魔女の涙が流れる時

ぬべろん

第三話「察知」

~魔女が処刑される前に世界に放した力には、個々それぞれの能力と代償が組み合わされている。これは、魔女が能力の悪用阻止を考え、能力が巨大になるほど代償も大きくし、使いづらくするためにあった。例えば、「炎を一定時間出すことができる能力」を得る代償として「物を失くしやすくなる」、この能力の上位互換である「炎を無限に出すことができる」能力の代償として「食べ物を食べたら8時間寝てしまう」と、能力が強大になるにつれ代償も重くなっていく。~

「エインさん!もう日が昇ってますよ、起きてください!!」
ドーリンはエインの身体をゆすり起きるよう促すが、エインは「ん~、あと一時間…」と言って起きる様子を見せない。正直言って人を起こすことが一番大変なんだろう、とドーリンはこの時間を迎えると考える。なんせ「あと一時間」と言われ、いざ一時間後に起こそうとすると「なんで必要以上に起してくれなかったのかしら」と叱られるのだ。頼まれた時間に起こしても、遅く起こしても「叱られる」ことからは逃れられないのだ…

「エインさん、朝食には妖精の雫を使用したコンポタージュと、タパイモを使用した揚げたてのコロッケを用意してるんです!冷めておいしくなくなる前に早く起きてくださいよ!!」

「…その話を聞いたらおなかが空いてきてしまったわ。ドーリン、ご飯の用意をして頂戴」

うとうとしながら布団からでてきたエインを見て、「やっと起きたか」とドーリンは一安心し、朝食の準備に取り掛かった。

寝起きのせいか「あー、たんぽぽをカエルにしなきゃあ…」と意味の分からないことを放ち続けるエインを起こすために、ふんわりとしたコーンの優しい香りが漂うコーンポタージュをドーリンはエインの前に置いた。エインの目がパチリと開き、スプーンで一口分すくいコンポタージュを味わった。

「ん~、うまいわ。この優しい味だけど味わい深いコンポタージュ…朝食にピッタリね。」

「初めて「妖精の雫」を使いましたけど、口に合ってよかったです。「妖精の雫」ってよく病院で使われているので治療薬の印象が強かったですけど、まさか料理の調味料になるとは」

「たまたま使いたかった調味料が切れたから、試しに「妖精の雫」を使ってみたらビンゴした形ね。コンポタージュに使用するとこんなにも香りと味がよくなるのね。」

タパイモで作ったコロッケも食べ、ドーリンがお皿を下げていた時エインから「薬草を何種類か買ってきてほしい」と頼まれた。ドーリンは「わかりました」と返事し、羽を一つ持って街へと繰り出した。

エインの家には特殊な結界が張られており、普通だと家を確認することができないのである。そこで、エインはドーリンがどこにいても家が確認できる羽を作ってあげたのだ。ドーリンにあげたら「僕なんかに…ありがとうございます!!」とすごく喜んでいたが、エインが家から出るのを最小限にするため、という本音が隠されていることを当の本人はまだ知らない。

「ん~、頼まれた薬草は…うん!全部買ったはずだから家に帰ろうかな。」

ドーリンは落ちる夕日を眺めながら独り言を呟いた。やはりこの山にある展望台からの夕日の景色は素晴らしいものだ。羽の反応を大きくなってきたので家はすぐそこにある、はず。あぁ、こんな日常がずっと続けばいいのに、とドーリンは思わずにはいられなかった。なぜなら…

「なぜなら魔術兵から襲われない生活だから、か?」

低い声の主に真実を突かれたドーリンは、ビクッと肩を震わせ後ろを振り返った。だが暗闇になりつつある木々の中から、その声の主を見つけることはできなかった。まさか、魔術兵が?

「大変驚いているが、私は魔術兵ではないし君の敵でもないよ。でも、まさか男である君が魔女の力を宿しているとは。」

「…あなたは一体誰なんですか?なんで僕が魔女の力を宿しているって…」

そう、エインさんにさえも魔女の力を宿していることを話していないのだ。もしかしたら魔女の力を確認できる能力者が僕の跡をついてきた?第一としてエインさんの家の近くでもある。危機になりうることは何としてでも阻止しなくては…

「なかなかの考察力だな。だが、君の考察はお門違いだ。私は『人間の姿を維持』できる時間が限られているのでな、伝えたいことを簡単に伝えたいと思う。ここ数日の間でこの国の魔術兵が国王の宮殿に集結される。その時に一組の魔術兵がこの山道を通ることになっているから、警戒はしておいてくれ。」
一体どこからの情報源なのかわからないが、もしこの話が本当ならかなり危険な状況なのは確かである。もし家の存在がばれたら戦闘するのはほぼ確実となり、最悪な場合死んでしまう。

「あなたは、なんでこの情報を僕にくれたんですか?僕に伝えるよりも違う人に伝えたほうがいいんじ」

「君の能力のほうが適正だと感じたからね。それに私自身の存在はあまりさらしたくはないんだ。」

…僕の能力さえも把握しているのか。一体この者が何者かはわからないけど、敵ではなく「相手の情報を把握する」または「過去or未来を見ることができる」のどちらかの能力者である、とドーリンは考えた。もし後者だとしたら出会ってしまった自分たちを見たから警告に来た、となる。だが見知らぬ人がわざわざ伝えに来るだろか。自分が考えすぎなのだろうか?

「まぁそう考えこまなくてもいいさ。君の主を守れるよう最善を尽くしてくれ。じゃあな」

そういうと低い声はぱたりと切れてしまった。「待ってくれ!」と放ったが、帰ってきた声はやまびこで高くなった自分の声だけであった。

家に帰宅し、ドーリンはエインに頼まれた薬草を渡した。エインは実験室の扉を開け「ありがとう、私これから実験を行うから私の分の夕食は作らなくていいわよ。」と告げた。今さっきあったことを話すべきかドーリンは悩んだが、エインに伝えることはできなかった。なぜなら、自分の秘密をばらしてしまうことになるのではないか、と感じたからであった。

「ドーリン?話は分かったかしら?」
声を掛けられ、ドーリンは我に戻った。
「あ、はい。夕食はいらないんですね、わかりました。」

エインが実験室の中に入り込み扉が閉まった後、「もうあの日と同じことを繰り返してたまるか」とドーリンは強く心の中で想った。

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