ガチャで爆死したら異世界転移しました
冒険者学校 ⑧ 決闘ー良からぬ目ー
「始めっ!」
レイの発した合図で試合は開始された。
と、同時に、アリサが全力でレイン目掛け駆けてきた。中々な速さだ。一般人では到底反応できないだろう。
「はぁっ!」
その勢いを殺さず、右手に持った剣を左下から斜めに振り抜いた。
しかし、それをレインは後ろに一歩引いて躱し、ついでに木刀を左手で持ち右側から一の字に振る。
ガキィィィン───
まるで金属同士がぶつかる様な、甲高い音が場内に響いた。
「くっぅぅ」
レインが振った木刀をアリサの鉄製の盾が防いだのだ。
「おぉ!」
レインはつい声に出してしまった。それもそのはずだろう、今回は更に加減しているとはいえ、前は勇者であるカイルでもレインの攻撃を防げなかったのだ。
(じゃあ、加減はこのレベルでいいか)
「きゃあ!」
と思った途端、アリサが左に飛んだ。体制を直せず、そのまま地面を転がる。
つい嬉しくなり、少し力を入れすぎて盾ごと飛ばしてしまったようだ。
「あ・・・だ、大丈夫ですか?」
アリサは片膝をつき、俯いている。もう疲れたのか、肩で息をしているようだった。
「・・・戦闘中に、相手の、心配とは、随分と、余裕ですね・・・」
顔を上げず言うアリサだが、実質まだ何もしていないようなレインからすれば、もっと頑張って欲しいところである。
「あぁいや、すみません」
「・・・・・・ふぅ。この通り、大丈夫では無いですが、まだですっ!」
膝や腕に血を滲ませながら、アリサは叫ぶ。
「【火球】!!」
(やっと魔法を使ってきた。しかも詠唱破棄か、ここからが本番ってことかな?)
上級魔法科所属とか言っていたのにいきなり物理で来るので、実は魔法使えないとか?と、思ったりしていたが、そんなことは無かったようだ。
アリサの掌から放たれた直径2m程の火の玉は、レイン目掛け一直線に向かってくる。
「じゃあこっちも魔法で行きましょう・・・魔法複製──【火球】」
詠唱によりレインの掌から放たれた、目の前にあるものと全く同じ火の玉は、アリサが放ったものとぶつかり、同時に四散し──
「はぁあ!!」
その後ろから出てきたアリサが、大上段から全力で剣を振り下ろしてくる。
しかし、レインは木刀の剣先を右手で掴み横に持ち、それを受け止めた。
「くっ」
アリサは後ろに跳び、構え直す。
(あぁ、いいね。楽しい。すっごく楽しいな)
久方ぶりの長い試合に、レインの機嫌はとても良かった。
「流石は上級魔法科。自分の魔法に隠れて相手に接近するとは、随分と大胆な戦い方ですね」
レインは心からの称賛を送る。
「ありがとうと、言っておくわ。しかしそれもグレスティアさんには通じなかったようだけどね」
「それはまぁ・・・でも、さっきの攻撃に幻影系の魔法を組み合わせて、僕の後ろから迫ってくる幻とかを作っていれば、もしかしたら有効な攻撃ができるかもしれませんよ」
突然の相手からのアドバイスに、しかしアリサは、苦笑いで返すしかなかった。
自分の決め手とも言うべき攻撃を、ああも簡単に防がれ、改善点まで指摘されたのだ。そこにある実力の差など、嫌でも理解するだろう。
「では、今度はこちらから行きますよ」
「・・・いつでも」
「では・・・」
ごくりと、誰かの喉が鳴る。
そしてレインは、常識的な速度で踏み込み、アリサの左脇腹めがけて木刀を振る。
アリサは先程のレイン同様両手で剣を持ち、立てて構えて防ぐ。
「ぐっ・・・うぐわっ」
しかし、がら空きになった右横腹にレインが蹴りを入れる。
再び左側に飛ばされたアリサは、今度はバランスを崩さずに着地した。
その後ろの観客席には、心配そうにアリサを見つめるレイとネルがいた。
(こういう時に横からちょっかいをかけてくるのかと思ったんだけど、流石にそこまで無神経ではなかったか。それか、それほどまでに自分の主人を信頼してるってことか・・・)
「くぅっ・・・まだ・・・ですっ!」
結構なダメージを与えたにも関わらず、アリサはふらつきながらも立ち上がる。レインはその姿を見て、困惑していた。
(・・・ただの試合なのになんでこんなになってまでまだ向かってくるのか・・・?実力の差は歴然だろうに・・・)
蹴られた横腹が痛むのか、屈むような姿勢で、つい先程までは綺麗に整えられていた綺麗な金髪も、今では痛みボサボサになってしまっている。そんな状況でも、まだ戦意は衰えてはいなかった。
「・・・分かりませんね。何故まだ向かってけるんですか?」
「何故、ですか・・・守りたいものがあるから、では、駄目ですか?」
レインの問いに、問い返す形ではあるが、その中に嘘がないのは分かった。
「何を守るんですか?何からですか?」
「それは、貴方が私に勝った時にお話すると約束しました」
(ん〜?・・・こういう展開って普通、ちょっと実力を見せたら「覚えてろ〜」とかいって逃げてくパターンではないのか?・・・まぁ、勝てば全部話してくれるんだろうし、いいか。それに───)
「すみません」
「な、なんですか?いきなり・・・」
唐突に謝るレインに、アリサは戸惑う。
「いえ、何か良からぬ目に見られてるみたいなので、残念ですがお終いにしますね────【睡眠】」
「えっ・・・?」
アリサがレインの言葉を理解するのよりも早く、一瞬で回り込んだレインの魔法によって気絶させられてしまった。
(はぁ・・・折角の楽しい試合を邪魔するとは、一体どこの誰だか。もしかして、国王の言ってた不穏な動きってやつなのかな?)
