ガチャで爆死したら異世界転移しました
冒険者学校 ② 冷静
暗い。いや、今では数多の人型の影が入った槽から発せられる光によって、歩くには十分なほどの光度で照らされていので、厳密には薄暗いといったところだろうか。兎に角、岩盤を無理やりくり抜いたような壁を見れば、ここが地下だということがわかるだろう。
そんな、思いのほか広いのにもかかわらず息の詰まりそうな場所には、自身の何本もの手───触手といったほうが正しいだろうか───をうねらせながら、つい昨日できばかりのおもちゃと話す影があった。
「あぁ・・・きみはぁとぉってもいいそざいになるよぉ?・・・うんうん、そうぅ?あぁそうなんだぁ」
そう話す影に答える声はない。だが影は、まるでその、無いはずの声が聞こえているかのように未だに何かを呟いている。
だから、正確には【話している】とは言えないだろう。
「いやはや、——君。次々と被検体を増やしていくなんて。とても、それはとても研究熱心だねぇ。上司として、これほどうれしいことはないよ」
突然にかけられた声に、影は動きを一瞬とめた。
「まぁず、ワタシはいぃつきみのぶかになぁったのかなぁぁ?」
影は、いつの間にか自分の後ろに立っていた男にそう返す。
男はただ、ハハハと笑う。
「あぁそうだったね。君はそうだった。いやあ、未だにそんなに僕への敵意をありありと表してくれるのは君だけだよ。ぜひ、君にはそのままでいてほしいものだね」
笑顔で言う男に、影は調子が狂う感覚を覚える。
「・・・・・・でぇ、きょうはぁなにしにぃ?」
「うん。いやなに、竜族の大群が上に押し寄せてきた、なんて聞いたものだからね。——君に何かあったら・・・なんて冗談は置いておいて。まぁ実をいうと、特に用事があったというわけではないんだよ」
「ならぁ、ワタシはぁもうけんきゅうにぃもどらせてぇもらうよぉ」
「それは構わないよ、でも・・・」
「でもぉ?」
「押し寄せてきた竜族・・・どうなったと思う?」
男は今までとは違う、怖気の立つような微笑を浮かべた。
「ただいまー」
「あら、ティア君。おかえりなさい。言っていた通り、イグラッドさんはもう起きてたわよ?今は部屋にいると思うわ」
王城から帰ったレインはそう言うおばさんに礼を言い、部屋へと向かった。
「イグラッド、入るよ」
「あ、うん」
レインが部屋に入ると、イグラッドはレインが置いておいたマントを羽織り、ベットに座っていた。
「どう?傷の方は、まだ痛みとかある?」
レインはその隣に座る。
「あぁいや。そういったものは無い、大丈夫だ」
「そう。ならよかった」
「では、私も質問させてほしい」
そう言うとイグラッドは立ち上がり、マントを脱ぐ。
「実を言うと、戦場でおぬしと話してからの記憶がなくてな。それに加え、なぜか私の服が何かに貫かれたように穴が開いている・・・これは何の痕なのだ?」
すると、イグラッドは痕をよく見せるためか、レインに近づいてきた。
レインからすると、この状況を見られでもしたら、たまったものではない。誰にとは言わないが。
「あ、あぁうんうん。分かったから、ちょっと離れてね」
慌てて止めると、イグラッドはまたマントを羽織り、元の位置に座った。
「・・・まず、その傷についてなんだけど・・・えっと、驚かないで聞いてほしいんだけど・・・君は一回死んだんだよね」
「ふむ。そうだったのか、ならば私の記憶がないのも道理だな・・・ということは、おぬしは蘇生の魔法が使えるのか?」
イグラッドが冷静なことにレインは少し驚く。
「いや、蘇生魔法を使ったのはメアだけど・・・あんまり驚かないんだね」
「ああ、もう私はおぬしのことでは驚かないと、何でもありなのだと思うことにしたのだ」
そんなことをドヤ顔で言うイグラッド。
「で、そのメアというのは今どこにいるのだ?ぜひお礼を言いたいのだが」
今メア達はもう一つの部屋で待機するよう言ってある。
「わかった。じゃあ隣の部屋にいるだろうから行こうか」
「うむ・・・そうだ、もうひとつ聞きたいのだが、このマントは一体何でできているんだ?」
「えっと、それは確か・・・【聖獣王のケープ】だったかな。まぁそんなにいいものじゃないし、気に入らないなら取り換えるけど?」
「・・・い、いや、大丈夫だ。取り換える必要はない・・・・・・これでもそんなに良いものではない・・・?」
