東方疑心録
たった一つの解
「大丈夫?!お兄ちゃん!」
こいしが心配そうに聞いてくる。
「ああ、僕は大丈夫。それより、こいしが戻ってきたってことは、頼んだことは上手くいったのか?」
剣が問うとこいしは頷く。
「うん、これだよ。」
こいしはあるものを剣に手渡す。それは一本の注射器だった。中にはなにか薬品が入っている。
「ありがとうこいし。恩に着るよ。」
礼をのべるとこいしは、
「ううん、私もお姉ちゃんには元に戻ってほしいから。」
と、少し笑いながら言う。
「(とにかく、これで準備は整った。さとりさん、もう少しだけ待っててください。)」
「こいし、援護たのむ!」
「まかせて!」
そう言うと剣はさとりに向かって駆け出す。さとりはそんな剣に弾幕をぶつけるが、
「させないよ!」
その弾幕をこいしがことごとく撃ち落とす。そうしている間にも剣はさとりとの距離を詰め、あと一歩というところで剣はさとりの蹴りによって今日何度目か分からないほどに吹き飛ばされる。
「ぐうっ!?」
正直、剣は甘く見ていた。さとりが主に弾幕で戦っていることから、接近戦は不得意と見ていたのだが、流石と言ったところか、可憐な少女の見た目でも、さとりは妖怪。普通の人間より力は遥かに優れている。
「お兄ちゃん!」
こいしは声を上げるが、剣は立ち上がった。
「大丈夫!それより援護を続けてくれ!」
「わ、わかった!」
こいしは剣の指示どおり援護を続ける。剣はそんな状況下の中、冷静だった。
体はさとりの攻撃を受けたからか痛みが一周回って体中が熱い。それでも剣の頭はとても冷めていた。
「(どうすれば、これをさとりさんに?どうすれば近付ける?)」
剣は思案する。そして一つの方法を考え付く。それは相手の殺意を利用したもので、一歩間違えば命を落としかねない方法だった。だが、剣にはそんなことどうでもよかった。さとりに襲われたときのこいしの悲しそうな表情、あれを無くすためならば剣は自分の命は捨ててもいいと思っていた。
「なら、やるしかない、か。」
剣は覚悟を決めた表情でさとりに近づいていく。正面から。
「どうしたの!?お兄ちゃん!」
こいしは理解できなかった。先程吹き飛ばされた相手にまた正面から挑むなど自殺行為だと思ったからだ。
弾幕が剣を掠めていく。だが、そのどれも剣の歩みを止めるには至らなかった。そして先程のようにあと一歩の距離までふたりは近づく。さとりは腕を振り上げる。まるで剣をその手で貫こうとするかのように。
「ぐっ!?があっ!」
そしてそのまま剣は避けようともせず、さとりの手刀は剣の脇腹を貫いていた。偶然にもそこは初めて幻想郷に来たとき、化け物の攻撃によって傷を受けたところと同じだった。剣はそのときのことを思い出す。痛み、恐怖、そのどれもがこれまで経験しなかったものだった。
それでも剣は、
「こんな痛みくらい…こんなのが辛いのうちに入るかよ!!一番辛いのはさとりさんだろうが!自分の意志でもないのに大切な妹を傷つけさせられて!」
剣は誰にということもなく叫ぶ。
「それに、さっきの攻撃、僕を避けていっただろ!さとりさんの意識が完全にない訳じゃない!戻ってきてくれ、さとりさん!抵抗したんだろ?俺を殺そうとする意志に!思い出せ!さとりさんの大切なものはなんだよ!」
剣がそう叫ぶと、一瞬、さとりの目に光が戻り、そして
「こ…こい…し……」
明らかにこいしの名前を呼ぶ。
「そうだ!さとりさんが大切なのはこいしだよ!」
そう叫ぶと、剣はさとりを抱き締める。
「戻ってきてくれ!またこいしと生活したいだろ?それに僕はさとりさんがこいしを傷つけるような人じゃないと分かってる、さとりさんはとても妹思いなんだよ!」
「あ…あう………」
さとりは壊れた人形のような感じになっていた。剣に抱き締められながら体を震えさせている。
「(今ならいける!)」
剣はそう思うが早いか、さとりの首元に注射器を差し、中の薬品を注入する。すると、
「あ………」
さとりは糸の切れた人形のように動かなくなる。そんなさとりからはすぅすぅと寝息が聞こえる。
「終わったか…。」
剣はそう呟くと仰向けに倒れこんだ。隣ではさとりが寝息を立てている。
「ちょっと…これはやばいかも………。」
傷を受けてから結構時間が経っているので出血量が酷い。剣はなんとか意識を保っていたが、それも時間の問題だろう。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!しっかりして!!」
そばでこいしの声が聞こえる。必死になって剣に呼び掛けるこいしの姿を見て剣は、この姉妹を守れてよかったと、まどろみに堕ちていく意識の中で思い、そこで剣の意識は途切れた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
お久しぶりです。本日、総体が終わったのでこれから少しは投稿頻度が上がると思います。ちなみに私はバドミントン部で団体3位でしたw え?個人は、って?そこは…聞かないでおこうか…。
それより今回ちょっと臭すぎたかな?自分で書いててあまりの臭さにちょっと引いたw
