いつかこの告白があなたに届きますように。

赤宮 明日花

10.後悔

「…っ、映画館ならいいよ…?」
あれから家へ帰ってきてから自分の言った言葉を思い出し、今更後悔していた。
一葉、1回も覚えてる限り他人と出掛けたことないのにそれも男子と二人っきりで映画館とか何考えていたの!
ってか、出掛けるってどうすればいいの?!
…服!
服、どうしよう…。
普段、病院以外では滅多に出掛けない私は2、3着しか服を持っていなかった。
あとは、何必要…?
あっ!
スマホを手に取るとネットのアプリを開くと『男子 二人 映画館』と検索をしてみた。
検索結果を見ると一番上に出てきたのは『初デートはやっぱり映画館で決まり!』と言う見出しだった。
…でっ、でーと???
デートって、え、冷静に考えると男子と二人で出掛けるわけで傍から見たら…。
これ以上考えたら頭の中がショートしてしまうと感じた私は一度考えるのをやめる為に部屋の隅にある100冊ほどの様々な本が閉まっている本棚から1冊のぼろぼろの本を取り出した。
手に取った文庫本の背表紙にはには3巻と書かれていた。
この本は他の本とは違ってぼろぼろだった。
この1冊だけが何故か所々傷んでいる所をセロハンテープで補修してある。
こんなに大切な本がぼろぼろなってしまったなら理由くらい覚えているはずだが、理由を思い出す事は無かった。
この小説は有名な作家さんが書いた、弱小だった野球チームを天才が故に孤独になってしまった主人公がそのチームに入り、甲子園を目指すという小説で全6巻のはずだった。
なのに本棚にあるのはこのぼろぼろになってしまっている3巻しかなかった。
何度かページまでぼろぼろになってしまっている為、売る事も出来ないと推察した私は捨てようとした事があった。
だが、何故かこの本を捨てる事は出来なかった。
この1冊の本に何か大切な思い出が眠ってしまっている気がしたからだった。
1巻や2巻は映画になった事もあり、それを見たことがある私は内容を覚えていた為、3巻から読んでも支障はなかった。
本を読み終わる頃には外が真っ暗になっていた。
時計を見ると既に0時をまわっている。
せいぜい22時頃だと思っていた私は急いで本をもとの本棚に戻すと寝る支度を済ませた。
ベッドに入る前、スマホの電源を入れると1件メールの通知がきていた。
通知をタップし、メールを開くと土屋 大樹からだった。
届いたメールには、いつ頃空いているかという内容が書かれていた。
いつ頃と言われても病院以外の用事はほぼないと言って良かった。
高校も通信の為、普段は自宅学習で月に一度病院のある駅から徒歩5分程にあるビルに入っている学校に通うだけだったからだ。
「これは、逆に向こうがいつ空いているか聞いたほうがいいのかな…?」
確かこの前野球部に入っていると言っていたし、制服を着ていてる所を見る限り、普通の高校に通っているのなら予定が沢山ありそうと思った私は、
『そっちはいつ頃空いているの?』
というメールを送信した。
そっちというのを使ったのは素っ気なかったなぁと思ったが、何て呼べば良いのか分からなかった私はそっちという言葉を使うことにしたのだった。
送った後にこんな遅くにメールを送ってしまったという事に気づくと、頭の中は後悔で一杯になってしまった。
完全に、本を読んでいて体内時間が狂ってしまったと後悔しつつ私は眠りについたのだった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品