「「アリサ様っ!!」」
眠って倒れそうになったアリサを抱えながら考え込むレインの元に、レイとネルが駆けつけてきた。
「大丈夫ですよ。ただ魔法で眠って貰っただけです。そんなにもしないうちに目を覚ますでしょう」
アリサをネルへと預け、一応目の場所を探ってみるレインだが、もうどこにも感じ取ることは出来なかった。
「じゃ、試合は僕が勝ったってことで、良いんですね。」
「えぇ、あなたの勝ち、という事になるわね」
未だにレインを睨んでくるネルに代わって、レイが答える。
「じゃ、今日はもう疲れたので、約束の話は、後日聞かせてもらいますね」
特に用もなくなったレインは踵を返し、歩き出す。
「・・・いいえ、グレスティアさん。後日ではなく、今ここで話しましょう」
「・・・あれ、起きるにしては随分と早いですね?」
レインが振り向くとそこには、さっき眠らせたばかりのはずの、アリサが立っていた────
レイの発した合図で試合は開始された。
と、同時に、アリサが全力でレイン目掛け駆けてきた。中々な速さだ。一般人では到底反応できないだろう。
「はぁっ!」
その勢いを殺さず、右手に持った剣を左下から斜めに振り抜いた。
しかし、それをレインは後ろに一歩引いて躱し、ついでに木刀を左手で持ち右側から一の字に振る。
ガキィィィン───
まるで金属同士がぶつかる様な、甲高い音が場内に響いた。
「くっぅぅ」
レインが振った木刀をアリサの鉄製の盾が防いだのだ。
「おぉ!」
レインはつい声に出してしまった。それもそのはずだろう、今回は更に加減しているとはいえ、前は勇者であるカイルでもレインの攻撃を防げなかったのだ。
(じゃあ、加減はこのレベルでいいか)
「きゃあ!」
と思った途端、アリサが左に飛んだ。体制を直せず、そのまま地面を転がる。
つい嬉しくなり、少し力を入れすぎて盾ごと飛ばしてしまったようだ。
「あ・・・だ、大丈夫ですか?」
アリサは片膝をつき、俯いている。もう疲れたのか、肩で息をしているようだった。
「・・・戦闘中に、相手の、心配とは、随分と、余裕ですね・・・」
顔を上げず言うアリサだが、実質まだ何もしていないようなレインからすれば、もっと頑張って欲しいところである。
「あぁいや、すみません」
「・・・・・・ふぅ。この通り、大丈夫では無いですが、まだですっ!」
膝や腕に血を滲ませながら、アリサは叫ぶ。
「【火球】!!」
(やっと魔法を使ってきた。しかも詠唱破棄か、ここからが本番ってことかな?)
