十年待ってチートスキルを解放したら魔法少女になった件
第2話朽ちた世界と大地の女神
一瞬何があったのか分からなかった。だって確かに三年前に俺は確実にこの世界を救ったはず。それなのに、どうして……どうしてこんな……。
「ようやく、出てきたのね」
絶望的な光景に一人、呆然としていると聞き覚えがあるような声が聞こえた。
「ピリス、なのか? この声は」
「随分と可愛らしくなったわね、テツヤ」
声が聞こえた方向に体を向ける。そこには自称女神とは思えないくらいボロボロな服を着た、茶髪の女性、ってあれ?
「もしかしてピリス、お前」
「やっぱり気がついた?」
「小さくなった?」
「ええ、確かになりましたよ! 何なら貴方と同じくらいにね!」
何故かお怒りの様子のピリス。でも彼女が言う通り、ピリスは声はあの時と変わらないものの身長は当社比で半分くらいに縮んでいた。
「どういう事だよ。俺が転生している間に何が」
「色々あったわよ。テツヤが眠っている十年の間に、数え切れないくらい嫌な事が」
元気なくピリスは言う。今こいつなんて言った? 十年? 十年って言ったよな。
「十年って、どういう事だよ。まさか俺、こんな体で十年も眠ってたのか?」
「そう。あなたはスキルが発動した反動で十年あの場所で眠っていたの」
「う、嘘だろ」
思考が追いつかない。ただでさえこんなおかしい体なのに、十年も眠っていただなんて、そんな馬鹿な話が……。
「じゃ、じゃあお前以外の仲間は?」
「皆生存は確認できてる。でも、状況は芳しくないかも」
「芳しくないって?」
「今見ているその光景が答えよ」
その通りだった。今俺の目の前に広がっているのは、腐ってしまった木々、枯れてしまった水。そしてそこを徘徊する魔物達。
これだとまるで俺が転生した時とまるで同じ光景だ。
「まるでじゃなくて、そのままよ。この世界の大地はまた枯れてしまったの。ーー魔王の手によって」
「そんな馬鹿な。あいつは俺達で確実に倒したはずなんだぞ!? まさかーー復活したのか?」
「私も詳しくは分からない。でもそう考えて間違いないと思う」
「そんな。だったら、あいつは」
「今はそれを考えるのは止しましょう。それよりもまずは、大切な事があるでしょ?」
「またーー俺は世界を救うのか?」
「今のこの世界には、その選択肢しかないわ。あなたが救うの、もう一度」
初めて転生した時も彼女は同じ事を言っていた。世界を救うのはあなたしかいないのだと。あの時は不安しかなかったけど、今は違う。
「分かった、やるよ俺。もう一度皆で世界を救おう!」
「あなたならそうすると思ってたわ。テツヤ」
今どこにいるか分からないけど、俺には心強い仲間がいる。その仲間達の力を借りてもう一度この世界を平和にーー。
「それにしてもさっきから俺って言っているけど、その声と格好で言われても、ねえ?」
「誰のせいだと思っているんだ! お前がこのスキルを与えなければ」
「でもよかった、ちゃんと目覚めてくれて。十年、待ってよかった」
安心からなのか涙を流すピリス。
(そっか、こいつは十年も俺がもう一度目を覚ますのを待ってくれていたんだよな……)
その間にどれだけ彼女は廃れていく世界を見てきたのだろうか。大地の女神である彼女の目の前で、どれだけの悲劇が。
「頑張ったんだな、ありがとうピリス」
「……うん」
「さあ行こう、まずは仲間を探しに」
俺はピリスの頭を撫でてやり、再び世界に目を向ける。この広い世界で仲間を探すのは骨が折れそうだけど、弱音は吐いてられない。
「まずはここから近くにあるエルフの森に向かいましょう。情報がもらえると思うから」
「分かった、行こう」
俺達の十年ぶりの旅は、今スタートを迎える。
◇
「そういえば二度目の転生をしたわけだけど、スキルとかはどうなっているんだ?」
エルフの森へ向かう道の途中、俺はピリスに尋ねる。衝撃的なことが多かったので確認するのを忘れていたけど、不本意ながら俺は今男がなるべき職業ではないものになってしまっている。転生する前は戦士として動いていたので、当然のごとく魔力に力を振っていない。だから不安な点ばかりだった。
「それはステータスカードを見れば解決なんじゃないの?」
「見ても分からないんだよ。そっちの知識は疎かったんだ」
「じゃあ私が見てあげる。えっと何々」
俺のステータスカードをピリスはしばらく眺める。
「げっ」
「げっ?」
そしてしばらく眺めた後、彼女はそんな言葉を漏らして、震えながら俺にステータスカードを渡してきた。
「な、何か悪いものでもあったのか?」
「いや、悪くないんだけど。その、環境に悪いというかなんというか」
「環境に悪いってなんだよ」
「た、試しに魔法撃ってみて。初歩的な魔法のファイアとか」
「? 分かった」
俺はピリスの言うままに、ファイアを唱える。確か魔法を撃つためには詠唱が必要で、最後に魔法の名前を……。
と、考えていると数メートル先で何かが爆発する音がした。
「敵か?!」
「ち、違うわよ」
何故か隣で震えているピリス。敵じゃなければ何なのかと疑問に思いながら、俺は再び”ファイア”を唱えようとする。
しかしまた同じ場所で俺の魔法を遮るように爆発音がした。しかも今度はさっきよりでかい。
「やっぱり敵なんじゃ」
「も、もしかしてテツヤ、気づいていないの?」
「何が?」
「今の爆発音、全部テツヤが放った魔法だよ」
「ーーはい?」
「ようやく、出てきたのね」
絶望的な光景に一人、呆然としていると聞き覚えがあるような声が聞こえた。
「ピリス、なのか? この声は」
「随分と可愛らしくなったわね、テツヤ」
声が聞こえた方向に体を向ける。そこには自称女神とは思えないくらいボロボロな服を着た、茶髪の女性、ってあれ?
