サイク屋

チャンドラ

猫さがし パート2

猫さがしをすることになった工だが、手始めに飼い主である愛から家出した猫の写真を見せてもらうことにした。 写真を見た感じ白と茶色の交じった毛色、顔は細めで普通の猫より若干普通の猫よりぽっちゃりしているように見える猫であった。しかし、これといった特徴はない。普通に探していてもこの猫と似ている野良猫との区別はつきそうになった。愛からもう少し情報をもらったほうがいいと思った。

「愛ちゃん、この写真以外になんか茶目の特徴ってない? 鈴をつけてるとか、尻尾に何かしらの特徴があるとか」
「うーんとね、茶目はね、ごはんだよー!っていうとゴハンって喋って寄ってくるんだ! あと、尻尾はね細長いっていう感じかな!」
実は工も昔猫を飼ったことがあった。猫はご飯の時間を認識できると鳴いて飼い主によって来ることがある。 他にもいろいろ情報があったが、あまりめぼしい情報は得られなかった。
「ありがとう、愛ちゃん とりあえず頑張って探してみるよ」
「うん、お兄さん お願いね!」

こうして愛と別れた工だったが、どうやって猫を探すか考えていた。 そうして、彼は一つの猫さがしの方法を思いつき、発明品を作る作業場へと移動した。
彼が思いついた方法、それは愛の自宅を中心に猫を探し出すという方法。 しかし、それを工自身がやるのは大変重労働になる。 ゆえに彼はそれを機械に任せようとした。 黙々と探索用ロボットを製作していく。 果たして彼はどんなロボットを完成させるのだろうか。

作業を始めて3日後、彼は探索用ロボットを完成させた。
その探索用ロボットを工はこう名付けた(cats)と。
catsと複数形にしたのは彼は探索用ロボットを3体制作したからである。そのロボットの外見は文字通り猫の姿をしていた。それも陳腐なぬいぐるみのような外見ではない。 少し離れた場所から見た程度では本物の猫と勘違いしてしまうほど精巧な出来である。catsは自動走行モードと手動走行モードが備え付けられている。 彼が飼い猫を探すための作戦はこうだ。

猫の姿をしたロボットを徘徊させ、猫をおびき寄せる。 工が昔飼っていた猫もそうであるが、猫どうしよくひかれあうのだ。 
また、catsには3本までマタタビを貯蔵できる機能が備わっている。 マタタビ成分を放出し、猫をおびき寄せるという優れものだ。しかもマタタビ成分を放出する時、しない時を切り分けることができる。こうしてマタタビの成分を節約することができるというワンダフルいやニャンダフルな機能が備わっている。
 工は基本的に自動走行モードで飼い猫を探そうと考えていた。 自動走行モードでは仕草、歩き方など、できるだけ本物の猫に似せているので、手動で操るより、猫の警戒心を解けるのではないかと思ったからである。また、catsがロボットだと他の人間にばれれば、興味本位にいじられ、最悪持っていかれる可能性がある。そうなれば当然探索をすることができない。 ゆえに自動走行モードで、目立たないように行動してもらうように考えた。

catsを完成させた日の次の日、工はいつも通り夕方まで店を経営した後、すぐに飼い猫を探すことにした。時刻は17時、探索用ロボットのcatsを携え飼い主である愛の自宅の近くの公園へと向かった。
公園についた工は、ベンチに座り、鞄から三体のcatsを取り出した。
「さぁ、cats出番だ! 大いに暴れてこい!」
そういい、catsを起動させた。catsはまるで意思を持ったかのようにそれぞれ別の方向へと走り出していった。
 工はじっと、catsのコントローラーを見つめていた。 catsが放たれてから15分後、コントローラからピピピとアラーム音が鳴った。 catsが猫に遭遇するとアラーム音がなるという仕様である。 
「発見したのは、2号機か」
catsの外見はそれぞれ異なっている。1号機は黒猫、2号機は茶目のような茶色と白の斑の色、3号機は真っ白い猫である。別にすべて同じ外見でもよいのだが、無駄にこだわったのだ。
「2号機が見つけた猫は、黒と白の斑模様 類似度は36%か。」
類似度とは、猫を検知した際、見つけた猫と茶目どれくらい似ているかを算出した際の数値である。愛からもらった茶目の画像をcatsに取り組み、類似度を計算できるようにしたのだ。 工は90%以上の数値がでれば、ほぼ茶目本人いや本猫だと考えていた。 

