青春勇者はここにいる!

極大級マイソン

第14話「事故」

 朝帰りの件を幻惑魔法の記憶改変で片付けた日の放課後。
 俺とエーデルは、例の『ARC』のメンバーがいる部屋へ向かっていた。中断してしまった話し合いを改めて行うためだ。
 昨日は、なんだかんだで組織に加入することになった。それ自体はもう過ぎたことだし、別に構わない。男が一度決めたことに、後からギャーギャー言うのも格好悪いしな。
 それに、異能者が集まる組織って言っても、メンバーが三人しか居なかった所だ。どうせ大したことはやらないだろう。
 俺は元々部活に入って仲間を増やすつもりだった。普通の高校生らしい仲間を、だ。一緒に遊んだり、飯食ったり、助け合ったり。まあ、女子しか居ないから少し物足りない感はあるが、この際贅沢は言わない。
 そうだ、前向きに考えよう。
 俺は、遂に現実世界の新しい仲間が出来るんだ。
 玄関先から部室棟へ進んでいくと、隠された秘密の扉が見えてきた。もう彼女達は、部屋へ集まっている頃だろう。

「……着いたな」
「御主人、本当に彼女達の仲間になるんですか?」
「ああ。じっくり考えたが、別に相手が異能者だろうと悲観的に考える必要はないはずだ。寧ろ、お互いがお互いの秘密を知っている状態なら親しくなり易いことだってある。お前だって、彼女達は悪い奴じゃないって言ってたじゃねーか」
「それは言いましたけど……」
「大丈夫だ。きっと仲良くなれるさ」

 俺はそう言って扉に手を掛け、ガラッと勢い良く横にスライドした。
 まずは元気に挨拶だ。全てはそこから始まる。

「こんちゃーっす! 昨日は済まなかったな、大事な話を中断しちま……て…………」



 そこに、下着姿の女の子達が居た。



「「「あっ」」」

 三人が同じタイミングで扉を開けた俺を目視する。言うまでもないことだが、秘密の部屋の中に居たのは例の異能者グループのメンバー、佐々江美典、久喜遊舞、富永愛久である。
 彼女達の格好は制服が半分だけ脱げている状態、おそらく着替え途中だったのだろう。
 ブラウスのボタンを留めかけている佐々江さん。お尻をこちらに突き出したポーズをしている久喜さん。富永に至っては制服を着ようともせず、下着姿のままでスポーツドリンクを飲んでいるようだった。
 そこで俺はハッと気付く。
 そうだ、今日の六限は学年合同で体育があったな。 
 ……なるほど、さしずめ更衣室まで移動するのが面倒だからここで着替えをしていたのか。

「納得だ」
「何が『納得だ』よ! この変態ぃいいいいいいい!!」

 すると佐々江さんは、在ろう事か手近にあったソファーを持ち上げて勢い良き投げつけてきた。
 流石に危険だと思い、すぐさま《透明化》で回避する。物理干渉不可が幸いし、投げられたソファーが俺の体を通過して真後ろの壁に激突した。
 しかし、佐々江さんは投げるのを止めなかった。テーブル、椅子、マグカップ、ペットボトル、筆箱、ゲーム機、観葉植物、ノートPC……。

「……ま、待って! お願い、それだけは投げないでっ!」
「はぁ……はぁ……!」

 鬼気迫った形相の佐々江さんに、PCを取り上げられ涙目で懇願する久喜さん。
 ……余程大事なものなのだろう。久喜さんは、普段のクールっぽさをかなぐり捨てて全力でPCを死守する。
 一方で富永は、俺とエーデルの存在に気づくと視線を寄越してきた。仮にも男が居るというのに平然とブラとパンツを剥き出しにしている。

「んー。何だお前、来てたのか。今日は休んでいるって聞いたけど」
「ああ。早朝に色々あって、学校を休んだんだ。その、何だ……。取り込み中に入って悪かったな」
「そう思うなら早く出て行ってよぉ!!」

 佐々江さんに怒鳴られたので、部屋を出て扉を閉める。佐々江さんがあんなに取り乱している姿は、生まれて初めて見たよ。
 いやーそれにしても、礼儀知らずなことをしてしまったなぁ。
 思春期の女子の下着を見るなんて、彼女達のプライドを傷付けてしまったかも知れない。

「エーデル。俺はどうしたら良いと思う?」
「まずは誠心誠意謝罪をしましょう。仲直りの基本です」
「やはりそれしかないか」

 《ARC》のメンバーとは今後仲良くするつもりでいる。こんなに早く亀裂を生むわけにはいかないんだ。
 取り敢えず取れる手段は何でも使う。ジャパニーズ土下座なりして関係を修復しようか。

「おーい入って良いぞー」

 なんて考えていると、富永の呼ぶ声が扉越しから聞こえてきた。
 随分と早いが、もう着替え終わったのだろうか? まあ、入って良いと言ってるんだから大丈夫なんだろう。
 俺は、改めて部屋の扉を開いた。



 そこに、下着姿の女の子達が居た。



「「いやぁあああああああああああああああっ!!」」
「なんでだぁあーーーーーー!!」

 佐々江さんと久喜さんは、絶叫を上げて胸元を隠す。
 いやいや何故だ!? 何故、彼女らは服を着てない!?
 俺は、先程呼び掛けてきた富永に視線を向ける。因みに富永のほうは、既に制服に着替えていた。

「富永テメェ!! 俺に何の恨みがあるんだ!?」
「ちょっとした悪ふざけのつもりだったんだ」

 ふざけんなよ!? これじゃあ関係を修復するどころか酷くなる一方じゃねーか!!

「くそ、どうする!? 二回同じミス! 土下座くらいで許されるものなのか!?」
「逆転の発想ですよ御主人! 御主人も服を脱げば良いんです!!」
「それだ!! 俺も服を脱いだ状態で土下座すれば或いは……!」
「馬鹿なこと言ってないで扉を閉めてよぉおおおおお〜!!」


 〜 五分後 〜


 俺とエーデルは、着替え終わった少女達の合図を受けて部屋の中に入る。投げ飛ばされた部屋の備品をあらかた片付けて、俺は椅子に腰掛けた
 テーブルを挟んで向かい側のソファーに座っているのは、佐々江さんと富永。メンバーが一人足りない。
 部屋の中を見渡してみると、部屋の隅で久喜さんが震えながら蹲っていた。

「…………っ!(ガタガタ」

 ……こちらからでは、久喜さんの表情を確認することは出来なかったが、明らかに怯えているのは見て取れる。十中八九、俺が彼女の下着姿を見てしまったのが原因だろう。

「あの、久喜さん……」

 俺が久喜さんを励まそうとすると、隣にいたエーデルがそれを止めた。

「御主人、今はあの二人との話し合いを優先しましょう」
「しかし……」
「久喜さんとは、私が代わりに励ましに行きますよ。こういうのは、女同士の方が気楽に話が出来ますから」
「そ、そうか? じゃあ頼んだ」

 エーデルは、蹲る久喜さんの元へ駆け寄っていく。
 さて、と。気を取り直してメンバーと話をするかなぁ。

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