選ばれし100年の最弱剣士~100年前まで最強でしたが今や最弱採取係です~
第20話 ブルーゴーラウンド
頬杖をつくイールの目の前にはガラスがあり、その向こうで多くの人が行き交っているのが見える。
やはりイギアは活気のある街だ。
宮殿は無いが、城跡が残っていたり、物の取引が盛んだったりする。そしてこの人通りだ。
まさに商人の町と言える風景である。
つまるところ、彼は今喫茶店の窓際の席に座って外を眺めているわけだ。
さて、何故イールがこの様な状態なのかというと、やはり彼の前に居る青髪の青年のせいである。
彼と二人きりという不可思議な状況に気まずさを感じながら、イールはどうしてこうなったのかを改めて考え直してみた。
「イールさん、聞いてますか?」
その青年の声によって、飛んでいたイールの意識はやっと彼の肉体へと戻った。
「…ああ、聞いてる。えっと、なんで俺とお前がお茶?」
当然の疑問である。
名前も知らない相手からお茶の誘いというのはぞっとしないものだ。
「理由は後で説明します。とりあえず行きましょう。」
その時、何故かイールは彼の真っ直ぐな眼差しを怖いと思った。
「お兄ちゃん…?」
急かす兄を奇妙に思ったのか、エイナは不満そうな顔をして兄を見た。
兄はそれに対して笑顔を浮かべる。
「エイナは皆さんと遊んでいなよ。仲良くなれたんだろ?」
「……うん。」
それを聞くと、青年はイールの手首を掴んで玄関から外へ引っ張り出した。
「では、行きましょう。エイナ、くれぐれも無礼の無いようにな。」
君がいちばん無礼だ、とは言えないイールは引かれるがまま街へと出ることになった。
そして今、この喫茶店に至る。
どうしてこうなった…!?
正面では青い髪の青年が、涼しい顔で頼んだコーヒーを飲んでいる。
イールも気まずさで喉がカラカラになっていたため、とりあえずコーヒーを一口飲んだ。
二人の間にある丸いテーブルに、2つのカップが同時に置かれる。
「実は、ユキさんはファンクラブに対しては殆ど何も話してくれないんですよ。なので正直ユキさんに挨拶するのが不安で不安で、ついイールさんを。突然お茶なんて、すみませんでした。」
こめかみをポリポリと掻きながら青い髪の青年が謝罪した。
文脈からすると、特にイールを誘った理由は無いように思える。
しかし、それがイールには引っ掛かった。
そして何かを決心したのか、深く息をついた。
「本当にそれだけか?」
その質問に青年はすぐには答えなかった。
何でもないはずの周りの音が煩く聞こえるほどの沈黙が、二人の間に流れ始める。
青年は目をキョロキョロさせて何かを考えた後、ため息をついて遂に口を開いた。
「いえ、本当は違う目的がありまして」
そこまで言うと彼は姿勢を正し、拳を膝に乗せた。
「改めて、エイルと申します。先日は妹がお世話になりました。ありがとうございました。」
そして深々と頭を下げる。
その光景は、周りの客が少々引くほど長く続いた。
しかし、それでもイールは腑に落ちない。
「で、本題はなんだ?礼のために俺だけ連れ出したんじゃないだろ?」
頭を下げながらそれを聞いていたエイルだったが、直後舌をペロッと出しながら頭を上げた。
「バレました?はい、実は伺いたいことがありまして」
「なんだ?」
エイルはふぅっと呼吸を整え、真剣な表情になった。
「どうして魔法やスキルが使えないフリなんてしているんです?」
それはイールの想定を遥かに越える質問だった。
驚きのあまり、一瞬思考が停止する。
「…フリ?いや、俺は本当に使えないんだよ。」
その答えにエイルはため息をつき、懐をまさぐって何かを取り出した。
「これを見ても、まだそう言えますか?」
彼が取り出したそれは何枚かの紙だった。
ボロボロになり、黄ばんでいる。
かなり古いものなのが見た目だけで判断できる。
彼が机に置いた紙の上には
「…ヘルヘイム討伐」
イールは書いてある文字を思わず口にした。
「90年以上も前に書かれたものですが、巷に出回っているどの記録よりも明確な内容で、信憑性が高い。まあ、誰かの手書きなので所々読めませんが。」
そう言われ少し目を通すと、確かにヘルヘイム討伐について詳しい内容が拙い字で記されていた。
イールが感心していると、エイルは「特に…」と言ってある部分に指を置いた。
「ここです。他の記録には曖昧に記されているヘルヘイムを倒した人物についての部分。酷いものだと『神の裁き』とさえ記されるこれですが、ここにはハッキリと書いてあるんです。」
指をスライドさせながら話していたエイルが、何かを隠すように中途半端な場所で指を止めた。
イールが指に目をやったのを確認すると、彼は焦らすように少しずつ問題の箇所を露にしていった。
そして見えた文字は
「銀髪の不老剣士」