「もしかしてピリス、お前」
「やっぱり気がついた?」
「小さくなった?」
「ええ、確かになりましたよ! 何なら貴方と同じくらいにね!」
何故かお怒りの様子のピリス。でも彼女が言う通り、ピリスは声はあの時と変わらないものの身長は当社比で半分くらいに縮んでいた。
「どういう事だよ。俺が転生している間に何が」
「色々あったわよ。テツヤが眠っている十年の間に、数え切れないくらい嫌な事が」
元気なくピリスは言う。今こいつなんて言った? 十年? 十年って言ったよな。
「十年って、どういう事だよ。まさか俺、こんな体で十年も眠ってたのか?」
「そう。あなたはスキルが発動した反動で十年あの場所で眠っていたの」
「う、嘘だろ」
思考が追いつかない。ただでさえこんなおかしい体なのに、十年も眠っていただなんて、そんな馬鹿な話が……。
「じゃ、じゃあお前以外の仲間は?」
「皆生存は確認できてる。でも、状況は芳しくないかも」
「芳しくないって?」
「今見ているその光景が答えよ」
その通りだった。今俺の目の前に広がっているのは、腐ってしまった木々、枯れてしまった水。そしてそこを徘徊する魔物達。
これだとまるで俺が転生した時とまるで同じ光景だ。
「まるでじゃなくて、そのままよ。この世界の大地はまた枯れてしまったの。ーー魔王の手によって」
「そんな馬鹿な。あいつは俺達で確実に倒したはずなんだぞ!? まさかーー復活したのか?」
「私も詳しくは分からない。でもそう考えて間違いないと思う」
「そんな。だったら、あいつは」
「今はそれを考えるのは止しましょう。それよりもまずは、大切な事があるでしょ?」
「またーー俺は世界を救うのか?」
「今のこの世界には、その選択肢しかないわ。あなたが救うの、もう一度」
初めて転生した時も彼女は同じ事を言っていた。世界を救うのはあなたしかいないのだと。あの時は不安しかなかったけど、今は違う。
「分かった、やるよ俺。もう一度皆で世界を救おう!」
「あなたならそうすると思ってたわ。テツヤ」
今どこにいるか分からないけど、俺には心強い仲間がいる。その仲間達の力を借りてもう一度この世界を平和にーー。
「それにしてもさっきから俺って言っているけど、その声と格好で言われても、ねえ?」
「誰のせいだと思っているんだ! お前がこのスキルを与えなければ」
「でもよかった、ちゃんと目覚めてくれて。十年、待ってよかった」
安心からなのか涙を流すピリス。
(そっか、こいつは十年も俺がもう一度目を覚ますのを待ってくれていたんだよな……)
その間にどれだけ彼女は廃れていく世界を見てきたのだろうか。大地の女神である彼女の目の前で、どれだけの悲劇が。
「頑張ったんだな、ありがとうピリス」
「……うん」
「さあ行こう、まずは仲間を探しに」
俺はピリスの頭を撫でてやり、再び世界に目を向ける。この広い世界で仲間を探すのは骨が折れそうだけど、弱音は吐いてられない。
「まずはここから近くにあるエルフの森に向かいましょう。情報がもらえると思うから」
「分かった、行こう」
俺達の十年ぶりの旅は、今スタートを迎える。
◇
「そういえば二度目の転生をしたわけだけど、スキルとかはどうなっているんだ?」
エルフの森へ向かう道の途中、俺はピリスに尋ねる。衝撃的なことが多かったので確認するのを忘れていたけど、不本意ながら俺は今男がなるべき職業ではないものになってしまっている。転生する前は戦士として動いていたので、当然のごとく魔力に力を振っていない。だから不安な点ばかりだった。
「それはステータスカードを見れば解決なんじゃないの?」
「見ても分からないんだよ。そっちの知識は疎かったんだ」
「じゃあ私が見てあげる。えっと何々」
俺のステータスカードをピリスはしばらく眺める。
「げっ」
「げっ?」
そしてしばらく眺めた後、彼女はそんな言葉を漏らして、震えながら俺にステータスカードを渡してきた。
「な、何か悪いものでもあったのか?」
「いや、悪くないんだけど。その、環境に悪いというかなんというか」
「環境に悪いってなんだよ」
「た、試しに魔法撃ってみて。初歩的な魔法のファイアとか」
「? 分かった」
俺はピリスの言うままに、ファイアを唱える。確か魔法を撃つためには詠唱が必要で、最後に魔法の名前を……。
と、考えていると数メートル先で何かが爆発する音がした。
「敵か?!」
「ち、違うわよ」
何故か隣で震えているピリス。敵じゃなければ何なのかと疑問に思いながら、俺は再び”ファイア”を唱えようとする。
しかしまた同じ場所で俺の魔法を遮るように爆発音がした。しかも今度はさっきよりでかい。
「やっぱり敵なんじゃ」
「も、もしかしてテツヤ、気づいていないの?」
「何が?」
「今の爆発音、全部テツヤが放った魔法だよ」
「ーーはい?」
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