噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
67 異世界覇者・織田信長 その1
織田信長と聞いて何が思い浮かぶだろうか?
単純に有名どころを挙げていけば、桶狭間の戦いや姉川の戦い、長篠の戦いなどの戦関係は言うまでもない、また信長が自害した本能寺の変は日本人なら大抵誰でも知っていることだろう。
だが、もし織田信長の天下取りがまだ終わっていなかったとしたら?
この物語はそんな「if」が神秘の力によって実現してしまったお話である。
蒸し暑い夏が終わり、これからだんだん秋に向かって涼しく、また肌寒くなってきた城下町を2人組の男が並んで歩いていた。殺戮者と武器商人だ。
2人は、夏が終わっても活気溢れる市場の人々の間を縫うように歩き進みながら、ふと立ち止まり、ある一点に集中して少し上を見る。
視界に入るのは、山と城だけだ。
今暦上は秋だが、まだ紅葉には早すぎるらしく、緑色の山々が夏とはまた違った印象を与えている。そしてそんな山々の頂上に城は建てられていた。
2人は城を一通り見て最後に一番上の絢爛豪華な天守に視線を向ける。
その素晴らしい天守や城からは想像するのが難しいかもしれないが、この城は10年前に建てられたばかりだ。かつて幻の天守閣と評され、以前までは跡地しかなかったこの城の名は安土城。
現在、日本一の湖である琵琶湖をシンボルとし、周囲の山々、比叡山や伊吹山を有し、また数々の歴史的遺産を現代まで遺しているこの滋賀県は、古くから近江と呼ばれ交通の要所として度々戦乱の舞台にもなっている。
そしてこの安土城が建てられたのは、東近江と呼ばれる地域で琵琶湖に近く、当時は水運が栄えていたとされる。
もちろん現代では、近代化が進み水運などは行われていないが、安土城が再度築かれたことで知名度が増し、それにより近畿周辺からの移住者が増加したので現在では滋賀県一人口密度の高い地域となっている。
安土城を見上げつつ、この地域のことをあらかた頭に入れた殺戮者は、また歩き始める。そしてそれに気付いた武器商人が、駆け足で先に行った殺戮者を追いかける。
「おい! 行くなら行くってちゃんと言えよ」
「ああ? あ…ああ、すまん忘れとった…」
武器商人は素で忘れられていたことに若干イラつきつつも、いつものことだと自分に言い聞かせ、溜め息とともに水に流す。
「で、これからどうすんだ?」
「決まってるだろ? 城主に会うんだよ」
どうやら殺戮者は安土城城主・織田信長に会う気満々のようだ。もちろん真正面から入っても見張りに門前払いされるだけなので、忍び込むことになる。
そしてそれを薄々察していたであろう武器商人は、もう既にげっそりしていた。まあ、それも仕方のないことで彼は桜島の隠れ家が地面に埋もれた為、今現在行く宛がないのだ。さらに、あの一件で武器商人も死神に狙われる立場となったので、ともに殺戮者について行くことにしたのだ。
それが幸か不幸か、何度か襲撃にあっても危機に陥ることはないのだが、殺戮者の傍若無人さに振り回され続け心身ともに疲れ果てているのが現状である。
「それで侵入経路だけどな、地下水路ルートか天守ルート、どっちがいい?」
「えっ?」
いつもなら勝手に決めて勝手に突き進む殺戮者が、珍しくこちらに意見を求めてくるので、聞き間違いかと思い聞き返す武器商人。
「だから、地下水路か天守どっちから入りたいか聞いてんだよ」
「……!」
ついに、己の傍若無人さを理解し直す気になってくれたのかと思い、少し感動している武器商人。
「なんで、ニヤけたり目をうるうるさせてんだ? 気持ち悪いぞ」
「なっ!?」
武器商人さん、言葉には出していなかったが顔にはハッキリ出てたらしい。おかげで殺戮者の言葉の刃が突き刺さる。
目元をゴシゴシこすって、頬を叩いて表情を戻し、先程の問いに何もなかったかのように答える。
「そうだな…地下水路を通っていこう!」
「よし、わかった! 天守から行くぞ!」
「!?」
武器商人さん、ちょっと……というか、かなり首を傾げる。まさかの出来事だ、こんな事誰が予想できるだろうか。
武器商人の嘆きが、自身の心の中で木霊する。
(会話が成立してねぇぇぇぇぇぇぇぇ!)
果たしてあの質問は何だったのか…その真意はもうわからない。なぜなら、すでに殺戮者は天守へ向けて駆けだしていたからだ。それもかなりのスピードで。
「待てこら! この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
嘆きをやがて絶叫へと変えながら、武器商人は後を追いかけていく。
いつもお読みいただきありがとうございます!