ニヤついてそう言ったエイルの正面には、銀髪で不老の採取係が座っているのだ。
やはりイギアは活気のある街だ。
宮殿は無いが、城跡が残っていたり、物の取引が盛んだったりする。そしてこの人通りだ。
まさに商人の町と言える風景である。
つまるところ、彼は今喫茶店の窓際の席に座って外を眺めているわけだ。
さて、何故イールがこの様な状態なのかというと、やはり彼の前に居る青髪の青年のせいである。
彼と二人きりという不可思議な状況に気まずさを感じながら、イールはどうしてこうなったのかを改めて考え直してみた。
「イールさん、聞いてますか?」
その青年の声によって、飛んでいたイールの意識はやっと彼の肉体へと戻った。
「…ああ、聞いてる。えっと、なんで俺とお前がお茶?」
当然の疑問である。
名前も知らない相手からお茶の誘いというのはぞっとしないものだ。
「理由は後で説明します。とりあえず行きましょう。」
その時、何故かイールは彼の真っ直ぐな眼差しを怖いと思った。
「お兄ちゃん…?」
急かす兄を奇妙に思ったのか、エイナは不満そうな顔をして兄を見た。
兄はそれに対して笑顔を浮かべる。
「エイナは皆さんと遊んでいなよ。仲良くなれたんだろ?」
「……うん。」
それを聞くと、青年はイールの手首を掴んで玄関から外へ引っ張り出した。
「では、行きましょう。エイナ、くれぐれも無礼の無いようにな。」
君がいちばん無礼だ、とは言えないイールは引かれるがまま街へと出ることになった。
そして今、この喫茶店に至る。
どうしてこうなった…!?
正面では青い髪の青年が、涼しい顔で頼んだコーヒーを飲んでいる。
イールも気まずさで喉がカラカラになっていたため、とりあえずコーヒーを一口飲んだ。
二人の間にある丸いテーブルに、2つのカップが同時に置かれる。
「実は、ユキさんはファンクラブに対しては殆ど何も話してくれないんですよ。なので正直ユキさんに挨拶するのが不安で不安で、ついイールさんを。突然お茶なんて、すみませんでした。」
こめかみをポリポリと掻きながら青い髪の青年が謝罪した。
文脈からすると、特にイールを誘った理由は無いように思える。
しかし、それがイールには引っ掛かった。
そして何かを決心したのか、深く息をついた。
「本当にそれだけか?」
その質問に青年はすぐには答えなかった。
何でもないはずの周りの音が煩く聞こえるほどの沈黙が、二人の間に流れ始める。
青年は目をキョロキョロさせて何かを考えた後、ため息をついて遂に口を開いた。
「いえ、本当は違う目的がありまして」
そこまで言うと彼は姿勢を正し、拳を膝に乗せた。
「改めて、エイルと申します。先日は妹がお世話になりました。ありがとうございました。」
そして深々と頭を下げる。
その光景は、周りの客が少々引くほど長く続いた。
しかし、それでもイールは腑に落ちない。
「で、本題はなんだ?礼のために俺だけ連れ出したんじゃないだろ?」
頭を下げながらそれを聞いていたエイルだったが、直後舌をペロッと出しながら頭を上げた。
「バレました?はい、実は伺いたいことがありまして」
「なんだ?」
エイルはふぅっと呼吸を整え、真剣な表情になった。
「どうして魔法やスキルが使えないフリなんてしているんです?」
それはイールの想定を遥かに越える質問だった。
驚きのあまり、一瞬思考が停止する。
「…フリ?いや、俺は本当に使えないんだよ。」
その答えにエイルはため息をつき、懐をまさぐって何かを取り出した。
「これを見ても、まだそう言えますか?」
彼が取り出したそれは何枚かの紙だった。
ボロボロになり、黄ばんでいる。
かなり古いものなのが見た目だけで判断できる。
彼が机に置いた紙の上には
「…ヘルヘイム討伐」
イールは書いてある文字を思わず口にした。
「90年以上も前に書かれたものですが、巷に出回っているどの記録よりも明確な内容で、信憑性が高い。まあ、誰かの手書きなので所々読めませんが。」
そう言われ少し目を通すと、確かにヘルヘイム討伐について詳しい内容が拙い字で記されていた。
イールが感心していると、エイルは「特に…」と言ってある部分に指を置いた。
「ここです。他の記録には曖昧に記されているヘルヘイムを倒した人物についての部分。酷いものだと『神の裁き』とさえ記されるこれですが、ここにはハッキリと書いてあるんです。」
指をスライドさせながら話していたエイルが、何かを隠すように中途半端な場所で指を止めた。
イールが指に目をやったのを確認すると、彼は焦らすように少しずつ問題の箇所を露にしていった。
そして見えた文字は
「銀髪の不老剣士」
ニヤついてそう言ったエイルの正面には、銀髪で不老の採取係が座っているのだ。
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