こいしが心配そうに聞いてくる。
「ああ、僕は大丈夫。それより、こいしが戻ってきたってことは、頼んだことは上手くいったのか?」
剣が問うとこいしは頷く。
「うん、これだよ。」
こいしはあるものを剣に手渡す。それは一本の注射器だった。中にはなにか薬品が入っている。
「ありがとうこいし。恩に着るよ。」
礼をのべるとこいしは、
「ううん、私もお姉ちゃんには元に戻ってほしいから。」
と、少し笑いながら言う。
「(とにかく、これで準備は整った。さとりさん、もう少しだけ待っててください。)」
「こいし、援護たのむ!」
「まかせて!」
そう言うと剣はさとりに向かって駆け出す。さとりはそんな剣に弾幕をぶつけるが、
「させないよ!」
その弾幕をこいしがことごとく撃ち落とす。そうしている間にも剣はさとりとの距離を詰め、あと一歩というところで剣はさとりの蹴りによって今日何度目か分からないほどに吹き飛ばされる。
「ぐうっ!?」
正直、剣は甘く見ていた。さとりが主に弾幕で戦っていることから、接近戦は不得意と見ていたのだが、流石と言ったところか、可憐な少女の見た目でも、さとりは妖怪。普通の人間より力は遥かに優れている。
「お兄ちゃん!」
こいしは声を上げるが、剣は立ち上がった。
「大丈夫!それより援護を続けてくれ!」
「わ、わかった!」
こいしは剣の指示どおり援護を続ける。剣はそんな状況下の中、冷静だった。
体はさとりの攻撃を受けたからか痛みが一周回って体中が熱い。それでも剣の頭はとても冷めていた。
「(どうすれば、これをさとりさんに?どうすれば近付ける?)」
剣は思案する。そして一つの方法を考え付く。それは相手の殺意を利用したもので、一歩間違えば命を落としかねない方法だった。だが、剣にはそんなことどうでもよかった。さとりに襲われたときのこいしの悲しそうな表情、あれを無くすためならば剣は自分の命は捨ててもいいと思っていた。
「なら、やるしかない、か。」
剣は覚悟を決めた表情でさとりに近づいていく。正面から。
「どうしたの!?お兄ちゃん!」
こいしは理解できなかった。先程吹き飛ばされた相手にまた正面から挑むなど自殺行為だと思ったからだ。
弾幕が剣を掠めていく。だが、そのどれも剣の歩みを止めるには至らなかった。そして先程のようにあと一歩の距離までふたりは近づく。さとりは腕を振り上げる。まるで剣をその手で貫こうとするかのように。
「ぐっ!?があっ!」
そしてそのまま剣は避けようともせず、さとりの手刀は剣の脇腹を貫いていた。偶然にもそこは初めて幻想郷に来たとき、化け物の攻撃によって傷を受けたところと同じだった。剣はそのときのことを思い出す。痛み、恐怖、そのどれもがこれまで経験しなかったものだった。
それでも剣は、
「こんな痛みくらい…こんなのが辛いのうちに入るかよ!!一番辛いのはさとりさんだろうが!自分の意志でもないのに大切な妹を傷つけさせられて!」
剣は誰にということもなく叫ぶ。
「それに、さっきの攻撃、僕を避けていっただろ!さとりさんの意識が完全にない訳じゃない!戻ってきてくれ、さとりさん!抵抗したんだろ?俺を殺そうとする意志に!思い出せ!さとりさんの大切なものはなんだよ!」
剣がそう叫ぶと、一瞬、さとりの目に光が戻り、そして
「こ…こい…し……」
明らかにこいしの名前を呼ぶ。
「そうだ!さとりさんが大切なのはこいしだよ!」
そう叫ぶと、剣はさとりを抱き締める。
「戻ってきてくれ!またこいしと生活したいだろ?それに僕はさとりさんがこいしを傷つけるような人じゃないと分かってる、さとりさんはとても妹思いなんだよ!」
「あ…あう………」
さとりは壊れた人形のような感じになっていた。剣に抱き締められながら体を震えさせている。
「(今ならいける!)」
剣はそう思うが早いか、さとりの首元に注射器を差し、中の薬品を注入する。すると、
「あ………」
さとりは糸の切れた人形のように動かなくなる。そんなさとりからはすぅすぅと寝息が聞こえる。
「終わったか…。」
剣はそう呟くと仰向けに倒れこんだ。隣ではさとりが寝息を立てている。
「ちょっと…これはやばいかも………。」
傷を受けてから結構時間が経っているので出血量が酷い。剣はなんとか意識を保っていたが、それも時間の問題だろう。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!しっかりして!!」
そばでこいしの声が聞こえる。必死になって剣に呼び掛けるこいしの姿を見て剣は、この姉妹を守れてよかったと、まどろみに堕ちていく意識の中で思い、そこで剣の意識は途切れた。
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お久しぶりです。本日、総体が終わったのでこれから少しは投稿頻度が上がると思います。ちなみに私はバドミントン部で団体3位でしたw え?個人は、って?そこは…聞かないでおこうか…。
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