英雄って何ですか?

たかっしー

4話

「に ぃ様………。」

「はい。」

「兄様!会えて嬉しいです!!」

レディアンはロストに会えたのが嬉しかったのだろう。ロストにラグビー選手のタックル顔負けの威力のある抱きつきをしていた。

「あ、兄様今までどこにいたのですか!もう亡くなってしまったとずっと、ずっと……。」

「まぁまぁ、それはあとで。今は式の途中ですよ?」

「あ!えとえと、どうしましょう………。」

レディアンは困り果て泣きそうになっていた。
その姿に観客は兄に会えて嬉しそうな顔をしていたレディアンに対して目頭を抑えていたが、レディアンの涙目を見て心を打たれていて式などどうでもいい、それよりこのままずっと居たいと思っている人が殆どだった。

「はぁ、じゃあ私に任せてください。……こほん、妹の見苦しい姿を見せてしまい申し訳有りません。次は教師陣からの祝いの言葉として私が代表して言わせていただきましょう。」

その言葉を聞き、レディアンは壇上の上から降りてシャーラの所に戻っていた。

それに残念な思いをしていた観客は兄のロストに注目した。その瞳には次は何が起こるかの期待やレディアンを見れなくなった怒りや仲良くしていた嫉妬などが混ざっていたが、ロストを見た瞬間、女性からは歓声が湧き上がり、男性陣はロストの笑顔を見て複雑な感情を待っていた。

何故なら、ロストの格好は長身の身長にあった黒いズボンに白のシャツ、そして紅いネクタイに紅いコートで、どれもこれも一目で高級だと分かる格好だった。だが格好など二の次だと思えるような容姿、つまり最高と思えるほどのイケメンだった為だ。

そして、ロストは笑顔を向けて話を続けた。

「お初に掛かります。私の名前はロスト・クラステインと言います。まず、生徒の皆さんご入学おめでとう御座います。これからは、皆さんとの時間を大切にして、貴方達と共に歩み、頑張って頂きたいと思っています。
そして、ご家族の皆さん、私は、今年からこの学園に探索者ギルドから派遣された冒険者です。私はこの学園の生徒だった事やましてや教師だったこともない若輩者です。
そして、我々のような見知らぬ大人にお子さんをお預けされるのは不安があるとは思います。ですが、我々教師一同全力を持ってお子さんの安全を保障します。
それでも不安な方は、事務の方でご相談を承りますので、何卒我々教師共を1度信用してお子さんを任せてください。以上、教師陣からの祝いの言葉とさせて頂きます。」

その言葉を最後に万雷の拍手が送られた。本当はロストが挨拶をするわけではないのだが、それでも、レディアンが恥をかかない為に、あの一瞬でここまで考えていたのだ。それを負担に思わないところを見ると、ロストのスペックが高さが垣間見える所だろう。

そして、入学式は無事に終わりロストは校長がするバズだった話を勝手にぶん取った訳だが、今回は兄妹の再会だという事で、お咎めなしだった。

気前のいい学園長である。と、ロストは思っていたが、本当は校長がやるはずだった挨拶よりもロストのが受けが良く、上の方からの予算が増えたことでロストを咎めなかったのである。










王都の住居のバーズルス邸

そこでは、ガラスがロストに抱き付こうとしていた。だが、それをロストはそうはさせまいとその手をはじいたりいなしたりしていた。その光景は、側から見たらガラスとロストが闘っているようにしか見えないが、ロストはもう父親とのスキンシップをするのは嫌だっから本気で回避していた。本当にふざけているとしか思えないが、その光景にレディアンは痺れを切らして大声で叫んだ。

「お父様!そろそろ!お話を!したいのですが!」

「待ってくれレディアン!まだ、俺はロストに抱き着けていないんだ!」

「はぁ、仕方が無いですね。本当は嫌なんですがね。ちゃんと後でさせて差し上げましょう。」

「よし、わかった。」

「はぁ………。」

「申し訳ありません……。ですが、私達は兄様の事をずっと心配していたのです。ですので、ご容赦お願いします。後、私もお願いします。」

「え?貴女は、講堂でしましたよね?あ、はい、すみません思い出させてしまって。……、分かりました。ついでなので貴女も後でさせてあげましょう。……そうですね、折角の再会ですし少しくだけた感じの方がいいですかね。」

