英雄って何ですか?

たかっしー

14話

男はレディアンに向かってナイフを投げた。

「レディアン!!」

「避けて!」

「クソがーーーー!!!!」

ほかの生徒たちも口々に叫ぶ。自分ができる事は無いと知りつつ、それでも奇跡よ、起こってくれと叫ぶ。

そして、

その奇跡が起きた。

レディアンに向かっていたナイフがレディアンの目の前で止まりそのまま重力に引かれて落ちたのだ。

「あん?なんだ〜?」

男は不思議そうに見つつ警戒してか、時間差をつけて2本のナイフを投げる。が、どれも同じ結末を迎える。

そして暫くすると、廊下からコツ、コツ、コツと誰かが歩く音が聞こえ、教室の入り口の前で止まる。誰もが固唾を飲んで見守る中、扉が吹き飛んだ。

そこから現れたのは、


いつものロストが着ている格好をした赤髪の美女だった。
その女性は落ち着いた雰囲気で言葉を発した。

「おはようございます。」

『誰だよ!?』

教室にいる全ての声が揃った瞬間だった。

「え!?ここは先生が来るとこでしょ!なのになんで今まで出た事ない人が来るの!?おかしくない!」

「そうだよ!!誰かあの人の知り合い!?なら教えてよ!」

「俺はちげぇぞ!あんな美人が知り合いなら自慢するわ!」

「失礼ですね。私はロスト・クラステインですよ。」

『結局あんたかよ!?』

「おい嘘だろ!?性別変わってるぞ!?」

「なんであんなに混乱したのに更に混乱しなきゃいけないのよ!?」

「もぅ、いや〜。疲れた〜、なんなのよー!もうーー!」

「うるさいですよ。少しは黙りなさい。」

『あんたのせいだ!!!』

それからもかなり騒いだが、暫くして騒ぎは収束した。ーーー性別が変わった件については後ほど説明します、と言われてはぐらかされたが。

「あなたも混乱するんですね?」

「そりゃあ、展開的に誰でもなると思うよ……。」

「まぁ、こうしてお話しするのも良いんですが、こうして暴れられたら少しぐらいは怒るんですよ。というか現在進行形で怒っています。」

「ちょっと勘弁してくれないかな?みたいに下手に出ると思ったか。俺はSランク実力があると思ってる。それに見合うだけの戦果は今まで挙げてきた。つまり、だ。権力とかならあんたの方が上かもしれねぇが、人をうまく使う事しかできねぇあんたよりも俺の方が強ぇ。それにどっせわかる事だから言うが俺は時空属性持ちだ。この意味わかるよな?俺は次元と時間を弄れるんだよ。次元を弄ったら魔法陣だろうが何だろうが触れられなくても壊せるんだよ。そして、俺にーーー」

「あなたもうるさいですね。何ですかさっきから。俺強ぇ自慢ですか。いいですよそんなの。こっちは聞き飽きてるんですよ。俺はあれが出来てすごい、とか。子供ですか。」

「てめぇ。」

「脳筋の言葉を借りるなら、御託はいいからかかってこい、です。」

「やってやらぁ!」

男はロストに向かって駆け出した。それに対してロストはそのまま何もせず、手を後ろに組んで、立ったまま男を見ていた。

「なめやがって!くらえや!!」

その態度に苛立った男は全力でナイフの突きを放った。が、それをロストは目の前でナイフをつまむ事で阻止した。

「クソッ!どうなってやがる!びくともしねぇ!」

「ふむ、確かにSランクの力は持っていますね。スピードもかなりの物だ。」

そう評価して、ロストはナイフを離した。

「ふざけやがって……。全力でぶっ殺してやるよ。」

男は猫背のようになり体勢を地面すれすれまで下げる。そして自身に[周風ウインドスピン]で追い風を作り、時空魔法の[加速アクセル]自身の時間を速めて、ナイフに[次元斬]を掛けて空間ごと切れるようにする。そして、魔力を全身に回して身体能力を最大に上げた。

「ふむ、魔力操作もかなりの腕だ。確かに人間としてはトップの能力。」

「ほざけっ!」

とうとうロストの態度にブチ切れて爆上げした能力で襲いかかった。それをロストも自身の身体能力をあげて更に手に魔力を集めてナイフを捌いていく。だが、掠る程度だが確実にロストに傷が増えていく。

