東方疑心録

にんじん

咲夜とお話

「どうしたのかしら霊夢?少し鈍っているんじゃなくって?」

レミリアが本格的に霊夢を煽り出す。それを霊夢は涼しい顔で

「あんたこそ、動きにキレがないんじゃない?」

と返す。そう軽口を交わしながらも二人とも攻撃の手を緩めることはない。
それを遠くから見ていた剣は、隣にいる咲夜に話しかける。

「ねぇ、止めなくてよかったの?たぶん、いや確実にレミリア泣かされるよ?」

確かにレミリアも強いがそれでも恐らく霊夢のほうが上だろう。それだとまたレミリアが負けて泣かされるのだ。

「お嬢様が言い出したことだし従者である私が口出しすることじゃないわ。それに、」

そこで咲夜は一旦息をつくとこう続けた。

「もし負けて泣かれたら私が慰めるもの」

そう言う咲夜はこれまで剣が見たことのないような柔らかい笑みを浮かべていた。
それを見た剣は目を丸くして咲夜を見つめる。

「…なによ」

それに気づいた咲夜が口を尖らせてジト目で見てくる。

「いや、咲夜って真面目で冷静ってイメージがあるからそんなふうに笑うのがなんか意外で…」

先程の笑っていた顔は普段の彼女からは想像できないものだった。どちらかと言えば咲夜はポーカーフェイスである。

「そりゃ私だって笑うわよ。人間だもの」

咲夜は『何言ってんのこいつ?』と言わんばかりの呆れた顔で言ってくる。

「そういうことじゃなくて、なんかこう、すっごくその…綺麗だったというか…」

剣はそう言う。それを聞いた咲夜は少し顔を赤くし、プイッと剣から目をそらし、

「お世辞いっても何も出ないわよ…」

と言うが、剣は、

「?お世辞じゃないよ?」

と言ってくる。自分が恥ずかしいことを言っているとも知らずに。

「………あなた、それ本気で言ってる?」

「うん」

そう答えると咲夜は『はぁ~~~』と深いため息をつく。

「(これは相当のタラシね。しかも無意識と。それは霊夢も苦労するわね)」

善くも悪くも剣は素直であるので思ったことを素直に相手に言ってしまうので自然と他人から見たらタラシのようになるのである。

「もう少し、考えて発言しないと後悔するわよ?」

「?わかったよ」

剣は不思議がりながらも頷くこういう所にも素直さがにじみ出ている。

「(なにを言ってるのかはよく分からなかったな。まあいいや、それよりあの二人はどうなってるかな?)」

剣はそうして咲夜に向けていた視線を戦っている二人の元に戻した。

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