英雄って何ですか?

たかっしー

17話

ロストを見て固まっているシャーラに女子生徒が声を掛けようとするが、なんと言っていいのか手を伸ばしたり引っ込めたりしている。そして、親友のレディアンに視線を向けると傷が治っても気絶したままで役には立ちそうには無かった。最後の頼みとロストに視線を向けると何を考えているのかいつも通りの微笑を浮かべていたが、ひとつだけ分かることがあったのか少女は頷いた。

手伝う気は無い、と。このクソ野郎。

と言うことだけが。

だから、仕方なく覚悟お決めて歴戦の戦士が死地に赴く様な気迫を纏いシャーラに尋ねた。

「しゃ、シャーラ、どうしたの?そんな風に先生を凝視して。」

「ね……。」

「ね?」

「姉さん!!」

シャーラはロストに叫びながら抱きついた。

『えーーーーーーーーーーー!?』

当然、生徒たちはシャーラの言葉に驚く。

「先生ってレディアンの兄貴だったよな?」

「あ、ああ、当然だ。公にしていっていたしな。」

「というか、性別が違くない?」

「それは、先生の不思議パワーでなれるっていってたじゃ無い。」

と、色々な憶測が飛び交うが当人達はそんなの関係なく話していた。

「今までどこに行ってたんですか!?」

(最近似たようなことをこの場所で言われましたね。)

似たどころか相手が違うだけで同じである。しかもその前言者は地面にころがっていたりする。

「よくもまあ、覚えていましたね。5年前ぐらいですかね。」

「当たり前じゃ無いですか!!私にとっては初めての事を体験したんですから!!」

『なにーーーーーーーーーーーーー!?』

「あの人ゲイか!?」

「なら、俺もいけるかな……。」

「お前もか!?」

「俺も……。」

「ゲイ多過ぎないか……?」

ふざけている男子生徒を級長補佐の女子生徒が目頭を押さえながら注意した。

「いい加減な事を言わなように。あとで殺されるわよ?先生に。それと、ふざけていうんじゃ無いわよ?」

「なに言ってんだよ。先生話してんじゃねぇか。」

「私を忘れないでよね?」

男子生徒が威勢のいい事を言った瞬間背後にレイがたって自己主張した。

「私は人型になって自分の意識を持っておるけれど、それは神器だからよ。つまり所有者の物なのよ。」

「つまり…。」

「ちくるわ。」ニヤッ

男子生徒達はドン底に落ちた。

「因みに、ちくらなくてもこのくらい全部丸聞こえよ、あいつには。」

そには底が無かったらしい。











シャーラSide


私の名前はシャーラ・ボレスティーヌ。商業都市マスティーを収める公爵家の長男だ。と言っても1人息子だから他に兄弟姉妹はいないが。

私の家系は元々商人からの成り上がりで、昔の王様から命じられて公爵家になったらしい。

普通、公爵というのは王の親戚など、血の近いものがなる家系だが、建国した時の王様が宣言したらしい。

『貴族というものが私は嫌いである!さらに言うならば、血が繋がっていなければ貴族を続けられないと言うのは、非効率である上に特権意識を持つ根本的理由である!
なので、私は宣言する!!貴族になるものは私達王族が決める!!』

と一方的に言う。が、当然甘い汁を吸いたい者は反論する。

『何ぃぃぃぃぃ!?公爵は王族の親類しかなれないから結婚するかさせろぉぉぉ?ならそんな法は作らん!!この国の公爵は王族の友であり、家族である!!つまり、公爵になりたければ私の友となれ!!!!』

この宣言を聞き、反論に対して法を変えると言う暴挙に出ることが実証された為に反論する者は居なくなった。

この宣言の元、この国の貴族制度はほとんどの者が一代切りで罰則がそこまで厳しくなっていないものに対し、罰則はどれも重罪ものだが命令されるまで貴族家を残す事が出来る者達に分かれた。

シャーラの先祖は8代目の王ーーー現王は12代目ーーーと交渉後のチェスをすると言う名目で友誼を交わし、公爵家になり、この商業都市を任されるようになった。

長々と言ったが何が言いたいかと言うと、私の家族は商売が好きである、ということだ。父も祖父もその前もその前の前も商売が好きである。だがら自然と商会を開くわけでも無いのに商売について教える流れが出来る。

当然、私もその教育を受けた。私は並外れた天才というわけでは無いが、商業の才がかなりあったらしくどんどん覚えていった。そんな家族たがら冷徹に思われがちだが、実はその真逆だったりする。1人息子の私にはもったいない程の暖かく美しい愛を注いでくれ、民にも人気をほこっている。容姿がいいわけでも無いのに必ず注目の的になるぐらい元気なほど、明るく素晴らしい家族だ。

だが、私は教育を受けているうちに疑問に思った。

『笑顔は相手を騙す為に使い、全ては儲ける為に回した方が効率的では無いか?』

と、だから最も信頼している両親に聞いてみた。すると、驚きながらも嬉しそうに両親は語った。

『ああ、そこまで分かるようになったか!流石はシャーラだ。確かに、お金を集める為にはそうすればいい。だけど、お金をたくさん集めてどうするんだい?それを使って儲けるかい?それは思考放棄と同じだ。商売とはね?お金を集めるんじゃ無いんだよ。お客さんの笑顔を集めることなんだ。』

それは素晴らしい美談に聞こえるだろう。だが、幼いシャーラはよくは分かっていないながらも質問した。

『それは素晴らしい事ですが、笑う必要がありますか?』

シャーラにとってお金を集めることと笑顔を集めることの違いは分からないが、それは笑わなくても出来ることだと思った。

『あはははっ!!シャーラは鋭いわね!確かに無表情でも出来るわ。じゃあ、逆に聞くわ。シャーラは無表情のお母さんと笑顔のお母さん、どちらがいい?』

シャーラは悩むこともせず、笑顔の方がいいと言った。

『でしょ?出来る出来ないじゃ無いのよ。笑顔は気持ち良いものなの。それに、やっぱり商売だもの。沢山のものを売りたいでしょ?それをするにはどうしたら良いと思う?』

シャーラは分からないと首を横に振った。

『それはね、お客さんがどんな物を欲しているかを考えるの。でも、分からないわよね。だから、お客さんの気持ちになるのよ。そしたら、悲しくもなるし嬉しくもなる。その気持ちをコントロールなんかしなくて良いの。ありのままの気持ちを考えるの。そしたら、なんだって出来るから。』

そんな風に言われてもピンと来なかったらしく、シャーラは釈然としないと顔をしかめて考えていた。

それを、両親が分かったのか父は近くの使用人に手紙を渡して、ギルドに届けるよう、指示を出した。



それからしばらく経つと、赤紙を腰まで伸ばして、礼服を着た絶世の美女が屋敷を訪ねてきた。

「こちらは、ボレスティーヌ宅でしょうか?」

その声は相手を探るような商人の声ではなく、純粋な魅力を持った声に聞こえた。

この相手は興味を抱いて良いような相手では無いと、本能が屈してしまうほど、格が違うと感じるのは初めての事だった。


これが、私とロスト・クラステインの初めての出会い。


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