選ばれし100年の最弱剣士~100年前まで最強でしたが今や最弱採取係です~

海野藻屑

第4話 やっぱり魔法を使いたいです。

「よう!おっさん!」

「お、イールの坊主じゃねえか。どーした?」

この筋肉ゴリゴリの黒ひげの人は鍛冶屋のおっさん、リウス・フェール。この国、いや、この世界でいちばん腕のいい鍛冶屋だと自他共に認める程の腕前だ。自分で言ってしまうところが玉に瑕だが。

「どーしたじゃねえよ。遂にアレ、手に入ったんだ!」

「アレってまさか!アレか!?」

「おうよ!」

そう言ってイールはさっきのリザードから剥ぎ取った直径10cmほどの水晶らしきものをドヤ顔で見せた。

「じゃーん!碧い水晶体だ!」

自信満々なイールとは違い、リウスは目をパチパチさせている。

「ど、どーしたんだよ。おっさん。」

「おめぇ、それ、碧い水晶体じゃねえよ。どう考えてもでかすぎだろ。」

「はあ!?じゃあこれは何だってんだよ!?」

目をパチパチさせたまま、リウスは説明を始めた。

「そりゃ多分、翠の水晶体だな…。幻のアイテムって言われてっからよ、俺も正直信じられねえ。碧い水晶体なんかよりも相当レアだぜ。」

「マジか!あ、でもさ、これは俺がやりたいことに使えるのか…?」

「ああ。しかも碧い水晶体使うよりハイクオリティにできるぜ。」

それを聞いた瞬間、イールは飛び上がった。

「っしゃああ!じゃあよ、おっさん!三日後までに頼むぜ!」

「バカかおめぇは!オートエンチャントウエポンだぞ!3日で終わるわけねえだろ!それに、3日ってこたぁ、おめぇ、グラディオで使う気か?」

「それ以外ないだろ?そろそろ序列最下位を抜け出したいんだよ。」

「残念だが、今回は諦めな。3日じゃ終わらねえのは確実だからな。世界一の鍛冶屋が言うんだ、間違いねえ。」

イールの顔から笑顔が消えた。

「完成は3ヶ月後くらいになると思う。それまで魔法はお預けだ。」

「あぁ、分かったよ。でき上がったら知らせてくれ。」

イールはリウスに翠の水晶体を差し出し、そのまま家へ帰った。

イールが求めていたオートエンチャントウエポンというのは、武器自体に魔法が埋め込まれている武器の事だ。武器の使用者は自分の魔力を使わずに、その武器に合った魔法を使うことができる。
そして3日後に開催されるグラディオでそれを使いたかったのだ。グラディオは年に一度開かれる、Lv80以上の冒険者が出場する対人試合を行う大会だ。初の開催は90年前。その初開催から90年間、イールは序列最下位をキープしている。魔法もスキルもOKなルールなため、イールにとってはどう考えても不利なのだ。

「今年こそ、一勝くらいしたかったのにな…。」





プチコーナー

鍛冶屋にて

リウス「翠の水晶体。美しい。この色、このフォルム、このにお…くっさ!オエェ…。くっさ!」

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