上級魔法科所属とか言っていたのにいきなり物理で来るので、実は魔法使えないとか?と、思ったりしていたが、そんなことは無かったようだ。
アリサの掌から放たれた直径2m程の火の玉は、レイン目掛け一直線に向かってくる。
「じゃあこっちも魔法で行きましょう・・・魔法複製──【火球】」
詠唱によりレインの掌から放たれた、目の前にあるものと全く同じ火の玉は、アリサが放ったものとぶつかり、同時に四散し──
「はぁあ!!」
その後ろから出てきたアリサが、大上段から全力で剣を振り下ろしてくる。
しかし、レインは木刀の剣先を右手で掴み横に持ち、それを受け止めた。
「くっ」
アリサは後ろに跳び、構え直す。
(あぁ、いいね。楽しい。すっごく楽しいな)
久方ぶりの長い試合に、レインの機嫌はとても良かった。
「流石は上級魔法科。自分の魔法に隠れて相手に接近するとは、随分と大胆な戦い方ですね」
レインは心からの称賛を送る。
「ありがとうと、言っておくわ。しかしそれもグレスティアさんには通じなかったようだけどね」
「それはまぁ・・・でも、さっきの攻撃に幻影系の魔法を組み合わせて、僕の後ろから迫ってくる幻とかを作っていれば、もしかしたら有効な攻撃ができるかもしれませんよ」
突然の相手からのアドバイスに、しかしアリサは、苦笑いで返すしかなかった。
自分の決め手とも言うべき攻撃を、ああも簡単に防がれ、改善点まで指摘されたのだ。そこにある実力の差など、嫌でも理解するだろう。
「では、今度はこちらから行きますよ」
「・・・いつでも」
「では・・・」
ごくりと、誰かの喉が鳴る。
そしてレインは、常識的な速度で踏み込み、アリサの左脇腹めがけて木刀を振る。
アリサは先程のレイン同様両手で剣を持ち、立てて構えて防ぐ。
「ぐっ・・・うぐわっ」
しかし、がら空きになった右横腹にレインが蹴りを入れる。
再び左側に飛ばされたアリサは、今度はバランスを崩さずに着地した。
その後ろの観客席には、心配そうにアリサを見つめるレイとネルがいた。
(こういう時に横からちょっかいをかけてくるのかと思ったんだけど、流石にそこまで無神経ではなかったか。それか、それほどまでに自分の主人を信頼してるってことか・・・)
「くぅっ・・・まだ・・・ですっ!」
結構なダメージを与えたにも関わらず、アリサはふらつきながらも立ち上がる。レインはその姿を見て、困惑していた。
(・・・ただの試合なのになんでこんなになってまでまだ向かってくるのか・・・?実力の差は歴然だろうに・・・)
蹴られた横腹が痛むのか、屈むような姿勢で、つい先程までは綺麗に整えられていた綺麗な金髪も、今では痛みボサボサになってしまっている。そんな状況でも、まだ戦意は衰えてはいなかった。
「・・・分かりませんね。何故まだ向かってけるんですか?」
「何故、ですか・・・守りたいものがあるから、では、駄目ですか?」
レインの問いに、問い返す形ではあるが、その中に嘘がないのは分かった。
「何を守るんですか?何からですか?」
「それは、貴方が私に勝った時にお話すると約束しました」
(ん〜?・・・こういう展開って普通、ちょっと実力を見せたら「覚えてろ〜」とかいって逃げてくパターンではないのか?・・・まぁ、勝てば全部話してくれるんだろうし、いいか。それに───)
「すみません」
「な、なんですか?いきなり・・・」
唐突に謝るレインに、アリサは戸惑う。
「いえ、何か良からぬ目に見られてるみたいなので、残念ですがお終いにしますね────【睡眠】」
「えっ・・・?」
アリサがレインの言葉を理解するのよりも早く、一瞬で回り込んだレインの魔法によって気絶させられてしまった。
(はぁ・・・折角の楽しい試合を邪魔するとは、一体どこの誰だか。もしかして、国王の言ってた不穏な動きってやつなのかな?)
「「アリサ様っ!!」」
眠って倒れそうになったアリサを抱えながら考え込むレインの元に、レイとネルが駆けつけてきた。
「大丈夫ですよ。ただ魔法で眠って貰っただけです。そんなにもしないうちに目を覚ますでしょう」
アリサをネルへと預け、一応目の場所を探ってみるレインだが、もうどこにも感じ取ることは出来なかった。
「じゃ、試合は僕が勝ったってことで、良いんですね。」
「えぇ、あなたの勝ち、という事になるわね」
未だにレインを睨んでくるネルに代わって、レイが答える。
「じゃ、今日はもう疲れたので、約束の話は、後日聞かせてもらいますね」
特に用もなくなったレインは踵を返し、歩き出す。
「・・・いいえ、グレスティアさん。後日ではなく、今ここで話しましょう」
「・・・あれ、起きるにしては随分と早いですね?」
レインが振り向くとそこには、さっき眠らせたばかりのはずの、アリサが立っていた────
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