catsが放たれてから3時間ほど探索していたが、それらしい猫に出会うことはなかった。一度類似度83%ほどの猫を見つけたのだが、catsから通して、猫の様子を見てみると柄の感じがどうも違う。 明らかに茶目ではないと感じた。 その日は諦めて工は一度帰宅することにした。

次の日、お店に茶目の飼い主である愛がやってきた。
「お兄さん、茶目見つかった?」
「ごめん、まだなんだ でも頑張って見つけるよ」
「うん、お願いね!」
期待したまなざしで工を見ている。 見つけることができない自分に歯がゆさを感じていた。 
「ねぇ、愛ちゃん 茶目とはどうやって出会ったんだい?」
茶目との出会いについて愛にたずねてみた。
「茶目はね、捨て猫だったんだ。 うちのお母さんが茶目を拾ってきてね。それで飼い始めたんだよ!」
「そうか、茶目は捨て猫だったのか。」
すると愛は心配そうにこう話した。
「うん。最初のころは警戒して、かみついたり、ひっかいたりしたんだけど、だんだんと茶目と仲良くなったんだ。なのに、茶目突然いなくなって 茶目が今頃家に帰れないことになって苦しい思いをしてるんじゃないかと思うと心配で心配で...」
工は思った。もし茶目が交通事故とかで亡くなっていたら俺はこの子になんて言えばいいんだろうかと。 だが、やはり亡くなっている可能性があることを愛に伝えようと考えた。
「あのね、愛ちゃん もしかしたら...」
「あ、いけない! もうこんな時間 ピアノ教室にいかなくちゃ! それじゃ、お兄さん、茶目探しお願いね!」
伝える暇もなく愛は飛び出していった。

サイク屋の閉店時間が過ぎて15分後、工は昨日と同じ公園へと赴いた。 ダメもとでも茶目を探してみようと思ったのである。
昨日と同じようにcatsを解き放った。 探索してから1時間経過したものの、それらしい猫は見つからない。どれもこれも類似度30から50%くらいの猫にしか会うことができない。 探しているうちに、工はなんかポ○モンみたいだと感じてきた。 草むらに入り、6Vなり伝説やら色違いのポ○モンなりを探す。似ている気がする。 まぁ、そんなことはどうでもいいか... 
そんなことを考えてた直後、3号機が反応を示した。期待しないで見てみると、なんと類似度98%であった。
「ウソだろ!? 本物か?」
3号機から通して遭遇した猫の様子を見てみると茶目にそっくりだった。 生きてたんだ! これで愛ちゃんを喜ばすことができると思った。
3号機を手動走行モードへと切り替え、茶目と疑わしい猫が大きく移動しないように操作しながら3号機のもとへと向かった。 catsにはGPSが備え付けらており、位置が確認できるようになっている。 
茶目と疑わしい猫を見つけてから15分後、3号機の元へと到着した。 近くにいって遭遇した猫を観察した。模様の様子、体格、尻尾の形、間違いなく茶目である。ガッツポーズをした工は茶目を抱えて愛の元へと運ぼうと茶目に触ろうとした。 次の瞬間、とんでもなく不幸なことが起きた。
なんと、茶目が道路に向かい、走り出していった。 さらにトラックが近づいてくる。 運転手は全く茶目に気づいていない。
「くそ、迂闊だった!」
工は急いでヘルメットのような機械をかぶり、ポケットからスイッチを取り出した。
「たまたま、持ってきておいてよかったぜ! 身体能力倍増装置、起動!」
スイッチを押した。工の全ての感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた。 そうして、かのウサインボルトよりはるかに速いスピードで走り、茶目を抱えてトラックの前を通り抜けて行った。茶目が暴れて工の腕を引っかいているがあまり痛くない。身体能力倍増装置の影響で痛覚が鈍くなっているのだ。 運転手の怒声が聞こえたが、工は気にしないことにした。人命いや猫命には変えられないのだ。
工は、catsを公園に戻るように操作し、茶目を抱えて歩いた。すると、前からお婆さんがやってきた。
「どうも、うちのミルキーを助けてくれてありがとうございます。 トラックに引かれそうなのをあなたが助けてくれたのを見ていました。 私にはこの子しか生きがいがありません。 なんとお礼をいったらいいか...」
工は困惑した。 ミルキーだと? 確かにこいつ、白の毛のほうが多いから茶目よりミルキーのほうがぴったり... ってそういう問題じゃねぇ!
どうやら猫が家出してから帰れなくなってしまったところ、このお婆さんに拾われたらしかった。 お婆さんは一人暮らしをしていて、猫との暮らしに生きがいを感じてるとのこと。 亡くなってなくてほっとしていたが、これはこれで厄介な問題だな。

