ガチャで爆死したら異世界転移しました
冒険者学校 ⑬ 決闘ー初戦ー
『それでは!早速本日のメインイベントを開始したいと思います!!!』
およそ1万にも及ぶだろう観客たちの歓声で、場内にはけたたましい歓声が渦巻いた。
「はは、これはまた随分と大勢の観客で。あちらさんの、権力を誇示するっていう目的は、今のところ順調に進んでいることだろうね」
「ふっ、いずれ直ぐに吠え面をかくのだ。この程度、些細なことだろう」
国立闘技場に到着し、すぐさま出場者用の控え室に案内されたレイン一行と、途中合流したイグラッドが、緊張など欠けらも無い──それどころかむしろ、楽しみで仕方がないといった様がひしひしと伝わってくる──様子で話している。
「「「・・・」」」
他の3人は、流石に緊張が極まってきたのか、皆無言で真剣に武器や装備の確認をしている。
「あぁそうだ、アリサさん」
と、腰に手を当てニヤニヤしていたレインがアリサを呼ぶ。
「は、はい。なんでしょう?」
レインは、寄ってきたアリサの右手を掴むと、その人差し指に、赤く輝く宝石の付いた指輪を嵌めた。
「・・・これは?」
「ここって確か、上級魔法まで使用が許可されてるんですよね?ので、これは火属性の魔法【永遠消えぬ獄炎の茨】が発動する指輪です。詳しく説明しますと───」
「・・・え?」
レインがペラペラと説明しているが、アリサは驚愕で耳に入ってこない。
「・・・ジュ、指輪って、あの?」
「はい、丁度以前イグラッドと僕が模擬戦をした時に、イグラッドが使った魔法の火属性版です。使いたいと念じれば、1度だけ発動します。いわば、隠し玉ですね」
(ゲームでは上級魔法なんて括りはなかったから、ほんとに上級かは分からないけどね)
「・・・え、え?本当に!?この指輪を!?いいんですか!?」
アリサのテンションがいきなり上がっていることに若干引くレイン。
「えぇ。別に、まだいっぱいあるので・・・」
「い、いっぱいある?・・・グレスティアさん。私だったから良かったですが、その事は絶対に誰にも言ってはいけませんよ?」
何故かアリサがレインの両肩を掴んで間近で言い聞かせるように言う。
「は、はぁ。分かりました・・・?」
実は紅竜王──白竜王(イグラッド)の火属性版──がドロップするこのアイテムは、ゲームのサービス開始当初は超高価品だったが、TAが盛んになった辺りからゲーム内バザーで中々な低価格で売られているのである。
レイドボスの雑魚処理に物凄く使えるこのアイテムを、レインは千個単位で買い込んでいた。
「一応補足しておきますが、普通に考えて魔法の指輪というのは物凄く高価なもので、それも上級魔術を封じた物など、大国が国宝として所持してる程の遺物ですよ」
アリサの横からレイが説明してくれた。
「え、そんな高価なものだったのかこれ。まぁさっき言った通り、いっぱいありますし、使ってもらって大丈夫ですよ」
「で、ですけど・・・・・・いえ、分かりました。リエナを救う為にも、この戦いは必ず勝たなければいけません。使わせて頂きます」
そんな時、闘技場のグラウンドへと続く門が開いた。
「お!おいグレスティアよ、門が開いたぞ、早速ハウルドとやらの顔を拝みに行こうではないか!」
ずっと門の目の前で待機していたイグラッドは、意気揚々と進んで行った。
「さ、行きましょうか。ぱっぱと終わらせて、妹さんを助けに行きましょう」
「・・・はい」
次いでレインも門を潜り、アリサ達もそれに続いた。
『さぁ!!本日の主役の参加者10名が揃いましたぁ!!国王の片腕とも云われる大貴族、ハウルド家──に、雇われたAランク冒険者チーム【零落の凶弾】!!』
有名な冒険者達なのか、観客の熱が上がり、びっくりするほどの熱狂ぶりである。
『対するはぁ!!東の領主の娘、アリサ・ディア・レクウェル!!そして助っ人として参戦する、イグラッド・ルインツァーレ!そして・・・え?これ、本物!?…あ、ええっと。な、なんと最後の一人は、先日の竜族の襲撃の際、たった一組でその全てを撃退した冒険者チームのリーダー・・・レイン・グレスティアァァァ!!!!』