そしてロストはガラスとレディアンがロストから意識を一瞬外した時に姿を変えた。そこには先程までは優しそうな顔で、肩より少し下ぐらいまで伸ばしていたのが、光が収まった時には不敵に笑っている少しやんちゃそうな顔に短く、それでいて逆立った髪型のロストがいた。

「「え!?」

「ふぅ、コッチの姿だと怠くなるな。まぁ、気分次第でもあるが。」

「あのー、兄様ですよね?何故姿を変えたのですか?」

「お前、聞いてなかったのか?それとも耳が悪くなったのか?どっちでもいいが人の話をきちんと聞いとけよ。怠いんだから。さっきも言った通りくだけた感じの方がいいと思ったからこの姿になった。あ、言っておくが別に二重人格って訳じゃないからな?この姿になるとこんな喋り方とかになる様に設定してるだけだ。まぁ、多少性格も変わるが誤差の範囲だ。」

「はぁ、よくわかりませんが気を使って頂いたのは分かりました。ありがとうございます。」

2人は驚いて突っ込んでいないが、くだけた喋り方というよりたんに口が悪くなっているとしか思えない喋り方だ。とても気を使ったと思えないが、ロストは真面目に考えた行動だから許してほしい。
 
「それで、兄様は今までどこで何をしていたのですか?」

「待ってくれ、その前に母さんに合わせてくれないか?お前が無事だったのなら母さんも生きているんだろう?」

「悪いがそれは無理だ。何故ならもう既に死んだからな。」

「な!?それはどう言うことだ!?」

ガラスは戸惑っているが、レディアンは悲しそうな顔で俯いている。恐らくどうなったのか分かっていたのだろう。対してロストは、動じた様子はなく、特に何も感じていない様に見えた。

「まずは、今までのことを簡単に話そう。次は無いからきちんと聞けよ。ーーーーまず、俺は父さんたちが爺さんの墓参りに行った時、腹が減っていて母さんの所にいた。だが、相手の男の狙いは俺だったらしい。何されるのかは知らんがな。そして、母さんは相手の罠に掛かって死んだ。そして、俺の魔力は普通より少し多いぐらいだが、属性が問題でな、覚えてるかは知らんが崩壊属性だ。つまり、俺の魔力は並大抵のものなら破壊し尽くす。その魔力が怒りや悲しみで暴走してあの村の惨状になった。まぁ、そんなのに入ったんだから肉体どころか魂すらも消え去ったわけだ。だから、母さんの残滓とかすら残ってない。ーーーーここまではいいな?」

「ああ、俺がいない間にそんなことが、しかもロストとはすれ違いになったのか………。」

「私はその時のことは眠っていたのでよく知りませんが、今の説明で、大体は分かりました。ですが、その暴走とはなんですか?危険そうすが。」

「ああ、お前はまだ習っていないか。テストに出るから覚えとけよ?暴走ってのはな、まず、魔法が使えるようになる為には避けては通れない道なんだよ。まぁ、暴走しなければならないではなく、してはいけないの方だがな。これを止めずに魔法を使おうとしたら、自分が持っている属性の魔力が膨張と縮小を繰り返し、辺り一面に多大な影響を及ぼすことだ。まぁ、少なくともいいことはないな。」

「そうですか。あれ?では、聖属性はどうなるのですか?」

「ああ、その属性は崩壊属性よりもタチが悪くてな、浄化されすぎてその地域で生活できなくなる。具体的に言えば、その土地の魔力がなくなるまで、半永久的にその土地に入った命は一瞬で成仏する。生物とか無機物とか関係なくな。で、魔力が無くなったら無くなったでその土地では永遠に砂漠とかして何も生えなくなるんだよ。」

「そんなことが……、分かりました。ありがとうございました。」

「で続きだが、そんなのに巻き込まれたら術者の俺自身が死なないわけがない。もちろん死んだが、何故か体が残り魂も残ってバラバラになったんだ。まぁ、その時点で死は確定したがそのあと、神のいる空間に行って、そこで爺ちゃんが神だったことを聞かされて色々教えてもらって神になった。色々のところは聞くなよ?答えれないから。神の秘密ってことだ。後、爺ちゃんのこともな。
で、神になったって言ったが具体的に言えば生命と死を司る冥界神ロスト・クラステインになった。因みにクラステインってのは神の苗字みたいなもので全員付いている。だから気にしなくていい。
はい、まだ終わっていないが質問コーナー、いえーい。面倒だからさっさとしろー。」

