いつかこの告白があなたに届きますように。

赤宮 明日花

8.卒業アルバムと昔話

あの夢を見てからもう6時間ほどが経っていた。
それなのにまだ鼓動が静まることはなかった。
「はぁー。」
あの人達は誰だったのだろう…。
それに、だいきって人も分からないままは駄目な気がした。
だから私は勇気を出し、閉まっていた一度も開けたことのない中学時代の卒業アルバムを取り出した。
開いてみると1ページ目には校歌が校舎と共に書かれていた。
次のページへめくると職員の紹介。
そしてその次へと進めると生徒のページとなっていた。
私は2組に載っていた。
肩ほどまで伸ばしていた短い髪を後ろで束ねている写真だった。
生徒は皆夏服の女子は紺色のつりスカートにブラウス。
男子はYシャツに黒の長ズボンを着用していた。
クラスは全部で5クラス。
5クラス目のページまで見て進めるとそこには探していた人物が写っていた。
土屋 大樹つちや だいき
名前を見ても思い出すことはなかった。
だが、アルバムを開いてから吐き気と震えが止まらなかった。
ページをどんどんめくっていくと1年生と2年生の頃の写真が載っているページがあった。
「…やっぱり何も分からない。」
残りの半分ほどのページをめくっていくとそこは生徒達の文集となっていた。

アルバムを見ていると記憶を失った直後、中学3年生の頃の事を思い出す。
その時の私は学校のカウンセラーにその事を相談した。
カウンセラーをしていたのは30代ほどの若い女性だった。
そしてそのカウンセラーに言われたのは、宮野さんは記憶なんて失っていない。
宮野さんの勘違いだ。
ということだけだった。
その言葉を信じる事の出来なかった私は今通っている病院へと一人で行った。
そして今に繋がる。
その時のカウンセラーはその後、カウンセリングの予約を取る仕組みだったが私の予約は取ることはなく、カウンセラーは私はもう大丈夫と言う言葉を最後に会うことはなかった。
私は何故、カウンセリングを受けていたのか。
記憶を失ってしまったのは何故なのかを知ることはなく私は中学を卒業した。

普通なら両親に相談したりするのだと思う。
だが、父とは普段から顔を合わすことはないし、母は離婚してすぐに再婚した為新しい家庭があった。
信頼出来るのは私の中では主治医の鴨枝かもえだ先生と小太刀だけだった。
あの後、記憶を失って戸惑っていた私に手を差し伸べてくれた鴨枝先生は恩人だった。
先生は60代ほどの女の人だった。
あの時に鴨枝先生に出会ってなければ私は今どうなっていたか想像もつかなかった。

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