第８話

　キーンコーンカーンコーン

　授業を知らせるチャイムが鳴り、それを聞いた生徒たちは一斉に動き出す。ある者は移動教室へ、またある者は体育館へ、そして俺のいるクラス、１年C組は歴史の特別授業のため柚木がいるクラスでもある１年A組と共に中央ホールへやってきていた。
　なお席順はどこでもいい…。つまり完全自由なのでもちろん隣には…

「一緒に座れてよかったねぇ～」

　柚木である。
　金髪の髪をストレートに伸ばした柚木からはふんわりいい臭いが鼻孔をくすぐり、俺の幼馴染は男子キラーと言われても否定はできないであろう。
　まぁそんな感情を柚木に行ったら、さらに俺の理性が削れていく事態になるかもしれないので極秘中の極秘にすることにした。
　っとそこに、歴史の先生が入ってくる。いや、こういえばいいだろう。歴史学・者・村魚　志積先生と…。村魚先生は本来入学式、卒業式用のホールの中央に置いてある教壇まで歩き授業を始めるベルを鳴らした。

「おはようございます、では、皆さん。授業を始めます。今日の授業内容は特別合同授業として――…………………。」
「ねぇ、諭吉ちゃん。」
「なんだ？今授業中だ。後でなら後にしてくれ」
「あのね……ううん、何でもないよ～。大丈夫」
「そうか、ならい……！痛でぇ！？」
「はい、そこぉ！イチャイチャしない！ええっと…。座席番号６７番６８番！」

　２階にいる俺たちに向かって先生から何かを投げつけられた。
　その何かは俺の額にクリティカルヒットしゲームだとおそらくダメージ３１．１５９２ダメージを受けただろう…。いや小数点がどこから出てきたかは知らんが…。
　周囲の生徒たちから笑われた。…いやね、確かにイチャイチャしているといわれればイチャイチャしていたんだが、あれは果たしてイチャイチャというものかね…。

「２人とも次イチャイチャしたら居残り形だぞ！あとリア充爆発しろ、そして私が投げたものを返せ！」
「す、すみません。」

　ぽきゅ？と可愛く首を傾げている柚木に代わって、俺は先生に素直に謝罪する。いやあの先生怒ると怖いで有名なんだよ…。てかてか生徒に対してリア充爆発しろってねぇ…。

「はぁ、謝罪はもういい、投げたものを返さんか…」
「あっ、はい」

　ええっと、これか…。俺のちょうど足元に白くて粉っぽくててかてか光を反射していて明るくて湿っていないところが好きな割に足は動かないチョークが落ちていた。えっ？なんかGみたいな紹介だって？あれは黒くてかたくててらてら光っていて暗くて狭くて湿ったところが好きなわりに足の速い生物ですね、はい。
　そのチョークを、ひょいっと拾い上げ、俺は先生に向かって思いっきり投げた…はずだった。
　もともと運動はそんなに得意ではない俺は、投げる力なんてものはなく、直線を描いたチョークは巨大な黒板にあたるかと思いきや、先生の額にジャストシュートする。

「あっ…」
「……。席番号６８番。クラスと名前を言え…」
「い、１年C組木津川　諭吉です…！」
「そうかそうか……。木津川君、あとでちょっと歴史資料室に来なさい。」
「は、はい！」
「…。では授業を再開しよう…」

　呼び出しを食らいました。
　まぁ案外呼び出しは学校生活では初めてだったりする。
　何をされるのかわからず、冷や汗をだらだらたらしながら、俺は授業を柚木と共に静かに受けた。