茶目を発見した次の日、愛に事情を説明した。
「私、茶目に会いに行きたい!」
そう言われ、工はお婆さんのところへ愛を連れて行った。

「茶目、久しぶり!元気だった?」
「にゃ~ にゃ~」
見た感じ、愛のことを覚えているようだった 思ったより猫は賢い生き物なんだな
「お嬢ちゃんが、本当の飼い主だったんだね。寂しいけどミルキーとはお別れしないとだね...」
名残惜そうに猫をなでてそういった。
「ううん、おばあちゃん、茶目、おばあちゃんのこと好きそうだから一緒に暮らしてていいよ! たまにおばあちゃんちに行って茶目に会いに行っていい?」
おばあちゃんは愛に微笑みながらこういった。
「本当かい? お嬢ちゃんは優しいねぇ ああ、いつでもミルキーに会いにおいで。」
「ありがとう!おばあちゃん! ただ、ミルキーじゃなくて茶目だからね!」
「ごめんね、これからは茶目って呼ぶよ」

そうしてお婆さんと別れ、工は愛を自宅へと送って行った。
「愛ちゃん、あれでよかったのかい? また茶目と一緒に暮らしたかったんじゃ?」
愛は寂しいそうな顔をしつつもこう言った。
「茶目、あのおばあちゃんのこと好きみたいだから、あれでいいの。」
「そうか、偉いね。 俺、愛ちゃんに後でプレゼントを送るよ!」
「プレゼント? 何?」
「それはお楽しみってことで、じゃあね!」
愛と別れ、さっそく、プレゼント作りに取りかかった。 工は一体、何をプレゼントするのか。

プレゼントを送ってから2日後、手紙と謝礼金が届いた。 値段はあえてここでは言わないでおく。 手紙にはこう書かれていた。
「お兄ちゃんへ。茶目を見つけてくれてありがとう。私は茶目が元気に暮らしてることが分かってとてもほっとしたの。お兄ちゃんが頑張ってくれたおかげで茶目とまた遊べることができて、とてもうれしいです。 それとお兄ちゃんが送ってくれたプレゼントとてもすごいです! 本当に生きているようでとてもロボットとは思えない 新しい家族が増えたみたいで毎日とても楽しいです。」
工が送ったプレゼントとはcatsを改造した猫のロボットである。外見は2号機をもとにより猫らしい動きができるようにした。そんじゃそこらの猫型ロボットとは格が違うくらい精巧にできている。 気に入ってもらえてとても満足だ。

正直な話、今回の猫さがしは労力のわりに大したお金にならなかった。しかし、猫さがしを終えて、親父の「お金を稼ぐことだけを目的にしてはいけない」という言葉を思い出した。 気が向いたら、今回みたいな人助けもしてみっかなと考えながら工はいつもの作業場へと向かい、趣味の機械作りに励むのであった。

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