選ばれし100年の最弱剣士~100年前まで最強でしたが今や最弱採取係です~
第8話 新たな冒険の予感です。
朝になり、リビングには五人が揃っていた。
今何も知らない三人に対して、ハルが一から説明している。最初は三人もと状況が理解できないようだったが、話が進むにつれて事の重大さが伝わったらしく、表情も真剣になっている。
「そういうことらしいので、これから私たちもその落とし穴に落ちに行きますよ。」
ハルが妥当らしい決断を言い渡すと、すぐにユキから反論が返ってきた。
「まって、それだと危険。今までのダンジョンの傾向から、隠し部屋の真下もまた隠し部屋のことが多い。落ちた先はまだ隠し部屋の入り口が塞がってるかも。そしたら出れなくなる。」
今までのダンジョンは全て、隠し部屋の位置は各層で同じだった。
もちろん、層によってマップも違ったが、それを考慮しても同じ位置に存在していた。
「それも、そうですね。ですがやはり落ちた冒険者の身も確認するべきですし…。」
「なら、俺が行くよ。隠し部屋ならモンスターは出ないだろうし。」
隠し部屋には基本的にモンスターはいない。
入り口が開いていれば話は別だが、駆け出しの冒険者でも入り口を塞ぐような工夫はしているだろうし、イール一人で行っても大丈夫だろうという考えのもとの発言だった。
「まあ確かにイールは戦闘できないし、いいんじゃねぇ?」
そう言ったライは髪ゴムをくわえ、髪を少し上の方でで束ねている。
彼女のスイッチは髪の毛の結ぶことで入る。今日は高めのポニーテールにするらしく、これは気合い十分な証拠だ。
「でも、イールさんだけでは流石に危険すぎます。まだ未知の場所なわけですし。」
ハルの意見はごもっともだ。
今までのダンジョンとは違うかもしれないし、あまりに危険な賭けになるだろう。
「なら、私がイールと一緒に落ちるよ。その冒険者さんも怪我してるかもしれないし。私は治癒なら任せてもらって大丈夫だからさ。」
治癒魔法の最高峰「治癒(絶)」を使えるレイなら、どんな怪我でも治せるだろう。
万が一死んでいたとしても、24時間以内なら大丈夫だ。
「では、そうしましょう。私とライとユキはワープで、レイが悲鳴を聞いたと言う286層に。レイとイールさんは13層へ行って、落とし穴に落ちてください。」
「了解!」
イールは歯を見せて親指を立てた。それを見た四人も同時に親指を立てる。
そうして五人は地中の塔へ向かった。
地中の塔の入り口は大勢の人が塞いでいた。
一晩経つと噂はすぐに広まるのが、この街イギアである。
ギルドの職員のオバサンはかなり口が軽く、イールも最初に来たときには悪い噂を広められて困ったものだった。
冒険者はもちろんのこと、商人や子供の姿も確認できる。その大半は野次馬だろう。
ざわつく人々の顔には、憂色よりも興味が垣間見える。
「どうして!どうしてあの子がぁ…。」
そんな中にも手で顔を覆い、泣き崩れる女性の姿がある。
そして彼女の前で沈んだ表情を浮かべ、ぶら下がった拳に力が入る一人の冒険者。
落ちた子の母親と、その子のパーティーのリーダーだろう。
自然と五人はその様子に目を向けた。
「私たちが、なんとかするしかないですね。」
ハルのそれは独り言だったのだろうが、四人への確認のようにもとれた。
「そうだね。絶対助けなきゃ。」
レイは硬い表現で応える。自分だけが聞いたかもしれない冒険者の悲鳴に、目を瞑った責任を感じているのだ。
無論、それは彼女だけではない。
「アタシらには、その責任があるよな。」
テキトーな判断をしてしまった罪悪感が、目の前の情景によってライの中で積み上げられてしまった。
「ハル、これ。」
相変わらず厚皮のユキが出したのは2つの小さい透明な水晶「クリシュタルス」。
いわゆる魔道具というやつで、離れた相手と水晶を通して会話できるのだ。
「そうですね。1つはレイに渡してください。」
レイはクリシュタルスを受け取り、ポケットにしまった。
「では、行きましょう。」
人混みをかき分けようやく入り口のワープ装置の前に辿り着く。
