東方疑心録

にんじん

人工能力

「がはっ……ごほっ…うっ…なんで……」

剣は能力を使っていたのにも関わらず、さとりの弾幕によって吹き飛ばされていた。剣の能力を使えば自身に攻撃は当たらないはずなのだが何故か攻撃を受けていた。

「お兄ちゃん!?大丈夫!?」

こいしが心配そうに声を掛けてくる。

「ああ、僕は大丈夫だ。」

実際なんとか受け身をとれていたのでそこまでのダメージではなかった。しかし、今はそれよりも、

「なんで僕の能力が効かないんだ?」

自身に攻撃を当てたさとりへの対策が必要になってくる。

「知りたいですカ?気になりますカ?」

すると、青龍がにやにやとしながら聞いてくる。

「お前の仕業か!?」

「そうですヨ。先程の薬を打ち込むときに別の薬も混ぜておいたのでス。」

「なんだって?」

これ以上何かあるのかと剣は青龍を睨み付けた。

「いやー、この幻想郷とは面白いですネ。我々の見たことのないものがたくさんありまス。その中でも私が興味を持ったのが能力でしテ。私も能力はあるのですが研究者としてもっと調べたくなったのでス。」

「それとこれとはどう関係があるんだよ?」

「調べていくうちに思ったんですヨ。能力をもし人為的に『創れる』としたラ?とネ。」

「じゃあ…まさか……。」

剣は青龍の話す内容にただただ驚くことしかできなかった。

「そう、そして私は長い研究を経てついに創り上げたのでス!『人工能力』ヲ!」

「人工………能力……。」

青龍が話す衝撃の出来事。能力とは物によるがとてつもない力を発揮するものもある。それを人為的に、しかもこいつのようなやつが創ってしまったら大変なことになるのは間違いないだろう。いや、大変どころでは済まされないかもしれない。

「それでですネ、結構苦労したんですヨ。やはり人工とはいえ、能力は能力。かなりの魔力を消費するので今は一種類しかできていないのですヨ。」

「それで僕に攻撃を当てたってことか…。」

「そういうことでス。」

「それで、どんな能力なんだ?」

剣はダメ元で聞いてみる。しかし青龍はあっさりと話す。

「それはですねェ、あなたの能力は拒絶する程度の能力ですよネ?」

「!!なんでそれを……。」

「私はあなたをずっと観察していましたヨ。仕留め損なった獲物を狙うのは当然でしょウ?」

そこで剣はとっかかりを覚える。

「仕留め損なった…獲物?どういうことだ?」

青龍はまるで昔剣に会ったかのような口振りだった。

「おや?覚えていないのですカ?まあ、それならそれでいいのですガ。話を戻しましょウ。私はあなたに対抗できる人工能力を創ろうとしましタ。それが……、」

青龍は笑いながら

「『受け入れる程度の能力』でス。」

と言った。

「受け入れる程度の能力?それでなにができるって言うの?」

横で見守っていたこいしが我慢できなかったのか口を挟む。

「それはですネ、話は最初に戻るのですが、剣の能力は『拒絶する程度の能力』でス。それは自分に向かってくるものを拒絶することで攻撃を防いでいまス。なら、それを受け入れてしまえばいいのでス!拒絶しようとする力と、受け入れようとする力、相反する二つの力はお互いを打ち消しあうのでス。まあ、簡単に言えば、あなたの能力を相殺しているのですヨ。」

青龍の説明にこれからの戦いが厳しくなるのを剣は予感したのだった。


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