異世界に行ってみたら性別が変わっていた

チャンドラ

武器商人

 泉は自分が女になっている現象にしばらくの間、動揺していた。身体は女性だが、心は立派な男子であるため、自分の胸を揉んで初めての女性の胸の感触に酔いしれていた。自分の胸はとても柔らかい大きくて柔らかく永遠に揉む続けていたいと思い始めたーー酔いが冷めたところで、再びスマホを取り出し、自分の姿を観察した。

 整った顔立ちはみるからに美少女という名に相応しかった。透き通るような白い肌で、パッチリとした大きい目。髪は元の黒髪とは似つかない綺麗な髪質の金髪であった。しかし、普通の人間とは違うのは、耳が長く尖っていた。

 おそらく自分はエルフになったのだろう、と泉は考えた。エルフとは、ライトノベルでよく登場する種族で、耳が長く尖っていて、寿命が長いとされている種族である。異世界とはいえ、本当に実在したとは驚きだが、それに自分はなり変わったのだ。

 とりあえずここがどこなのか確かめたいと泉は考えた。しかし、城下街に住んでいる住民とコミュニケーションが取れるのだろうかと不安に駆られた。泉は日本語以外話すことができない。この世界特有の言葉を使うことができなければ会話を成り立たせることができない。

 しばらくの間、悩んだ末、ダメ元で日本語で誰かに話かけてみようと思った。通りかかった優しそうな男性に話かけることにした。この城下町では鎧や武器を携えた人や人間とは思えない種族が通りかかっているが、あえて泉は物騒な物を身につけてない人間を話し相手に選んだ。会話が通じず、怪しがれても大した攻撃されることはないと考えた為である。

 泉はすいませんと、日本語で話しかけようとした。すると脳内で聞いたことがない単語が思い浮かんだ。試しにその単語で話かけた。すると、男性がこちらを向いた。どうやらこの世界の言語を泉は自由自在に話すことができるようである。話そうと思った日本語での言葉がこの世界の言葉と思われるものに翻訳され、頭の中で思い浮かんできた。

「私は旅人でこの街に来たばかりなのですが、ここはなんという街なのでしょうか?」
 異世界の言葉で流暢に質問を泉はする。自分の声はまさにお淑やさを感じさせる女性の声で、自分の声とは思えかった。
「あなたはこの街に来たばかりなのですね。ここはメイナードというところで冒険者がよく武器を買いにくることから、冒険者の街とも呼ばれます。
 あ、申し遅れました。僕は、ここで武器商人をしている、トーワといいます。あなた、みたところエルフっぽいですね。あなたのお名前は?」

 トーワと呼ばれる男性から質問を受けた。どうやら自分はエルフになり変わったで間違いないようだ。日本語で私は泉です、と頭で思い浮かべたら、泉の部分がミャーコと変換された。どうやら泉はこの世界ではミャーコというらしい。

「私はミャーコといいます。よろしくお願いします。」
「ミャーコさんか。やっぱりエルフの子は可愛らしいね。よかったらうちのお店に行って、武器を見に行かない? エルフだったら、魔法使えるからあんまり武器使わないと思うけど、結構いい武器が揃ってるよ!」
 気さくにトーワは話をしてくれた。トーワの話を聞く限り、どうやら、エルフは魔法が使えるらしかった。泉は、この世界に来たばっかりでよくわからないが、やはりモンスターもいるんだろうか。

「すみません、この街に来たばかりであまりお金がないんです.......」
 そう告げると、トーワはある提案を持ちかけてきた。
「そうか、お金がないのか。なら、うちの仲間の手伝いをしない? 結構お金もらえるよ。」
「手伝いですか? 一体何をするんでしょうか?」

 たくさんお金をもらえることは確かに魅力的だが、泉はまだこの世界に来たばかりだ。対してできることなどない気がする。

「友人が近々とある強いモンスターの討伐をすると言っていてね。回復が使える魔法使いが必要って言ってたから、エルフの君なら、きっと適任だと思うよ!」
 どうやらエルフは回復魔法というのが使えるらしいが、そんなの泉はやったことがない。とてもじゃないが、手伝えるとは思えなかった。

「すみません、私はエルフの端くれなもので、あんまり強い魔法が使えないんです。とてもじゃありませんが、あなたの友人の役にたつとは思えません。」
 適当に言い訳を考えて、お断りの言葉をトーワに送った。するとまたもやトーワはある提案を持ちかけてきた。

「なるほど、そうなのか......それじゃあ仕方ないな。それじゃ、お金にも困ってるみたいだし、うちでしばらく働いてみないかい?」
「トーワさんのお店ですか?」
 突然の申し出に少し泉は驚いた。

「うん。エルフは街の人から、人気が高いしね。しょっちゅう彼女にしたい種族ランキング第一位にもなってるし、お店の売り子になってくれれば、すごい助かるよ! それに泊まるところもまだ決まってないんじゃない?」
「ええ、まぁ......」
 確かにありがたい提案ではある。トーワの元で働くことで衣食住の安定を得ることができるのである。

「それじゃあ、うちで住み込みで働かない? うちは部屋が一つ余ってるからそれを貸してあげるよ。」
 悪くない条件である。この世界のことが分かるまで、武器屋で働くのもいいかもしれないと考えた。

「それでは、お言葉に甘えて......」
  トーワの提案を受け入れることにした。トーワは嬉しそうな顔をしている。
「よかった! ありがとう、ミャーコちゃん! よろしくね。それじゃ、さっそく自宅まで案内するよ。」

 こうして、ミャーコもとい泉は武器屋で働くことになった。この世界で頑張って生きていこうと決心した。







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