そして3人は順に286層へワープした。
「イール。私たちも行こう!」
イールとレイはワープを使えないので、急いで13層に向かった。
浅い層のモンスターは、魔法やスキル無しでもイールの剣技があれば倒せたため、それほど時間はかからなかった。
「ここか!」
フラートに教えてもらった隠し部屋の位置まで到達した。
どこからかの光に照らされた部屋の真ん中には、直径3m程の穴が空いている。
覗くとすぐそこには闇が広がっている。今にも引きずり込まれそうな、恐ろしい闇だ。
「レイさん…。ホントにここからわざと飛び降りるんですか…?」
そう言ったイールの襟は既にレイに掴まれている。
「行くしかないでしょ!男見せなさい!」
全く躊躇せずに、レイへ穴へ飛び降りた。
自ずとイールも引きずり込まれる。
闇よりもレイに恐怖を感じたイールであった。
「うわぁあぁあぁあ!」
「こ、ここは…?」
イールは闇へのダイブの恐怖で暫く気を失っていたが、レイが使っているルークスの光で目を覚ました。
レイはクリシュタルスに顔を向けている。
「ここはやっぱり286層みたい。でも落ちたって言われてる冒険者さんの姿は見えないの。あと、部屋には1つだけ抜け穴みたいなのがあるよ。」
イールは今の状況がだいたい把握できた。
周りを見渡すと、確かに横穴がある。それもまた、闇を従えていて、イールは恐怖で身震いした。
「多分、今3人がいるところの右の壁を壊してくれたらここに繋がると思う。」
「分かりました。ライ、できますか?」
右の壁を指差してハルがライに尋ねる。ライは肩を回し、首を左右に曲げて鳴らす。
「しゃー!身体強化!ペルクート!」
ライはスキル「ペルクート」で思いっきり壁を殴った。その拳の速度は音速をも超えていた。
殴った部分には綺麗に穴が空いており、そこから円を描くように岩肌にヒビが入っている。ライが手を引き抜くと、その壁は見事に崩れ落ちた。
合流した五人がまず目を向けたのは、ライが作った穴とは別の、あの抜け穴。
「さて、どうしたものでしょうか…。」
今何も知らない三人に対して、ハルが一から説明している。最初は三人もと状況が理解できないようだったが、話が進むにつれて事の重大さが伝わったらしく、表情も真剣になっている。
「そういうことらしいので、これから私たちもその落とし穴に落ちに行きますよ。」
ハルが妥当らしい決断を言い渡すと、すぐにユキから反論が返ってきた。
「まって、それだと危険。今までのダンジョンの傾向から、隠し部屋の真下もまた隠し部屋のことが多い。落ちた先はまだ隠し部屋の入り口が塞がってるかも。そしたら出れなくなる。」
今までのダンジョンは全て、隠し部屋の位置は各層で同じだった。
もちろん、層によってマップも違ったが、それを考慮しても同じ位置に存在していた。
「それも、そうですね。ですがやはり落ちた冒険者の身も確認するべきですし…。」
「なら、俺が行くよ。隠し部屋ならモンスターは出ないだろうし。」
隠し部屋には基本的にモンスターはいない。
入り口が開いていれば話は別だが、駆け出しの冒険者でも入り口を塞ぐような工夫はしているだろうし、イール一人で行っても大丈夫だろうという考えのもとの発言だった。
「まあ確かにイールは戦闘できないし、いいんじゃねぇ?」
そう言ったライは髪ゴムをくわえ、髪を少し上の方でで束ねている。
彼女のスイッチは髪の毛の結ぶことで入る。今日は高めのポニーテールにするらしく、これは気合い十分な証拠だ。
「でも、イールさんだけでは流石に危険すぎます。まだ未知の場所なわけですし。」
ハルの意見はごもっともだ。
今までのダンジョンとは違うかもしれないし、あまりに危険な賭けになるだろう。
「なら、私がイールと一緒に落ちるよ。その冒険者さんも怪我してるかもしれないし。私は治癒なら任せてもらって大丈夫だからさ。」
治癒魔法の最高峰「治癒(絶)」を使えるレイなら、どんな怪我でも治せるだろう。
万が一死んでいたとしても、24時間以内なら大丈夫だ。