司会のその宣言に、観客達はシン…と静まりかえり・・・内容を理解した人からだんだんと火が点っていく。
最後には、今日一番の爆音にまで達した。
「す、凄い熱狂具合ですね・・・こんなにもグレスティアさんが有名な冒険者だったとは・・・」
「はは・・・僕もこんなに名前が知られてるとは思いもしませんでしたけどね・・・」
レインが軽く手を挙げて応えると、地響きが鳴る程歓声が膨れ上がった。
(どんだけテンション上がってるんだよ・・・まぁ僕もなかなか楽しみなだけど)
『思わぬ参戦者ですが・・・さぁ!此度の決闘の方式は1対1となります!早速始めていきましょう!!双方、初戦に出場する方以外は、控え室の方へお戻りください!』
「あ、どうします?初戦、誰でます?」
「そうですね・・・」
「私が出よう」
アリサが考えていると、イグラッドが前のめりでそう進言した。
「あ、えと、やる気があるのはとても嬉しいのですが、先ずネルとレイから出てもらおうと思っていたんです」
「というと?」
「はい。私とネルとレイは冒険者学校では上位の実力だと自負しています。しかし、冒険者としては良くて私がランクA、ネルとレイはランクB程でしょう。先程の紹介の通り相手はランクA…つまり、ほぼ勝てません。それならばネルとレイは何回戦に出たとしてもあまり変わらないでしょう。それに、初戦の方が相手も魔術師が出て来やすいので。第一に決闘は、実力が低い方から戦っていくのが普通ですし・・・というのが理由です」
要するに、剣道で言う先鋒、次鋒、中堅・・・のような方式である。
(へぇ、この世界でもそんなのがあるんだ)
「分かりました。じゃあ僕らは先に戻ってます。実際どっちが出るかはお二人で決めて下さい」
ネルとレイは一瞬目を合わせ、結果ネルが初戦に出場することになった。
ネルを除く4人が控え室に戻ると、門が開いた場所に代わりに堅牢な鉄格子が降ろされた。
「・・・それにしても、アリサさんが当然のように戦うのがおかしいのかもしれないですけど、やっぱりハウルド自身は参戦しないんですね」
イスに座ったレインはずっと気になっていたことをアリサに聞く。
「・・・自分で言うのもなんですが、そういった点では私はどこかズレているんだと思います。貴族同士の決闘で自身が先陣に立つなんて、普通は有り得ませんから」
「じゃあ、ああやって誰かを雇って戦わせる訳ですか」
「はい。そうすることで、その貴族への冒険者からの評価や、財力という面でも優劣がつけられる…らしいです」
「ふーん・・・」
冒険者が依頼を受ける時一番重視するのはやはり報酬、その次に見るのが依頼者である。幾ら報酬が良いとは言っても、どんな依頼者であろうとその報酬次第で依頼を受ける様な冒険者は、あまり良い目では見られないのである。
貴族その他権力者の冒険者からの評価は、国民からの支持とほぼ同義なんだとか。
「だとすると、ハウルド家ってあんまり良い印象が無いんじゃないです?」
「えぇ、そこが私も少し不思議に思っているところなんです。冒険者チーム【零落の凶弾】は、このスラグディアでも五本の指に入るとても有名なチームです。そんな彼等が依頼を受けるということは、それに見合うだけの報酬、そしてハウルド家への評価がなされたということ。報酬は恐らくなんの問題もなく超高額が提示されたでしょう。しかし・・・」
「悪い噂しかないハウルド家の依頼なのに何故受けたのか、だな」
アリサの言葉を変わるかのように、イグラッドが口にする。
「はい・・・少し気になります・・・」
「うーん・・・ま、取り敢えず今は勝つ事に集中しましょう。ほら、初戦が始まりますよ」
考えるのがめんどくさくなったレインは話を切り、鉄格子の向こうを指さした。
4人が視線を向けると、ネルとその相手が向かい合い、まさに試合が開始されるところだった。
(さぁ、今回の相手は楽しい試合が出来る相手かな・・・?)