「うん、まぁ。中の下ってとこかな。じゃ、行こうか」
「・・・」
そして、レインと、無言になったイグラッドは、隣の部屋へと移動した。
そんな、思いのほか広いのにもかかわらず息の詰まりそうな場所には、自身の何本もの手───触手といったほうが正しいだろうか───をうねらせながら、つい昨日できばかりのおもちゃと話す影があった。
「あぁ・・・きみはぁとぉってもいいそざいになるよぉ?・・・うんうん、そうぅ?あぁそうなんだぁ」
そう話す影に答える声はない。だが影は、まるでその、無いはずの声が聞こえているかのように未だに何かを呟いている。
だから、正確には【話している】とは言えないだろう。
「いやはや、——君。次々と被検体を増やしていくなんて。とても、それはとても研究熱心だねぇ。上司として、これほどうれしいことはないよ」
突然にかけられた声に、影は動きを一瞬とめた。
「まぁず、ワタシはいぃつきみのぶかになぁったのかなぁぁ?」
影は、いつの間にか自分の後ろに立っていた男にそう返す。
男はただ、ハハハと笑う。
「あぁそうだったね。君はそうだった。いやあ、未だにそんなに僕への敵意をありありと表してくれるのは君だけだよ。ぜひ、君にはそのままでいてほしいものだね」
笑顔で言う男に、影は調子が狂う感覚を覚える。
「・・・・・・でぇ、きょうはぁなにしにぃ?」
「うん。いやなに、竜族の大群が上に押し寄せてきた、なんて聞いたものだからね。——君に何かあったら・・・なんて冗談は置いておいて。まぁ実をいうと、特に用事があったというわけではないんだよ」
「ならぁ、ワタシはぁもうけんきゅうにぃもどらせてぇもらうよぉ」
「それは構わないよ、でも・・・」
「でもぉ?」
「押し寄せてきた竜族・・・どうなったと思う?」
男は今までとは違う、怖気の立つような微笑を浮かべた。
「ただいまー」
「あら、ティア君。おかえりなさい。言っていた通り、イグラッドさんはもう起きてたわよ?今は部屋にいると思うわ」
王城から帰ったレインはそう言うおばさんに礼を言い、部屋へと向かった。
「イグラッド、入るよ」
「あ、うん」
レインが部屋に入ると、イグラッドはレインが置いておいたマントを羽織り、ベットに座っていた。
「どう?傷の方は、まだ痛みとかある?」
レインはその隣に座る。
「あぁいや。そういったものは無い、大丈夫だ」
「そう。ならよかった」
「では、私も質問させてほしい」
そう言うとイグラッドは立ち上がり、マントを脱ぐ。
「実を言うと、戦場でおぬしと話してからの記憶がなくてな。それに加え、なぜか私の服が何かに貫かれたように穴が開いている・・・これは何の痕なのだ?」
すると、イグラッドは痕をよく見せるためか、レインに近づいてきた。
レインからすると、この状況を見られでもしたら、たまったものではない。誰にとは言わないが。
「あ、あぁうんうん。分かったから、ちょっと離れてね」
慌てて止めると、イグラッドはまたマントを羽織り、元の位置に座った。
「・・・まず、その傷についてなんだけど・・・えっと、驚かないで聞いてほしいんだけど・・・君は一回死んだんだよね」
「ふむ。そうだったのか、ならば私の記憶がないのも道理だな・・・ということは、おぬしは蘇生の魔法が使えるのか?」
イグラッドが冷静なことにレインは少し驚く。
「いや、蘇生魔法を使ったのはメアだけど・・・あんまり驚かないんだね」
「ああ、もう私はおぬしのことでは驚かないと、何でもありなのだと思うことにしたのだ」
そんなことをドヤ顔で言うイグラッド。
「で、そのメアというのは今どこにいるのだ?ぜひお礼を言いたいのだが」
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「わかった。じゃあ隣の部屋にいるだろうから行こうか」
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「・・・い、いや、大丈夫だ。取り換える必要はない・・・・・・これでもそんなに良いものではない・・・?」
「うん、まぁ。中の下ってとこかな。じゃ、行こうか」
「・・・」
そして、レインと、無言になったイグラッドは、隣の部屋へと移動した。
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