噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
110 安土最終決戦 開幕
 遠くにそびえ立つ安土城の堂々たる様を斎藤壱月は戦場と化した近江八幡の街にて仰ぎ見ていた。
 火蓋が切って落とされたのはつい先程。日本尖兵団と世界調停機関の連合軍が安土城に向かって進軍を開始し、やがて織田の警戒網にかかって戦闘が始まった。
 神に選ばれた者達と到達者、異世界人が繰り広げる戦闘のなんと苛烈なことか。たちまち街は焦土と化して、あちこちに戦火が立ち上り、あっという間に燃え広がる始末だ。
 戦後の復興にはさぞかし手がかかることであろう。
 だが、そんなことは当事者達には関係ないと言わんばかりに、今も前方で爆発が起こった。
 そんな無慈悲な戦場に一人佇む死神は何を物思うのか。
「これが……戦争だと……?」
 互いが互いに命を懸けて、必死に自分達の言い分を力づくで押し通す。そこに迷いはなく、また慈悲もない。
 それが血で血を洗う戦争というものなのだとまざまざと見せつけられただろう。
 若き死神はただ呆然として呟く…
「こんな……こんな事が起きてるってのに俺は、昨日まで平然と…」
 初めて肉眼で見る戦争というものに死神は動揺せざるを得ない。今の今まで戦争とはなんたるものかを人から聞いてはいたものの、自らの目で見た現実は大きく違った。
 百聞は一見にしかず、とはまさにこの事だ。
 つい先日までは戦い方がどうとか、ゲリラ戦がどうとか言っていた口が開いたまま塞がらない。
 言葉通り思い知ったのである。
「この戦場で、俺が出来ることってあるのか…?」
 だが一度大口を叩いたからには行動しなければならない。
 斎藤壱月という男にも意地はあるのだから。
「死者の魂を黄泉に送り届けることです。それが我々、死神が出来る戦争時の唯一の仕事」
 傍から優しい女性の声。振り返らずともわかる。この聞き慣れた声の主は暁崎巴音。壱月のパートナーである。
「…巴音、後方の支援は終わったのか?」
「はい。やっと壱月さんに追いつけました」
 軽く現状報告をし、本題に入る。
「俺たち死神は、死者を送り届けることしか出来ないのか?」
「ええ。私達はその為に存在していますから」
 しかしそれは、壱月がしたかったことではなかった。
 夢見がちな若者が時折、自身を過大評価するのはよくあることだ。そしてそれが今回、壱月に起きただけのこと。
「せっかくこの死雨があるんだから、もう少し色んな事が出来るんじゃないか?」
 腰に下げている刀を指して巴音を見やるが彼女は決して首を縦には振らない。
「ダメですよ壱月さん。私達は死神本部の命がないと戦争には介入出来ませんから」
「でもほら、今は調停機関所属だし、ね?」
「ダメったらダメです」
「あとで《最強》がなんとかしてくれるって」
 つい先程、戦争の悲惨さを思い知ったというのにこの調子である。きっとこのお調子者に戦争の愚かさを気付かせようとするなら刻み込むしかない。
 ふとそんな思考が脳裏をよぎると、致し方ないといった感じで首を上下に動かす巴音。おそらくそこには彼女自身の壱月に対する甘さも多量に含まれていた事だろう。
「まったく仕方ないですね。少しだけ加勢するくらいなら大丈夫だと思いますけど、あまり無茶は…」
「大丈夫、大丈夫。さて、そうと決まれば早速、前線に行かないとな!」
 そう言って足取り軽く駆けていく壱月。
「ま、待ってください!ホントに無茶したらダメですからね!」
 慌てて追いかけて行く巴音は、心配気味なようでどこか不安そうな顔をしていた。
 火蓋が切って落とされたのはつい先程。日本尖兵団と世界調停機関の連合軍が安土城に向かって進軍を開始し、やがて織田の警戒網にかかって戦闘が始まった。
 神に選ばれた者達と到達者、異世界人が繰り広げる戦闘のなんと苛烈なことか。たちまち街は焦土と化して、あちこちに戦火が立ち上り、あっという間に燃え広がる始末だ。
 戦後の復興にはさぞかし手がかかることであろう。
 だが、そんなことは当事者達には関係ないと言わんばかりに、今も前方で爆発が起こった。
 そんな無慈悲な戦場に一人佇む死神は何を物思うのか。
「これが……戦争だと……?」
 互いが互いに命を懸けて、必死に自分達の言い分を力づくで押し通す。そこに迷いはなく、また慈悲もない。
 それが血で血を洗う戦争というものなのだとまざまざと見せつけられただろう。
 若き死神はただ呆然として呟く…
「こんな……こんな事が起きてるってのに俺は、昨日まで平然と…」
 初めて肉眼で見る戦争というものに死神は動揺せざるを得ない。今の今まで戦争とはなんたるものかを人から聞いてはいたものの、自らの目で見た現実は大きく違った。
 百聞は一見にしかず、とはまさにこの事だ。
 つい先日までは戦い方がどうとか、ゲリラ戦がどうとか言っていた口が開いたまま塞がらない。
 言葉通り思い知ったのである。
「この戦場で、俺が出来ることってあるのか…?」
 だが一度大口を叩いたからには行動しなければならない。
 斎藤壱月という男にも意地はあるのだから。
「死者の魂を黄泉に送り届けることです。それが我々、死神が出来る戦争時の唯一の仕事」
 傍から優しい女性の声。振り返らずともわかる。この聞き慣れた声の主は暁崎巴音。壱月のパートナーである。
「…巴音、後方の支援は終わったのか?」
「はい。やっと壱月さんに追いつけました」
 軽く現状報告をし、本題に入る。
「俺たち死神は、死者を送り届けることしか出来ないのか?」
「ええ。私達はその為に存在していますから」
 しかしそれは、壱月がしたかったことではなかった。
 夢見がちな若者が時折、自身を過大評価するのはよくあることだ。そしてそれが今回、壱月に起きただけのこと。
「せっかくこの死雨があるんだから、もう少し色んな事が出来るんじゃないか?」
 腰に下げている刀を指して巴音を見やるが彼女は決して首を縦には振らない。
「ダメですよ壱月さん。私達は死神本部の命がないと戦争には介入出来ませんから」
「でもほら、今は調停機関所属だし、ね?」
「ダメったらダメです」
「あとで《最強》がなんとかしてくれるって」
 つい先程、戦争の悲惨さを思い知ったというのにこの調子である。きっとこのお調子者に戦争の愚かさを気付かせようとするなら刻み込むしかない。
 ふとそんな思考が脳裏をよぎると、致し方ないといった感じで首を上下に動かす巴音。おそらくそこには彼女自身の壱月に対する甘さも多量に含まれていた事だろう。
「まったく仕方ないですね。少しだけ加勢するくらいなら大丈夫だと思いますけど、あまり無茶は…」
「大丈夫、大丈夫。さて、そうと決まれば早速、前線に行かないとな!」
 そう言って足取り軽く駆けていく壱月。
「ま、待ってください!ホントに無茶したらダメですからね!」
 慌てて追いかけて行く巴音は、心配気味なようでどこか不安そうな顔をしていた。
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