そうったロストは先程の真剣な雰囲気が何だったのかと、言いたくなる様なメンドくさそうな雰囲気で喋った。というか顔に全部出している。

「おいおい、神様って冗談も大概にしろよ。ばちが当たるぞ?」

ロストの説明から冗談だと思ったのだろう。
だが、

「そう、思いたかったんならそうなんだろうなー。」

「なぁ、神になったてのは本当なのか?なったらなったで何か変わるのか?」

「本当、本当、だって俺の姿が変わるのも神の力だし。まぁ、他にもできるがそれも冥界神限定の力だ。それと、色々やらなければいけない事が多いが、まぁ、家族の前では・・・・・そんなにかわんねぇよ。」

「………お母様を復活させることは出来ますか?」

それを聞いたレディアンは恐る恐るといった感じで聞いているが、それをきいたガラスはその考えにたどり着かなかったのか驚いた顔をして、ロストに詰め寄った。

「おい、ロスト!神なんだから母さんぐらい助けれないのか!」

「はぁ、そんなこと言われなくても俺が考えつかなかったと思っているのか?分かりやすく説明すると、さっき言った残滓が残ってないと何も考えれない人形になる。そんなのは誰も望まないだろ?それが答えだ。……ほかに質問は?」

それをきいた2人は落ち込んだ様子を見せたが、それを見てロストは何も行動を起こさない。だが、レディアンは少しでも空気を変えようと思い質問を続けた。

「あのー、じゃあ最後の質問です。私達と一緒にせいかつは出来ますよね?」

「悪いがそれは出来ん。まぁ、その説明は今からしよう。」

「俺とレディアンの扱い違くないか?」

「茶々入れんな。えーと、どこらか話そうか。まぁ、いいか。探索者ギルドや商業ギルド、建築ギルドと最後に研究ギルドがあるだろう?」

「ああ、そういえば最近探索者ギルド以外にもギルドが出来てきて、その4つのギルドが手を組んで色々なことをしているらしいな。しかも経済にめっちゃ影響を与えてるらしいじゃねえか。それがどうしたんだ?お前が探索者ギルドの奴だってのは知ってるぞ?Sランクまではあることは知ってるぞ。と言うかそんなの今更だろ?」

ガラスの言う通り、ギルドというのは全てのギルドでEからSまでのランクに分けられている。そして、全ての支部にギルドマスターがおり、その者たちの頂点に立つのが総ギルドマスターなのだ。

そして、Sランクは総ギルドマスターが管理をしている。

「長々とありがとう。で、そのギルドなんだが、俺は加入してない。というか正確には俺が仕切っている。ま、簡単に言うと総ギルドマスターって言うのが俺の立場だな、今の俺は。聞いた事ないか?」

「あ、ああ、あるぞ。俺たちの王国や帝国、獣国じゅうこく森国しんこくあと、海国かいこくなどの多種族連邦が入ってる評議会のメンバーに新しく入ることを認めさせるほどの影響力を持つって言う。……え、マジで?」

「ああ、それだ。あん時は忙しかったな。帝国の奴らが頑固で脅迫するのに手間取ったぜ。」

「こっわ、ギルドマスターこっわ。」

「ええ……。ですが、分かりました。そのような事情なら我慢します。ですが、また会えますか?」

「お前アホか。俺は教師でもあるんだぞ?学園に来たらいつでも会えるだろう。因みにお前のクラスの担任でもある。」

「そうなんですか!それは楽しみです!あ、今気づいたのですが、何故今まで会えなかったのですか?」

「忙しかったんだよ。これからもやる事が山どころか星ほどある。しかも立場が立場だからその辺の王族とかならすぐ会えるが公爵ぐらいだとなかなか会えないんだよ。」

「そうですか。ありがとうございます。今日の夕飯は食べてくださいね?」

「ああ、そうするよ。」

それからもしばらくロストたちの話は続いたが夕飯を食べ、帰る時にガラスが馬車で送るといったがロストは指にはめている指輪の1つで帰れると言って見た目を最初の落ち着いた雰囲気の方に変えた。そして指輪の効力を使うと、ロストの目の前にいきなりこの世の物と思えないほどの白い美しい扉が現れたことに2人して驚いていたが、その後は何事もなくロストは帰った。

尚、ロストとスキンシップをしてないことに気がついたガラスはロストの所に行こうとしたが、近くに通りかかったメイドに腹パンで気絶させられていた。

どこにいってもガラスはメイドの尻に知られるようだ。

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