東方疑心録

にんじん

嫌な予感

「………何だったんだろ、あの夢…」

剣はベッドに横になったままそう呟いた。先程まで見ていた夢、それを剣は全て覚えていた。それはこれまでのどの夢とも違う初めて見るものだった。

「なんだってあんな夢を…あれがもし、僕の記憶の一部だったとしたら、僕は何者なんだ?」

ここ最近、剣は自分が何者かが分からなくなることがある。パチュリーにああ言ったが、自分のことが分からなくなっていた。それと同時に記憶が戻ることが怖くもあった。

「もし…もし記憶を取り戻してそれで自分のことも何もかもを思い出して、その記憶によっては霊夢達との関係が崩れるかもしれない…」

今、剣の胸の内にあるのは、記憶を取り戻したことにより、霊夢達との関係が崩れるかもしれないという不安と、自分が何者なのかという疑いだった。
正直な所、剣は今幸せである。異変こそ起きているがこうやって霊夢達皆と楽しく過ごせていることが剣にとってとてもかけがえのないものになっていた。だからこそ、そんな毎日を失いたくないと強く思ってしまう。

「………こんなこと考えても仕方ないよな……よし!!」

剣はベッドから跳ね起きると、頬をパチンと叩く。

「記憶が戻ったときはその時考えればいい!」

たとえ未来に、この先に不安があってもそれは気にしてもどうにもならないこと、どうあがいても手が届かないこと。剣はそう割りきって、目の前の、手が届く範囲のことを大切にしようと思った。

「風呂入るかな…」

剣はそう呟き、ベッドから降り、準備をすると部屋を後にした。





「ふぃ~~~、やっぱ一番風呂は気持ちいいなぁ」

剣はとても大きな湯船の縁に体を預けながらそう言った。ただでさえ大きくて気持ちいいお風呂なのに、一番に入ったという謎の優越感から剣は満足していた。

「それに今回はちゃんと確認したからな」

確認というのは、前回、剣は霊夢が入っていた風呂に突入してしまったことがある。その反省を活かして脱衣場でだれも入ってないことを確認してから入っている。

「さすが紅魔館、お風呂一つとってもやっぱ違うなぁ」

剣がそう感心しながら風呂を堪能していたが、その時間は急に終わりを告げる。


「相変わらず馬鹿みたいにでかい風呂ねぇ」

「あら?馬鹿は霊夢じゃないの?」

「わーーい!皆でお風呂ーー!!」

「妹様、走ったら危ないですよ」


剣が入っている風呂に霊夢、レミリア、フラン、咲夜が入ってきた。

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