サイク屋

チャンドラ

未知との遭遇 パート2

サイク屋が定休日の日、工と次郎は河童が出現するという湖へと向かった。工は魚型のカメラロボットと他のいくつかの機械、次郎は釣り道具、デジタルカメラ、キャンプセットを持ってきていた。 湖に着いて、二人は河童捕獲作戦について話した。
「次郎、まずこの魚型ロボット(fishes)でこの湖一帯を探索させてみようと思うんだ。」
fishesと呼ばれるこのロボットはcatsと同様3体の機械である。 SNSでの河童の画像データをfishesに取り込み、河童と疑わしい生き物を検知したら工に知らせるという機能がついている。 水中に様子はfishesのコントローラを通じて見ることができる。 手動遊泳モード、自動遊泳モードが備わっているが、自動遊泳モードで探索しようと考えていた。
「ああ、工、それで頼む。 お前の機械作成の実力はロボコン部にいた時から知ってるからな。信頼してるよ。 俺はこいつで河童を捕まえてみようと思う。」
そういって次郎はキュウリを取り出した。
「河童にキュウリってベタだな。 そんなんで捕まえられるのか?」
半信半疑で次郎にたずねてみる。
「何もしないよりマシだろ。それに、SNSじゃ、キュウリを餌に釣りしてみたら、河童の腕を見たって人もいるんだぜ。」
そういうので、河童の捕獲は次郎に任せて、工は河童の撮影に専念することにした。工はfishesを湖に送り込んだ。
「さぁ、いってこい!」
それに続いて次郎も釣り糸を湖に投げ込んだ・
「よっしゃ、俺も! ほりゃ!」
こうして二人の河童捕獲作戦が始まった。

