東方疑心録

にんじん

能力の開花

「ちょっと剣!大丈夫!?」
霊夢が煙の中にいるはずの僕にたずねてくる。
「ちょっとやり過ぎてしまったんだぜ…」
反省する魔理沙に、
「ちょっとどころじゃないわよ!あんたのマスパをただの人間が喰らったら…」
パチュリーが説教をしようとして、
「「「「 え? 」」」」
全員が発した驚きの声。その原因は煙の向こうにあった。
「びっくりした~。」
そんな気の抜けた言葉を発するのは剣だ。彼は魔理沙のマスパを喰らって平然と、当たり前のようにその場に立っている。
「あんた、なんで無事なのよ?!」
霊夢の疑問はもっともなものだった。本気ではないにしろ、そこそこ熱の入っていた魔理沙のマスパを喰らえば、普通の人間なら、かなりの重症を負うはずだ。
「なんでって言われても…」
実は彼自身にもよくわかっていなかった。彼はその時のことを話す。
「いや、魔理沙のマスパへの反応が遅れて、あ、これ死ぬかも、って思ったら体の中から何かが沸き上がる感じがして、気づいたら無事だった。」
「おそらく、その沸き上がってきたものは能力ね、命の危機に無意識に発動したのかも。」
パチュリーが教えてくれる。
「とりあえず無事でよかったわ。魔理沙、あんまり熱くなったらだめよ。」
レミリアが無い胸を撫で下ろして魔理沙に言う。
「あなた、今何か失礼なこと考えなかった?」
「何も考えていません…」
怖い顔で聞いてくるレミリアになんとか取り繕う。
「剣、すまなかったんだぜ。」
「ん?」
そんな僕に魔理沙が謝ってくる。おそらくさっきのことを言っているのだろう。
「ああ、別に気にしなくていいよ。現に僕は無事なんだし。」
「本当にすまなかったんだぜ。」
なおも謝ってくる魔理沙に対し、僕は、
「じゃあ、今度人里を案内してよ。それでチャラってことでいいだろ?」
魔理沙に持ち掛ける。
「わかったぜ!そのくらい朝飯前なんだぜ!」
魔理沙が元気を取り戻したようだ。やっぱり魔理沙はこうでなくっちゃ。
「ねえパチェ、彼けっこう鈍感じゃない?」
「ええ、もうあれ、デートみたいなものよね。」
二人が何か話しているが、こちらには聞こえない。すると、
「そろそろ夕食の時間ね、霊夢達も食べていくでしょ?」
レミリアの提案に真っ先に反応したのは僕と霊夢だ。
「まじで!?」
「いいの!?」
「ええ。というか、剣の能力が見つかるまではここに泊める気だから。」
レミリアの思わぬ提案に、僕と霊夢は、有頂天だった。
「じゃあ、行きましょうか。」
僕は久しぶりの咲夜の料理に胸を膨らませていた。

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やはり咲夜の料理は絶品だった。こんなのがたべられるなら、能力が見つからないほうがいいと考えてしまう剣だった。
「お嬢様、入浴の準備が出来ました。」
咲夜がレミリアに告げる。
「そう、剣、お風呂は先に入る?」
レミリアに聞かれる。
「いや、後でいいよ。」
「そう。じゃ、皆、入りましょうか。」
レミリア達が席を立つ。
「剣、覗いたら殺すからね。」
霊夢が物騒なことを言ってくる。
「早く行ってこい。」
興味が無いという風に言ったものの、全員がスタイルはともかくとして、かなりの美少女なため、覗きたいという心も少なからずあった。

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今僕はレミリアにあてがわれた部屋にいる。レミリア達の入浴の後、僕も入浴を済ませ、しばらく談笑した後、解散となった。
「僕の能力かー…。」
僕はベッドに横たわりながら呟く。あの時、魔理沙のマスパを喰らって無傷でいられたとき、気のせいだろうか、マスパが自分を避けていったように感じられた。
「………また明日からも皆、協力してくれるって言うし、今日は早めに寝るか。」
そう言って僕はベッドに入る。さすが紅魔館、ベッドがふかふかだ。それも相まってか、今日は皆のスペカを避け続けて疲労が溜まっていたのか剣はすぐに深い眠りにおちていった。

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