称国戦校)で、戦情娘になるためである。
戦情娘とは、戦場で女性が戦えるよう、戦いの神アテナが作り上げた兵器を己機心という。それを使い、戦う女性を戦情娘という。
何故、エーレが国戦校に通うことになったかというと...
それも分からない
分からない、けど、ここに来て...何かを成し遂げないといけない。
けど、それが何か分からない。
本能的なもの?強制的なもの?
分からないよ
でも、何かが私をここに連れてきた気がする。
確信はないけど、何かが呼んでいる。
だから私はここに来て、私はここで生きていくー
「あの...もしかして国戦校の新入生ですか?」
    1人で歩いていたエーレに話しかけてきたのは、女の子だった。
その子はエーレと同じくらいの年齢のようで、短い黒髪と藍色の制服と赤茶色のチャック柄のスカートがよく似合っていて、特徴的な白い靴と首元の大きなリボン...彼女はエーレと全く同じ格好をしていた。つまり、この子も国戦校の生徒なのだ。あと、胸が通常よりも大きく膨らんでいる。
    エーレは女の子の質問に対して、首を縦に降った。
「やっぱり!あなたも新入生!?実は私もなんだ~...。そういえば名前まだだったね!私はカトレア・セラトレア、よろしくね!」
そういい女の子は笑顔で笑った。
    私は女の子に対し質問をする。
「どうして笑うの?」
それが、私がここに来て初めて口にした言葉だった。
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