河童捕獲作戦が始まってから、1時間後、特に変化はない。
「なぁ、次郎、全くfishesに反応がないんだ。そっちはどうだ?」
「俺も全く変化なしだ。 釣り糸がピクリとも動かない。」
工はなげやりに呟いた。
「やっぱり、デマなのかな...」
すると突然、fishesから反応があった。
「なに!? fishesが発見したぞ!」
工はすぐさま、fishesのコントローラをみた。しかし、コントローラーからは砂嵐の映像しか見えない。
「どういうことだ...!?」
工は思わず呟いた。 すると、工は次郎の様子がおかしいことに気付く。
「どうした次郎?」
「釣りざおが急に重く...! これは普通の魚の重さじゃない! すまないが工、手伝ってくれ!」
そういわれ、二人で一緒に釣りざおを引っ張った。 すると、急に釣りざおが軽くなり引き上げるとキュウリが無くなっていた。
「次郎、これってまさか..!」
「ああ、工、おそらく河童の仕業だ。」
工は信じられないと思ったが、普通の魚はキュウリには反応しない。 とりあえず工は、fishesに自分のところに戻ってくるように指示をした。 すると、二人は驚くべき光景を目撃した。
「fishesのレンズが全部やられてる...!?」
そう、fishesの撮影するためのレンズが全て砕かれていた。 レンズが砕かれているだけなので、湖の中を動き回ることはできるが、撮影はもうfishesでは行うことができない。
「工、これじゃ撮影は不可能だな。 どうする一度引き上げるか?」
「いや、俺にいい作戦がある。 次郎、釣りざおを貸してくれ。それとキュウリがまだあったらそれもくれ。」
「え? わ、わかった。」
次郎から釣りざおを受け取ると、工は自分の鞄からヘルメットのような機械を取り出し、頭に装着した。そして、スイッチのようなものを次郎に渡した。
「俺が河童を釣り上げる。 俺が押せって言ったら、そのスイッチのボタンを押してくれ。」
そう告げると、次郎は不審に思いながら尋ねる。
「いいけど、このスイッチとお前が被ってる機械はなんなんだ。」
工は、次郎に身体能力倍増装置について説明した。 工は河童がキュウリに反応したら、身体能力倍増装置を使って一気に引き上げて捕まえてやろうと考えていた。 その作戦の趣旨を次郎に伝えた。
「なるほど、それなら確かにいけるかもしれないな! やってみよう!」
そうして工は湖に勢いよく釣り竿を湖に投げ込んだ。 30分間特になんの反応もなかったが、突然釣り竿が重くなった反応がやってきた。
「いまだ、次郎! スイッチを押してくれ!!!」
「分かった! 身体能力倍増装置起動!」
そう叫んで次郎はスイッチを押した。次郎もなかなかノリのいい性格である。 身体能力倍増装置が起動すると、体に力が漲る感覚が訪れた。しかしながら、これでもまだ、釣り竿を引き上げることができない。
「すまない!次郎も一緒に引っ張ってくれ!」
「わ、わかった!」
次郎も釣り竿を引っ張る手伝いをする。 身体能力倍増装置は力が2倍になるので、工が二人分と次郎の力で3人分の力で引っ張って行った。
「うりゃぁ!」
渾身の力を込めて、釣りざおを引っ張ると、宙に緑色の物体が舞うのを見た。 そう、それは紛れもない河童の姿であった。 あまりの衝撃に二人は固まっていた。背丈は1.5mほどで、頭には皿、肌は緑色で正に河童の姿である。すると、河童のような生き物が口を開いた。
「キサマラタダノニンゲン? デハナイナ?」
片言の日本語で話していた。
「やばい! 大発見だ! 写真撮らないと!」
次郎はポケットからスマホを取り出し、河童を撮影しようとした。すると河童は物凄い速さで次郎の元へと駆け出し、なんと次郎に腹に向かってパンチをかましてきた。
「あべし!」
そう叫んで次郎は気を失った。
「てめぇ!」
そう工は河童に向かって叫ぶと、河童は工に向かって、次郎のようにパンチをかまそうとしてきた。 工はそれをかわし、河童に蹴りをいれた。 まだ身体能力倍増装置の効力が続いていたからできた芸当である。 
「オマエ、ナニモノ? フツウノニンゲンデナイナ ヤツラノナマカナノカ」
河童はそういうと、物凄い速さで湖に向かって飛び込んでいった。 それと同時くらいに身体能力倍増装置の効果が切れ、体中に痛みを感じた。とりあえず、工は次郎の無事を確認してみることにした。
「次郎! おい大丈夫か次郎!」
次郎の体をゆすって安否を尋ねると次郎は口を開いた。
「ああ... 大丈夫だ.. 工、見たよな? 河童は本当いたんだな...!」
河童に腹パンされたのにも関わらず、次郎はご満悦な表情をしていた。Mか。
「ああ、そうだな。残念なことに写真は撮れなかったがな、また河童のやろうが襲ってくるかもしれないから、引き上げよう。」
そうして、工は湖を離れ、サイク屋に戻ってきた。 店につくやいなや、次郎はとんでもないことは言った。
「実は俺、お前と河童が戦ったところ撮ってたんだ。」
「な、本当か? いつの間に!」
すると、次郎は照れ臭そうに告げた。
「まぁ、なんだ、こんな機会逃すわけにはいかないから意地で撮影したよ。動画でな。 人間VS河童っていうタイトルで投稿したら、謝礼金たんまり貰えるな!」
「ははは、信じて貰えたらだけどな、次郎はまた、河童を捕まえに行くのか?」
「いや、やめておくよ。あの河童に勝てそうにないし。 それに河童が実在したってだけで十分収穫だしな! ありがとうな、工。 お前がいなきゃ、河童と会うことなんかできなかったよ。」
「俺も次郎のおかげで面白い体験ができたよ。ありがとうな。」
二人はお互いに感謝の言葉を送った。

結局、次郎が投稿した画像は偽物だろうと疑われ謝礼金を貰えなかったという。 しかし、その画像を次郎を工の許可をもらったうえで、SNSに投稿した。 SNS上では本物みたい! これマジの河童じゃないかという反響があった。 某アカルトサイトでも結構話題になった。

背の高い黒いスーツを着た人物が、次郎が投稿した動画を見て呟いた。
「この動画、本物だとしたら、この河童と戦った青年、利用価値があるな...」
背の高い黒いスーツを着た人物はどこかに電話を掛けた。

工はこれから壮大な事件に巻き込まれるともしらず、いつも通りサイク屋を開店するのであった。



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