心の中で呟くレインは、その口角を上げた────
『・・・ごほん、ではこれより!第一試合を開始したいと思います!!ハウルド家──【零落の凶弾】──からは、魔法詠唱師リクネルド・ウェイル!!そしてレクウェル家からは、同じく魔法詠唱師ネル・ナ・サージュ!!これは魔術師同士の戦い、単純な魔法の実力が試されるこの試合を制するのはどちらなのか!!では・・・始めっ!!!!』
司会のアナウンスにより、初戦の開始が宣言された。
およそ1万にも及ぶだろう観客たちの歓声で、場内にはけたたましい歓声が渦巻いた。
「はは、これはまた随分と大勢の観客で。あちらさんの、権力を誇示するっていう目的は、今のところ順調に進んでいることだろうね」
「ふっ、いずれ直ぐに吠え面をかくのだ。この程度、些細なことだろう」
国立闘技場に到着し、すぐさま出場者用の控え室に案内されたレイン一行と、途中合流したイグラッドが、緊張など欠けらも無い──それどころかむしろ、楽しみで仕方がないといった様がひしひしと伝わってくる──様子で話している。
「「「・・・」」」
他の3人は、流石に緊張が極まってきたのか、皆無言で真剣に武器や装備の確認をしている。
「あぁそうだ、アリサさん」
と、腰に手を当てニヤニヤしていたレインがアリサを呼ぶ。
「は、はい。なんでしょう?」
レインは、寄ってきたアリサの右手を掴むと、その人差し指に、赤く輝く宝石の付いた指輪を嵌めた。
「・・・これは?」
「ここって確か、上級魔法まで使用が許可されてるんですよね?ので、これは火属性の魔法【永遠消えぬ獄炎の茨】が発動する指輪です。詳しく説明しますと───」
「・・・え?」
レインがペラペラと説明しているが、アリサは驚愕で耳に入ってこない。
「・・・ジュ、指輪って、あの?」
「はい、丁度以前イグラッドと僕が模擬戦をした時に、イグラッドが使った魔法の火属性版です。使いたいと念じれば、1度だけ発動します。いわば、隠し玉ですね」
(ゲームでは上級魔法なんて括りはなかったから、ほんとに上級かは分からないけどね)
「・・・え、え?本当に!?この指輪を!?いいんですか!?」
アリサのテンションがいきなり上がっていることに若干引くレイン。
「えぇ。別に、まだいっぱいあるので・・・」
「い、いっぱいある?・・・グレスティアさん。私だったから良かったですが、その事は絶対に誰にも言ってはいけませんよ?」
何故かアリサがレインの両肩を掴んで間近で言い聞かせるように言う。
「は、はぁ。分かりました・・・?」
実は紅竜王──白竜王(イグラッド)の火属性版──がドロップするこのアイテムは、ゲームのサービス開始当初は超高価品だったが、TAが盛んになった辺りからゲーム内バザーで中々な低価格で売られているのである。
レイドボスの雑魚処理に物凄く使えるこのアイテムを、レインは千個単位で買い込んでいた。
「一応補足しておきますが、普通に考えて魔法の指輪というのは物凄く高価なもので、それも上級魔術を封じた物など、大国が国宝として所持してる程の遺物ですよ」
アリサの横からレイが説明してくれた。
「え、そんな高価なものだったのかこれ。まぁさっき言った通り、いっぱいありますし、使ってもらって大丈夫ですよ」
「で、ですけど・・・・・・いえ、分かりました。リエナを救う為にも、この戦いは必ず勝たなければいけません。使わせて頂きます」
そんな時、闘技場のグラウンドへと続く門が開いた。
「お!おいグレスティアよ、門が開いたぞ、早速ハウルドとやらの顔を拝みに行こうではないか!」
ずっと門の目の前で待機していたイグラッドは、意気揚々と進んで行った。
「さ、行きましょうか。ぱっぱと終わらせて、妹さんを助けに行きましょう」
「・・・はい」
次いでレインも門を潜り、アリサ達もそれに続いた。
『さぁ!!本日の主役の参加者10名が揃いましたぁ!!国王の片腕とも云われる大貴族、ハウルド家──に、雇われたAランク冒険者チーム【零落の凶弾】!!』
有名な冒険者達なのか、観客の熱が上がり、びっくりするほどの熱狂ぶりである。
『対するはぁ!!東の領主の娘、アリサ・ディア・レクウェル!!そして助っ人として参戦する、イグラッド・ルインツァーレ!そして・・・え?これ、本物!?…あ、ええっと。な、なんと最後の一人は、先日の竜族の襲撃の際、たった一組でその全てを撃退した冒険者チームのリーダー・・・レイン・グレスティアァァァ!!!!』
