異世界でスペックをフル活用してみます!とりあえずお医者さん始めました!

ぴよ凛子

目覚め

「ん…………ここは……」
「お、起きたみたいだぞ」
「あら、ほんと。具合の方はどう?ひどい刺傷だったからそんなすぐには治らないけれど…」
私が近づいていくとベッドの上の彼は警戒したように素早く起き上がろうとした瞬間…
「うっ……」
苦しげにうめいた。
「起き上がっちゃだめよ、また傷が開くでしょう。ほら、安静にして」
再びベッドに寝かせると彼は不服そうに私を見てくる。
「おまえ…傷を治してくれたのは感謝するが、私をよくもこんな俗の体にしてくれたな…ましてや人間などと…今すぐ戻さんか」
自分の姿が気に入らないのか元ドラゴンの彼はぶつぶつと小言を吐く。
「あなたをそんな姿にしたのは私じゃないわよ。トランクのこの空間に入ったらなぜかその姿になっちゃったのよ。だから戻せと言われても戻し方はわからないわ」
私がそう口にすると彼は目を見開いて
「なんだと!?戻し方が分からぬだと!?どういうことぐっ………」
と怒り始めたがそれが傷をまたも開かせる原因となる。
「ほらー、そんなに怒るからまた傷がひらいちゃうじゃない。大人しく寝ときなさい。日頃人間に襲われてたのなら今はその格好でいいじゃない、バレなくて。元に戻るのは治ってから考えましょ」
「だがしかし…」
「はい、寝た寝たー。いっぱい眠るとその分傷の治りも早くなるものよ。それに今は麻酔が効いてるからいいけど、切れたら痛くて寝る所じゃないわ、本当に今のうちに寝ときなさい」
「なっ……し、仕方ない。今は寝てやる!」
そう言って彼は布団を深く被った。

「さすがお医者さん、患者の扱いが上手だな」
「慣れよ、慣れ。無理やりこうでもしないと1日どれだけの患者を見なくちゃいけないと思ってるの、回らないわ」
「そうかそうかー、じゃあこれからは僕が君の負担を少しでも軽減させれるよう君に尽くそう」
「そうね、期待してるわ」
そう言って私たちは笑いあった。

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