「あはははははっ!!天下のロスト様もこの程度か!」

気分が良くなった男は更にギアを上げてロストを切り刻もうとする。が、途中で男は気づく。ロストが全く顔を歪めずに対応している事に。更に、先程と同じかすり傷程度しかダメージを与えれていない事に。

「あ、バレましたか。」

その言葉を聞いて男は飛び退る。

「てめぇ、わざとかすり傷を受けてやがるな。どう言う風の吹きまわしだ………。」

「さて、何のことやら。」

「惚けてんじゃねぇ!!!」

「はぁ、記憶力が乏しい様ですからもう1度言います。私は、暴れられて怒っています。」

「それがどうした!」

「なので、少し後悔してもらう事にしました。というのも簡単です。実力の差を教えてあげる事にしたんです。」

「はぁ?この程度でか?」

「先程から観察していたのですが、確かにSランクの実力があり、人間としてはトップの実力があります。」

「あたりめぇだ。だからそれがどーーー」

「その程度なんですよ。」

「は?」

「貴方の実力は人間の中で終わってるんですよ。だからその程度です。Sランクの中でも格下というか下の下ですね。」

「お、同じSランクなんだから、そんなに差はーーー」

「あるんですよ。そもそも、Sランクというのは、生物の限界を超えたから成れるものなんですよ。貴方は半歩出たに過ぎません。更にいうなら、限界が同じな訳無いじゃ無いですか。何がそんなに差がないですか。全員平等な訳無いでしょう。」

「クッ、ならいまお前を殺して証明してやる!」

おとこはロストに襲いかかろうとした。だが、あり得ないほどのスピードで近づいたロストが男に向かって蹴りを放ってそれを阻止した。

「グハッ。」

「だから、無駄なんですよ。まぁ、調子に乗ってどんどん来るようにかすり傷を受けたんですがね。」

男はうまく呼吸が出来ていない状況の中、ヨロヨロとした動きで立ち上がった。そして、魔力を全身に回してナイフを構えて走り出した。それに対してカウンターを放つと思われたが、ロストは飛び退った。

「はぁ、今新技を作りますか…。」

「う、るせ、ぇ。こち、とら、ぎ、りぎり、なんだ、よ。」

「全身触れた場所を転移させるって魔力操作上手過ぎでしょう。」

そう、男は身体能力はあまり上げず、己の魔力を身に纏っているのだ。だが、これは出し過ぎても魔力が拡散してしまうため、とんでもない技量がいる。

「ふぅ、落ち着いた。じゃあ、死ね!」

息が上がっていたのをすぐに回復させ、治った途端に襲いかかった。
先程の呼吸困難から立ち直った事から動きも良くなり下手にロストも触れることができないから全力の回避で避けるも、それに追撃を放とうとした男の体が急に動きが悪くなった。
それを見たロストは男から距離を空けた。

「やっと魔力が下がりましたか。」

「何しやがった……。」

「ステータスに称号と言うものがあります。これは、持ってる人しかその欄が現れませんが、この称号を持つとそれぞれ称号固有の能力を得れます。そして、わたしの称号の名前は[支配者]。これは、その称号保持者の魔力量と同等かそれ以下の魔力保持物を操れます。つまり、今さっきの瞬間、貴方の魔力量が私のと同じになったと言うことです。」

「チッ、インチキしやがって。だが、テメェの魔力量なんてたかが知れた量だな。俺は連戦で魔力を消費してるのと同じ量ってことはよぉ。」

「まぁ、私にも事情がありますから。」

「しかも、属性は変えられねぇみてぇだな。つまり、状況はなんも変わってねぇって事だろ?」

「まぁ、今のままではそうですね。」

「つまり、今からてめぇを殺せーーー」

「だから武器を使います。」

「は?」

ロストは姿をいつもの男の姿に戻ったと同時に傷も全て治して服装を正し、指輪に魔力を与えて呼びかけた。

「起きなさい。」

すると指輪から少女の声が聞こえてきた。

「わかったわよー。」

そう返事をして、指輪が1人でにロストの指から離れると、淡い黒い光を放ち人型になる。

そして、黒髪に巫女服の少女が現れた。



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