投稿遅くていつもすみません。
さて、今回は久しぶりに殺戮者達が出てきました。この信長編で書くつもりはないですが、いずれ壱月達がパルミラに行っている間の話も書きたいと思っております。
信長編は長丁場になると思いますが、気長に付き合って下されば幸いです。
ご感想、ご質問等ありましたら、お気軽にコメントしてください。出来るだけ返したいと思っております。
これからもよろしくお願い致します。
単純に有名どころを挙げていけば、桶狭間の戦いや姉川の戦い、長篠の戦いなどの戦関係は言うまでもない、また信長が自害した本能寺の変は日本人なら大抵誰でも知っていることだろう。
だが、もし織田信長の天下取りがまだ終わっていなかったとしたら?
この物語はそんな「if」が神秘の力によって実現してしまったお話である。
蒸し暑い夏が終わり、これからだんだん秋に向かって涼しく、また肌寒くなってきた城下町を2人組の男が並んで歩いていた。殺戮者と武器商人だ。
2人は、夏が終わっても活気溢れる市場の人々の間を縫うように歩き進みながら、ふと立ち止まり、ある一点に集中して少し上を見る。
視界に入るのは、山と城だけだ。
今暦上は秋だが、まだ紅葉には早すぎるらしく、緑色の山々が夏とはまた違った印象を与えている。そしてそんな山々の頂上に城は建てられていた。
2人は城を一通り見て最後に一番上の絢爛豪華な天守に視線を向ける。
その素晴らしい天守や城からは想像するのが難しいかもしれないが、この城は10年前に建てられたばかりだ。かつて幻の天守閣と評され、以前までは跡地しかなかったこの城の名は安土城。
現在、日本一の湖である琵琶湖をシンボルとし、周囲の山々、比叡山や伊吹山を有し、また数々の歴史的遺産を現代まで遺しているこの滋賀県は、古くから近江と呼ばれ交通の要所として度々戦乱の舞台にもなっている。
そしてこの安土城が建てられたのは、東近江と呼ばれる地域で琵琶湖に近く、当時は水運が栄えていたとされる。
もちろん現代では、近代化が進み水運などは行われていないが、安土城が再度築かれたことで知名度が増し、それにより近畿周辺からの移住者が増加したので現在では滋賀県一人口密度の高い地域となっている。
安土城を見上げつつ、この地域のことをあらかた頭に入れた殺戮者は、また歩き始める。そしてそれに気付いた武器商人が、駆け足で先に行った殺戮者を追いかける。
「おい! 行くなら行くってちゃんと言えよ」
「ああ? あ…ああ、すまん忘れとった…」
武器商人は素で忘れられていたことに若干イラつきつつも、いつものことだと自分に言い聞かせ、溜め息とともに水に流す。
「で、これからどうすんだ?」
「決まってるだろ? 城主に会うんだよ」
どうやら殺戮者は安土城城主・織田信長に会う気満々のようだ。もちろん真正面から入っても見張りに門前払いされるだけなので、忍び込むことになる。
そしてそれを薄々察していたであろう武器商人は、もう既にげっそりしていた。まあ、それも仕方のないことで彼は桜島の隠れ家が地面に埋もれた為、今現在行く宛がないのだ。さらに、あの一件で武器商人も死神に狙われる立場となったので、ともに殺戮者について行くことにしたのだ。
それが幸か不幸か、何度か襲撃にあっても危機に陥ることはないのだが、殺戮者の傍若無人さに振り回され続け心身ともに疲れ果てているのが現状である。
「それで侵入経路だけどな、地下水路ルートか天守ルート、どっちがいい?」
「えっ?」
いつもなら勝手に決めて勝手に突き進む殺戮者が、珍しくこちらに意見を求めてくるので、聞き間違いかと思い聞き返す武器商人。
「だから、地下水路か天守どっちから入りたいか聞いてんだよ」
「……!」
ついに、己の傍若無人さを理解し直す気になってくれたのかと思い、少し感動している武器商人。
「なんで、ニヤけたり目をうるうるさせてんだ? 気持ち悪いぞ」
「なっ!?」
武器商人さん、言葉には出していなかったが顔にはハッキリ出てたらしい。おかげで殺戮者の言葉の刃が突き刺さる。
目元をゴシゴシこすって、頬を叩いて表情を戻し、先程の問いに何もなかったかのように答える。
「そうだな…地下水路を通っていこう!」
「よし、わかった! 天守から行くぞ!」
「!?」
武器商人さん、ちょっと……というか、かなり首を傾げる。まさかの出来事だ、こんな事誰が予想できるだろうか。
武器商人の嘆きが、自身の心の中で木霊する。
(会話が成立してねぇぇぇぇぇぇぇぇ!)
果たしてあの質問は何だったのか…その真意はもうわからない。なぜなら、すでに殺戮者は天守へ向けて駆けだしていたからだ。それもかなりのスピードで。
「待てこら! この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
嘆きをやがて絶叫へと変えながら、武器商人は後を追いかけていく。
いつもお読みいただきありがとうございます!
投稿遅くていつもすみません。
さて、今回は久しぶりに殺戮者達が出てきました。この信長編で書くつもりはないですが、いずれ壱月達がパルミラに行っている間の話も書きたいと思っております。
信長編は長丁場になると思いますが、気長に付き合って下されば幸いです。
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