ガチャで爆死したら異世界転移しました
冒険者学校 ⑫.5 決闘へ
「・・・お姉様・・・」
荒削りの岩壁に囲まれた部屋で、少女は唯一与えられた布に包まり膝を抱えている。
ドアの隙間から覗く微少な光以外はほぼ何も見えないと言っても良いほど真っ暗なこの部屋では、最早ここへと連れてこられてから何日たっているのかも分かっていなかった。
そんな時ズルズルと、何かの這うような音が鳴った。
「ひっ・・・」
その音の主を知る少女は怯え、薄暗い部屋の隅へ身を寄せる。
「はぁ~いリエナちゃぁん・・・あれぇ?寝てるぅ?」
建付けが悪くなり音のなる扉を開け、何かが部屋へと入ってきた。
「来ないで・・・」
何かはじりじりと近づいてくる。
「なぁんだぁおきてるじゃないかぁ」
「お姉様・・・アリサお姉様・・・」
少女は、弱い自分をいつも守ってくれる最愛の姉の名を呼ぶ。
「きみがぁここにきてからぁもういっかげつぅ・・・そろそろぉじつりょくこうしにうつらなきゃぁならないんだよぉ?それにぃ・・・こんなにたってるのにぃたすけにこないなんてぇ・・・あ、見捨てられた!?」
「そんなことはっ・・・ひっ・・・」
何かの中から急に現れた顔が、普段とはとてもにつかないほど綺麗な声を出した。
少女は驚き顔を上げるが、すぐにそれを後悔する。顔を上げた目の前にあった顔は、目と鼻が潰れ、口だけがパクパクと動いていた。
「あはっ!良いねその顔、とっても良いよ私好みだ・・・あははっ!」
「っ・・・」
何かは機嫌が良くなったのか、顔を仕舞い部屋を出ていった。
少女は最早耐え難いほどの恐怖で、縮こまり膝を抱えることしか出来なかった───
「おはようございます。グレスティアさん」
早朝にもかかわらず、アリサは清々しい程綺麗な笑顔を見せる。
「おはようございます・・・お二人も」
「おはよう」
「・・・」
アリサの後ろで返事(?)をするレイとネルは、心なしか緊張しているようであった。
それもそのはず、この日はアリサとハウルド家との決闘の日なのだ。
「・・・」
レインがアリサを見ると、打って変わって何やら暗い表情をしている。
「どうしたんですか?貴方に限って、緊張という訳では無いでしょう?」
「・・・いえ、ただこうやって、自分の事ばかり優先してしまって良いのかと・・・」
恐らく妹の事を言っているのだろう。今まさに怖い思いをしているかもしれない妹の捜索を他人に任せ、自分は嫁ぐのが嫌だから決闘する、というのに思うところがあるらしい。
何を言ってるんだと、レインは心の中で呟く。
「なら、これからでも探しに行きますか?どこにいるかも分からない、誰に攫われたのかもわからない人を。ただ、貴方が決闘を放棄したら、僕は妹さんの捜索の依頼を辞めますよ」
「え、何故ですか・・・?」
「だって、決闘しないということはその・・・ハウルド家でしたっけ、に嫁ぐわけでしょう?あなた目当ての大貴族の下へ。そこでどんな扱いをされるかは知りませんが、そんな状況で僕の提示する報酬を約束できるんですか?」
「それは・・・」
「じゃあ、貴方が今すべきことは、まず自身の身の安全の確保でしょう。それが、妹さんを救う一歩になるんですから」
「そう、ですね・・・リエナを守る為にも、先ずは私が自由に動けるようなしなければなりませんものね。あの子を本当に守る為にも、こんなくだらない目的の決闘なんて、直ぐに終わらせてしまいましょう」
アリサはレインを正面に見、固く決意した。
「それはそうと、決闘の会場はどこなんです?」
「はい。会場は・・・国立闘技場です。日々剣闘士達が試合をし、一般の方達から貴族まで観戦しにくる場所です。大規模戦闘用の会場で、その広さから、上級魔術も使用が許可されているんですよ」
(なんか、そのまんまな名前だな・・・もっとかっこいい名前だったら雰囲気があるのに。国立闘技場って・・・)
