ガチャで爆死したら異世界転移しました

ひやし

人竜戦争 ③ 昔話

これは今よりずっとずっと昔のお話。人族と竜族は仲良く、狩りの得意な竜族が食料を、手先が器用で数の多い人族が生活を、お互いに助け合って暮らしていました。
ですがそんなある日、竜族の幼い王女様が誰かにさらわれてしまいました。竜族達は怒り、人族達が犯人だと言って聞きません。
さらにそのうち、人族の子供たちがさらわれるようになりました。人族達は竜族が有らぬ仕返しをしているのだと言って怒りました。
双方は相入れることなく、そのまま戦争へと発展していってしまいます。竜族は圧倒的な力で、人族は圧倒的な数と知恵で戦います。戦争は4年にも及び、両者とも疲弊していきました。
竜族の王と勇者達の最後の戦いも決着かと思われた頃、空から戦場の真ん中に、左が純白、右が漆黒の4対の翼の生えた少女が一人、降りてきます。少女は自身を魔族と名乗り、竜族と人族へと一人で戦いを挑みます。
一時休戦した竜族と人族が少女へと殺到します。一瞬かと思われたその戦いは、しかし、誰もが思いもしない結果で、やはり一瞬でつきます。
竜族の王と勇者達の攻撃が少女に届く直前、少女が何かを呟きます。その瞬間、膨大な魔法陣が一瞬で詠唱され、魔法が発揮しました。
戦場の全てが闇に飲まれ、痕には巨大なクレーターと、真紅の瞳を輝かせ、一人不気味に微笑む少女が残るだけでした。
やがて少女は、天へ登り、どこかへ消えていってしまいます。少女を恐れた竜族は、大陸から姿を消しました。こうして大陸は、人族が治めるようになったのです。




「・・・こんなお話があったんだね・・・」

ギルドの本棚にあった【人竜戦争】という歴史書を閉じたリーナは、しばし目を閉じ、これから起こるであろう戦いへと思いを馳せる。

先程はこの国の勇者の登場で、冒険者たちがヒートアップしすぎて、緊急クエストの説明どころではなくなっていたギルド内は、今は嘘のように静まり返っていた。そんなギルドの片隅の机には、リーナと、冒険者達に握手を求められ、律儀に全てに応対していたリーナに助けを求められたレイン一行の6人が座っている。

「えっと…リーナ・・・さん?」

静寂に耐えきれなかったレインが、正面に座るリーナを呼ぶ。

「・・・あっ!ごめん、少し考え事を、ね。どうしたの?あと、リーナでいいよ」

「あぁ、うん。じゃあリーナ。僕は…ティアでいいよ。えっと、他の…3人は居ないの?」

セタリッド国には、全部で4人の勇者と呼ばれる者がいる。
聖魔弓・リーナ・スノ
万物盾・カイル・フリデール
大賢者・キリア・リリアード
神光速・サリア・リーン
の4人で、レインがこの世界に転移してから初めてあった4人でもある。
因みに、名前の前に付いているのは二つ名であり、高ランクの冒険者や腕の立つ者に国から与えられるもので、特に意味は無い。

「あー、ほかの3人は先に街の南門に向かってもらってるの。私はさっきまで王城に呼び出されてたから、丁度私が一番ギルドに近かったしね」

(南門か・・・そう言えばこの街って大陸でもほぼ最南端の街なんだっけ?ほかの街が襲われたなんて情報もないし、ここが最初に襲われるってことは、竜族達は南から飛んできたってことか)

今レイン達がいるスラグディアは、大陸の南側の大国、セタリッドの首都であり最南の都市である。当然その南には都市どころか村すらない、少し広めの平地と林があるだけだ。そしてその先は広大な海が広がっている。

「それにしても、ティア君ってあの後どうしたの?手に入れた素材だけでも渡せたとはいっても、ほぼ一文無しだったから心配してたんだ」

あの後、というのは恐らく自分がこの世界に来た初日だという事が分かったレインは答える。

「素材を売ったお金だけでも、2日3日くらい生活できるくらいにはなったから別に大丈夫だったよ」

「あ、そうだったんだ。・・・でもよくあのくらいの素材の金額だけで2日3日も過ごせたね?私的にはそんなに高価なものは無かったと思うんだけど・・・まぁ、いいや。兎に角、元気に過ごせてるなら良かったよ」

リーナはそう言って微笑む。

(しかし、ただ道端で会っただけの他人によくここまでできるよな・・・なんというか、眩しいね。うん。ギルド内のあの人気にも頷けるな。まぁ、あれは勇者って言うのもあるとは思うけど…っと)

「ほんと、あの時は色々とありがとう。何かお返しがしたいんだけど・・・生憎今は何もめぼしいものがなくて、また後ででいいかな?」

レイン慎也は日本では他人に借りを作りまくっていたのでその反動か、借りは必ず返すことを心に決めている。

「いえいえ、お返しなんて必要ないよ。それに、あれくらい当然だもの」

「いや、するよ。しないと気が済まないしさ」

「・・・そう?そこまで言うなら・・・うん。じゃあお返し、してもらおうかな」

レインは頷き席を立つ。

「じゃあそろそろ話も終わりにして、南門に向かおうか。あ、それと、さっきまでのクエストの報告なんだけど。紅華、お願いしてもいい?」

レインはギルドに来た本来の目的を思い出し、頷いた紅華に託す。

「終わったらすぐに南門に来てくれ」

「了解しました」

そう言って紅華は席を立ち、ギルドの奥へと入っていく。

「・・・よし。じゃあ行こうか」

「そうね、3人も待ってるだろうし。急がないと」

「「「了解しました」」」

レインは、リーナと、ギルドに入ってから今まで、了解しましたしか言っていないメア達を連れ、ギルドを後にした。




「白竜王 ① 依頼」 の回から三人称視点を主に、会話、心の中の3つで物語を進めていくよう書き始めたのですが、こちらの方が書く時にしっくりくるので、今後はこの書き方で行こうと思います。

【変更点】ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ギルドでの調べ物」ステータスの説明より。

・【素早さ】行動した時の速度に影響する。ちなみに素早さが高い=足が速いとはならない。
                        ↓↓↓
・【素早さ】行動した時(攻撃の速度、走る速さ、など)の速度に影響する。

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他の変更した部分、今後変更する場合は、あまり重要でないものはここに書くことはしません。
今回は、ステータスに関する事なので一応書いておきました。

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