「では、そうしましょう。私とライとユキはワープで、レイが悲鳴を聞いたと言う286層に。レイとイールさんは13層へ行って、落とし穴に落ちてください。」
「了解!」
イールは歯を見せて親指を立てた。それを見た四人も同時に親指を立てる。
そうして五人は地中の塔へ向かった。
地中の塔の入り口は大勢の人が塞いでいた。
一晩経つと噂はすぐに広まるのが、この街イギアである。
ギルドの職員のオバサンはかなり口が軽く、イールも最初に来たときには悪い噂を広められて困ったものだった。
冒険者はもちろんのこと、商人や子供の姿も確認できる。その大半は野次馬だろう。
ざわつく人々の顔には、憂色よりも興味が垣間見える。
「どうして!どうしてあの子がぁ…。」
そんな中にも手で顔を覆い、泣き崩れる女性の姿がある。
そして彼女の前で沈んだ表情を浮かべ、ぶら下がった拳に力が入る一人の冒険者。
落ちた子の母親と、その子のパーティーのリーダーだろう。
自然と五人はその様子に目を向けた。
「私たちが、なんとかするしかないですね。」
ハルのそれは独り言だったのだろうが、四人への確認のようにもとれた。
「そうだね。絶対助けなきゃ。」
レイは硬い表現で応える。自分だけが聞いたかもしれない冒険者の悲鳴に、目を瞑った責任を感じているのだ。
無論、それは彼女だけではない。
「アタシらには、その責任があるよな。」
テキトーな判断をしてしまった罪悪感が、目の前の情景によってライの中で積み上げられてしまった。
「ハル、これ。」
相変わらず厚皮のユキが出したのは2つの小さい透明な水晶「クリシュタルス」。
いわゆる魔道具というやつで、離れた相手と水晶を通して会話できるのだ。
「そうですね。1つはレイに渡してください。」
レイはクリシュタルスを受け取り、ポケットにしまった。
「では、行きましょう。」
人混みをかき分けようやく入り口のワープ装置の前に辿り着く。
そして3人は順に286層へワープした。
「イール。私たちも行こう!」
イールとレイはワープを使えないので、急いで13層に向かった。
浅い層のモンスターは、魔法やスキル無しでもイールの剣技があれば倒せたため、それほど時間はかからなかった。
「ここか!」
フラートに教えてもらった隠し部屋の位置まで到達した。
どこからかの光に照らされた部屋の真ん中には、直径3m程の穴が空いている。
覗くとすぐそこには闇が広がっている。今にも引きずり込まれそうな、恐ろしい闇だ。
「レイさん…。ホントにここからわざと飛び降りるんですか…?」
そう言ったイールの襟は既にレイに掴まれている。
「行くしかないでしょ!男見せなさい!」
全く躊躇せずに、レイへ穴へ飛び降りた。
自ずとイールも引きずり込まれる。
闇よりもレイに恐怖を感じたイールであった。
「うわぁあぁあぁあ!」
「こ、ここは…?」
イールは闇へのダイブの恐怖で暫く気を失っていたが、レイが使っているルークスの光で目を覚ました。
レイはクリシュタルスに顔を向けている。
「ここはやっぱり286層みたい。でも落ちたって言われてる冒険者さんの姿は見えないの。あと、部屋には1つだけ抜け穴みたいなのがあるよ。」
イールは今の状況がだいたい把握できた。
周りを見渡すと、確かに横穴がある。それもまた、闇を従えていて、イールは恐怖で身震いした。
「多分、今3人がいるところの右の壁を壊してくれたらここに繋がると思う。」
「分かりました。ライ、できますか?」
右の壁を指差してハルがライに尋ねる。ライは肩を回し、首を左右に曲げて鳴らす。
「しゃー!身体強化!ペルクート!」
ライはスキル「ペルクート」で思いっきり壁を殴った。その拳の速度は音速をも超えていた。
殴った部分には綺麗に穴が空いており、そこから円を描くように岩肌にヒビが入っている。ライが手を引き抜くと、その壁は見事に崩れ落ちた。
合流した五人がまず目を向けたのは、ライが作った穴とは別の、あの抜け穴。
「さて、どうしたものでしょうか…。」
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