「じゃあ、今回の決闘は一般の人が見に来たりするんですかね?」
「来るでしょうね、それも大勢が・・・」
「大勢?」
「ハウルド家の者が、このように宣伝をしているのだ。全く…何を考えているのか」
レインが何故か分からくて首を傾げると、ネルが一枚の紙を渡してきた。
「えっと、『本日、国立闘技場午前の部にて、大貴族ハウルド家当主、ターズィリェーゼ・ロウリューズナー・ダルメルグュエフ・ハウルド、東の領主の娘、アリサ・ディア・レクウェルによる決闘を行う。試合は五名同士の一対一であり、合計の勝利の数が多い方が最終的な勝利者となる』、ですか」
「そうだ、普通このような貴族同士の試合は、王城や個人で所有している場所で行われるべきだ。それをこんな…
見世物のようにっ!」
自身の仕える人がこういった扱いを受ける事に、ネルは納得がいかないようで唇を噛む。
「それでもハウルド家は、陛下から四つの名を名乗ることを許されている家系です。こうすることによって、家の威厳を守る事も大事なのでしょう」
そんなネルを、レイが淡々と諭した。
「だがなっ!」
「ネル。貴方が私を思って言ってくれることはわかっているわ。ありがとう。けど、今は抑えて頂戴。大丈夫、決闘で勝てばいいのよ、沢山の国民や貴族の前で負けたとなれば、ハウルド家も大きな顔はできないでしょう?」
「・・・分かりました」
アリサが宥めると、ようやくネルは鎮まった。
「・・・」
「どうしたんですか?グレスティアさん」
そんな中ずっと黙っていたレインを不思議に思ったアリサが、レインに聞いてきた。
「・・・いえ、なんでも。じゃ、行きましょう。案内して貰えますか」
と、特に何も無かったように言うレイン、が───
(ハウルドっての、名前長っ!!しかも言い難っ!!!)
と、心の中では絶叫していた。
荒削りの岩壁に囲まれた部屋で、少女は唯一与えられた布に包まり膝を抱えている。
ドアの隙間から覗く微少な光以外はほぼ何も見えないと言っても良いほど真っ暗なこの部屋では、最早ここへと連れてこられてから何日たっているのかも分かっていなかった。
そんな時ズルズルと、何かの這うような音が鳴った。
「ひっ・・・」
その音の主を知る少女は怯え、薄暗い部屋の隅へ身を寄せる。
「はぁ~いリエナちゃぁん・・・あれぇ?寝てるぅ?」
建付けが悪くなり音のなる扉を開け、何かが部屋へと入ってきた。
「来ないで・・・」
何かはじりじりと近づいてくる。
「なぁんだぁおきてるじゃないかぁ」
「お姉様・・・アリサお姉様・・・」
少女は、弱い自分をいつも守ってくれる最愛の姉の名を呼ぶ。
「きみがぁここにきてからぁもういっかげつぅ・・・そろそろぉじつりょくこうしにうつらなきゃぁならないんだよぉ?それにぃ・・・こんなにたってるのにぃたすけにこないなんてぇ・・・あ、見捨てられた!?」
「そんなことはっ・・・ひっ・・・」
何かの中から急に現れた顔が、普段とはとてもにつかないほど綺麗な声を出した。
少女は驚き顔を上げるが、すぐにそれを後悔する。顔を上げた目の前にあった顔は、目と鼻が潰れ、口だけがパクパクと動いていた。
「あはっ!良いねその顔、とっても良いよ私好みだ・・・あははっ!」
「っ・・・」
何かは機嫌が良くなったのか、顔を仕舞い部屋を出ていった。
少女は最早耐え難いほどの恐怖で、縮こまり膝を抱えることしか出来なかった───
「おはようございます。グレスティアさん」
早朝にもかかわらず、アリサは清々しい程綺麗な笑顔を見せる。
「おはようございます・・・お二人も」
「おはよう」
「・・・」
アリサの後ろで返事(?)をするレイとネルは、心なしか緊張しているようであった。
それもそのはず、この日はアリサとハウルド家との決闘の日なのだ。
