東方疑心録

にんじん

天国と地獄

少年は夢を見ていた。それはとても平和で幸せなものだった。霊夢の神社で生活し、霊夢と共に家事をして、魔理沙が来ては弾幕ごっこをし、冗談を言って笑いあうそんな幸せがそこにはあった。だが、そんな幸せな世界が一瞬で崩れる。そこに現れたのは見覚えのない人ばかりだった。その人達は僕に暴言をぶつけてくる。
『お前さえいなければ!』
『あなたのせいでこの村はおしまいよ!』
『この忌み子が!』
どれも身におぼえの無いものばかりだった。それでも僕に関係のあることらしかった。しかし、それを思い出すことが怖かった。なにが、というのはわからないが、とにかく怖かった。
「僕がなにをしたっていうんだ!?」
彼らは僕に近づいて来る。
「やめろ、こっちへくるな……」
僕はこの光景から目をそらすように目をつぶる。そして、いなくなったと思い目を開ける、すると、
『お前のせいでえぇぇぇぇ…』
急に目の前に現れた、しかも血まみれで、
「うわあぁぁぁぁぁ………!」

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「うわあぁぁぁぁぁ!」
僕は叫びながら目を覚ます。
「はぁ、はぁ、今の夢はいったい…」
荒い呼吸を整える。見れば、全身あせだらけだった。汗のせいでシャツが体に張り付いていた。
「風呂入るか…」
そう呟き、僕は風呂場へと向かう。
これが後に大変なことになることを剣は知らない。

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「さっきの夢はいったいなんだったんだ?」
先程見た夢を思い出す。見たことのない人達にあそこまで暴言をはかれるなんて。恐らくあの記憶は外でのものだ。自分は外でなにをしていたのだろうか?
そんなことを考えていると風呂場に到着した。僕は脱衣場で汗まみれのシャツを脱ぐと全裸になり鼻歌交じりに風呂場に入る。奥で誰かが風呂に入っているようだが、僕は気にしなかった。そのとき不審に思って引き返せばよかったのだが、僕はそのままだった。
「ふ~~、さっぱりするなぁ~~」
僕は体を洗っていた。汗をかいていて、しかも一番風呂だ、気持ちよくないわけがない。
「ふぃ~~~」
体を洗い終わった僕は、湯船につかった。湯気の向こうに誰かの影がある。
「誰かいるの?」
影が近づいて来る。僕は、その声に振り向いたのが間違っていた。
「あ、」
「あ、」
振り向いた僕の目に飛び込んできたのは、肌色だった。
そこにはいつもは、リボンで髪を整えているはずの霊夢の姿があった。彼女は艶のある黒髪をのばしていた。それにここは風呂場、視界を遮る物も、霊夢の体を隠すものもなにもない。
「な、な、な………///」
顔を赤くする霊夢。前にスタイルのことについて言ったが言うほどスタイルは悪くない。胸もある程度は出ていて引き締まっている所はちゃんと引き締まっている。しかしやはり、胸も巨乳というには程遠いものだった。
「安心しろ霊夢、お前はこれからまだまだ育つさ。希望を捨てるなよ。」
「な、あんたは、落ち着いて何てこと言ってんのよーー!///出ていきなさい!バカーー!///」
僕はその怒声に風呂場から逃げ出した。それにしても、いい景色だったと、夢の内容はともかくとして、感謝しなければと思う剣だった。

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