ガチャで爆死したら異世界転移しました

ひやし

冒険者学校 ⑤ 迷子

「じゃあ、行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」

身支度を整えた——かといって何かをしたわけでもないが——レインは、賢者の食卓の前でこちらを向いて微笑んでいるおばさんに手を振って応え、歩き出した。

・・・それから、約1時間が経過した。

「・・・あれぇ?おばさんからもらったメモによると、このあたりのはずなんだけどな・・・」

おばさん曰く、冒険者学校は賢者の食卓からなら20分ほどあれば着くだろうということだったのだが、なぜかレインはいまだたどり着けないでいた。それに、これまでに何回か道行く人に聞いてみようとしたのだが、どうしてかみんな揃って遠巻きにレインを見るだけで、話すタイミングを失っていたのだ。

「んん~~?」

「・・・あの、すみません。何かお困りですか?」

ふと、メモとにらめっこをするレインに声がかかった。
顔を上げるとレインの前には、綺麗な長い金髪に、透き通るような碧眼を持つ少女が立っていた。

「あぁ、うん。ここに行きたいんだけど・・・」

少女はレインの持つメモを覗く。

「これは・・・冒険者学校ですよね?」

「うん。このあたりだとは思うんだけど・・・」

「・・・えっと、冒険者学校はもっと南の方角ですね。私もこれから向かいますし、ご案内しますよ」

「あれ、南の方角・・・?」

レインは賢者の食卓を出て、南から北に向かって歩いてきたのだ。それがここからもっと南とは、どういうことだろうか。

(もしかして・・・この地図、上下逆に見てた・・・!?)

「はい。では、行きましょうか」

ショックを受けるレインには気付かず、少女は歩き出した。




「案内してくれてありがとう」

「いえいえ。これくらい当然だから、気にしなくて大丈夫だよ。それにしても、今まで学校であなたを見たことがないのだけど、噂の新入生っていうのが君なのかな?」

少女の案内で、レインはやっと冒険者学校の正門前に到着した。
どうやら、レインが入学することがすでに噂になっているらしい。

「あぁ、おそらくそうだろうね。僕はレイン・グレスティア、よろしく」

「私はリエナ・レヴィア。よろしくね。それじゃ、私はもう行かなきゃ」

「うん、じゃあね」

リエナは門を通り校内へと入っていった。
一昨日はただ行けばいいとしか言われなかったため、どうするか悩んだレインは、とりあえず門の横にある管理室の人に聞くことにした。

「すみません。今日から入学することになってる、レイン・グレスティアですけど」

「はい。話は伺っていますよ。ここをまっすぐ進んで、正面の校舎に入って左手の部屋で待って居てください。すぐに担当の者を向かわせますので」

「分かりました」




レインが先ほど言われた部屋で待って居ると、すぐに扉がノックされ、体育系なごつい中年の男性が入ってきた。

「さて、待たせたねグレスティア君。私はダレンド・デディルだ、君のクラスの担任をしている。よろしくな」

「よろしくお願いします」

レインはぺこりと頭を下げる

「よし。では早速教室へと向かおうか、ついてきなさい」

そうしてダレントの案内で、レインは教室へと向かったのだった。




「・・・さて、行きますよ。メア」

時は少し遡る。レインが賢者の食卓から出発したすぐ後、レインのサポートキャラ+‪α‬達は、主より与えられた仕事をこなすべく準備を整えていた。というか終わっている・・・一人を除いて。

「はぁ・・・私も主様と一緒に行きたかった・・・」

そんな愚痴を言いながらメアは、レインから渡された装備──ゲームで使っていたもの──の確認をしている。

「そんなことを言ったところで、今回陛下から報酬が出るのは主殿だけなのだし。それに、主殿から直接言い渡された仕事の方が大事だろう」

「それはそうなんだけど・・・」

と言っても、メア達がレインから与えられた仕事は、冒険者ギルドで適当なクエストを受けてお金を稼ぐという、なんともシンプルなものである。しかし、原動力がレインにあるメアにとっては、あまりやる気が起きないのだろう。そんな時──

「あ、主様は優しいですから、う、上手くやったら、なにかご褒美が貰えるかもしれませんよ!」

サラが意を決して放ったその言葉に、その場にいる全員が反応する。

「・・・それだわ。そう、その手があったわね!さぁ行くわよみんな、出発よ!」

そうして急に元気になったメアを先頭に、6人は宿をあとにした。

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