「・・・」
レインがアリサを見ると、打って変わって何やら暗い表情をしている。
「どうしたんですか?貴方に限って、緊張という訳では無いでしょう?」
「・・・いえ、ただこうやって、自分の事ばかり優先してしまって良いのかと・・・」
恐らく妹の事を言っているのだろう。今まさに怖い思いをしているかもしれない妹の捜索を他人に任せ、自分は嫁ぐのが嫌だから決闘する、というのに思うところがあるらしい。
何を言ってるんだと、レインは心の中で呟く。
「なら、これからでも探しに行きますか?どこにいるかも分からない、誰に攫われたのかもわからない人を。ただ、貴方が決闘を放棄したら、僕は妹さんの捜索の依頼を辞めますよ」
「え、何故ですか・・・?」
「だって、決闘しないということはその・・・ハウルド家でしたっけ、に嫁ぐわけでしょう?あなた目当ての大貴族の下へ。そこでどんな扱いをされるかは知りませんが、そんな状況で僕の提示する報酬を約束できるんですか?」
「それは・・・」
「じゃあ、貴方が今すべきことは、まず自身の身の安全の確保でしょう。それが、妹さんを救う一歩になるんですから」
「そう、ですね・・・リエナを守る為にも、先ずは私が自由に動けるようなしなければなりませんものね。あの子を本当に守る為にも、こんなくだらない目的の決闘なんて、直ぐに終わらせてしまいましょう」
アリサはレインを正面に見、固く決意した。
「それはそうと、決闘の会場はどこなんです?」
「はい。会場は・・・国立闘技場です。日々剣闘士達が試合をし、一般の方達から貴族まで観戦しにくる場所です。大規模戦闘用の会場で、その広さから、上級魔術も使用が許可されているんですよ」
(なんか、そのまんまな名前だな・・・もっとかっこいい名前だったら雰囲気があるのに。国立闘技場って・・・)
「じゃあ、今回の決闘は一般の人が見に来たりするんですかね?」
「来るでしょうね、それも大勢が・・・」
「大勢?」
「ハウルド家の者が、このように宣伝をしているのだ。全く…何を考えているのか」
レインが何故か分からくて首を傾げると、ネルが一枚の紙を渡してきた。
「えっと、『本日、国立闘技場午前の部にて、大貴族ハウルド家当主、ターズィリェーゼ・ロウリューズナー・ダルメルグュエフ・ハウルド、東の領主の娘、アリサ・ディア・レクウェルによる決闘を行う。試合は五名同士の一対一であり、合計の勝利の数が多い方が最終的な勝利者となる』、ですか」
「そうだ、普通このような貴族同士の試合は、王城や個人で所有している場所で行われるべきだ。それをこんな…
見世物のようにっ!」
自身の仕える人がこういった扱いを受ける事に、ネルは納得がいかないようで唇を噛む。
「それでもハウルド家は、陛下から四つの名を名乗ることを許されている家系です。こうすることによって、家の威厳を守る事も大事なのでしょう」
そんなネルを、レイが淡々と諭した。
「だがなっ!」
「ネル。貴方が私を思って言ってくれることはわかっているわ。ありがとう。けど、今は抑えて頂戴。大丈夫、決闘で勝てばいいのよ、沢山の国民や貴族の前で負けたとなれば、ハウルド家も大きな顔はできないでしょう?」
「・・・分かりました」
アリサが宥めると、ようやくネルは鎮まった。
「・・・」
「どうしたんですか?グレスティアさん」
そんな中ずっと黙っていたレインを不思議に思ったアリサが、レインに聞いてきた。
「・・・いえ、なんでも。じゃ、行きましょう。案内して貰えますか」
と、特に何も無かったように言うレイン、が───
(ハウルドっての、名前長っ!!しかも言い難っ!!!)
と、心の中では絶叫していた。
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