司会のその宣言に、観客達はシン…と静まりかえり・・・内容を理解した人からだんだんと火が点っていく。
最後には、今日一番の爆音にまで達した。
「す、凄い熱狂具合ですね・・・こんなにもグレスティアさんが有名な冒険者だったとは・・・」
「はは・・・僕もこんなに名前が知られてるとは思いもしませんでしたけどね・・・」
レインが軽く手を挙げて応えると、地響きが鳴る程歓声が膨れ上がった。
(どんだけテンション上がってるんだよ・・・まぁ僕もなかなか楽しみなだけど)
『思わぬ参戦者ですが・・・さぁ!此度の決闘の方式は1対1となります!早速始めていきましょう!!双方、初戦に出場する方以外は、控え室の方へお戻りください!』
「あ、どうします?初戦、誰でます?」
「そうですね・・・」
「私が出よう」
アリサが考えていると、イグラッドが前のめりでそう進言した。
「あ、えと、やる気があるのはとても嬉しいのですが、先ずネルとレイから出てもらおうと思っていたんです」
「というと?」
「はい。私とネルとレイは冒険者学校では上位の実力だと自負しています。しかし、冒険者としては良くて私がランクA、ネルとレイはランクB程でしょう。先程の紹介の通り相手はランクA…つまり、ほぼ勝てません。それならばネルとレイは何回戦に出たとしてもあまり変わらないでしょう。それに、初戦の方が相手も魔術師が出て来やすいので。第一に決闘は、実力が低い方から戦っていくのが普通ですし・・・というのが理由です」
要するに、剣道で言う先鋒、次鋒、中堅・・・のような方式である。
(へぇ、この世界でもそんなのがあるんだ)
「分かりました。じゃあ僕らは先に戻ってます。実際どっちが出るかはお二人で決めて下さい」
ネルとレイは一瞬目を合わせ、結果ネルが初戦に出場することになった。
ネルを除く4人が控え室に戻ると、門が開いた場所に代わりに堅牢な鉄格子が降ろされた。
「・・・それにしても、アリサさんが当然のように戦うのがおかしいのかもしれないですけど、やっぱりハウルド自身は参戦しないんですね」
イスに座ったレインはずっと気になっていたことをアリサに聞く。
「・・・自分で言うのもなんですが、そういった点では私はどこかズレているんだと思います。貴族同士の決闘で自身が先陣に立つなんて、普通は有り得ませんから」
「じゃあ、ああやって誰かを雇って戦わせる訳ですか」
「はい。そうすることで、その貴族への冒険者からの評価や、財力という面でも優劣がつけられる…らしいです」
「ふーん・・・」
冒険者が依頼を受ける時一番重視するのはやはり報酬、その次に見るのが依頼者である。幾ら報酬が良いとは言っても、どんな依頼者であろうとその報酬次第で依頼を受ける様な冒険者は、あまり良い目では見られないのである。
貴族その他権力者の冒険者からの評価は、国民からの支持とほぼ同義なんだとか。
「だとすると、ハウルド家ってあんまり良い印象が無いんじゃないです?」
「えぇ、そこが私も少し不思議に思っているところなんです。冒険者チーム【零落の凶弾】は、このスラグディアでも五本の指に入るとても有名なチームです。そんな彼等が依頼を受けるということは、それに見合うだけの報酬、そしてハウルド家への評価がなされたということ。報酬は恐らくなんの問題もなく超高額が提示されたでしょう。しかし・・・」
「悪い噂しかないハウルド家の依頼なのに何故受けたのか、だな」
アリサの言葉を変わるかのように、イグラッドが口にする。
「はい・・・少し気になります・・・」
「うーん・・・ま、取り敢えず今は勝つ事に集中しましょう。ほら、初戦が始まりますよ」
考えるのがめんどくさくなったレインは話を切り、鉄格子の向こうを指さした。
4人が視線を向けると、ネルとその相手が向かい合い、まさに試合が開始されるところだった。
(さぁ、今回の相手は楽しい試合が出来る相手かな・・・?)
心の中で呟くレインは、その口角を上げた────
『・・・ごほん、ではこれより!第一試合を開始したいと思います!!ハウルド家──【零落の凶弾】──からは、魔法詠唱師リクネルド・ウェイル!!そしてレクウェル家からは、同じく魔法詠唱師ネル・ナ・サージュ!!これは魔術師同士の戦い、単純な魔法の実力が試されるこの試合を制するのはどちらなのか!!では・・・始めっ!!!!』
司会のアナウンスにより、初戦の開始が宣言された。
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