噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

55 《最目》の鑑識眼 後編

 二人が権限で遊んだ後、巴音が起きてきたので《最目》は本題に移ることにした。
「さて、僕に関する質問はもういいだろう。
 これから、君達がなんのためここに派遣されたのか、その理由を説明するはずだったんだけれど…」
「ん?ここの視察とテロ組織の壊滅じゃないのか?」
真面目な顔で話し出そうとする《最目》に対し、壱月は数時間前《最強》に言われた事を思い出し、疑問を投げかける。《最目》は困り顔で笑いいつつも答える。
「それはその通りなんだけどね…
 まず君達の一つ目の任務である、パルミラの視察は僕と接触したことによって成功と判断していいだろう」
「え?いいんですか?」
さらっと流された一つ目の任務。それに思わず、聞き返したのは巴音だ。
「まあこれはお使い程度の任務だからね。
 僕が書いた、パルミラのレポートを持って帰って、《最強》に提出してくれればそれでいい筈だよ」
それを聞き、納得する巴音。そして《最目》はさらに進めていく。
「で、二つ目の任務のテロ組織の壊滅は…なんと言いますか…その…」
が、しかし、いきなりしどろもどろになる《最目》。何から話したものか、と頭を抱えて悩み込んでいる。やがて結論がでたのか、《最目》は顔を上げ、二人を見据える。
「…結果から言うと…君達が来る前に壊滅してました…」
「「へ?」」
目が点になっている二人。対する《最目》は引きつり乾いた笑いを浮かべている。

 《最目》の話を最初から聞くとこうなる。
壱月達がパルミラに来る1時間前に、突如テロ組織が何者かに壊滅させられ、組織の構成員のほぼ全てが惨殺されたのだ。《最目》はその一部始終を制限である『千里眼』で観察しており、直ちに確認しに行こうとしたが、壱月達が視界に映ったことで入れ違いを避けるため、ここで待っていたのである。だがその二人も結局ここで1時間ほど眠ってしまったので、対処することが出来なかったのだ。そのくせ、イタズラしたり、制限で遊んだりしているので、もはや余裕なのかピンチなのかよくわからない状況だったりするが…。

 話し終えて、《最目》は席を立つ。
「これからその現場に行こうと思ってるんだけど…着いてきてくれるかな?」
「もちろんですよ」
「はい!そのために来たんですから!」
明るく元気のある声で返事をし、二人も席を立ち準備をし始める。
「じゃあ、3分後に出発だ!」
「「了解!」」

 準備中、壱月は自身の推察を巴音に話す。
「なあ巴音。こんな時代にテロ組織をいとも簡単に壊滅させられる奴を俺は1人しか知らないんだが…」
手を動かしながらも、巴音は答える。
「殺戮者、ですね?」
「ああ…」
壱月の考えにはもちろん根拠がある。というのは、殺戮者は桜島の大殺戮事件以降、一度も表舞台に姿を現していないことだ。それをふまえると確かに海外に逃亡したという考えも持てるだろう。
 だが、こういう考えもあり得ないだろうか。
「ですが壱月。世界は広いですよ?
 殺戮者が全てではないはずです。その裏付けとして、世界調停機関があるのですから」
「…そうだな。確かに世界はまだ俺の知らないことでいっぱいだ。
 とりあえず、今は殺戮者のことは頭の隅に置いておくか…」
巴音の考えで思い直し、壱月は晴れた気分で、準備を終わらせ《最目》の下へ向かう。巴音もその後ろを着いていく形だ。二人は、黄昏の西日に目を細めつつも《最目》の待っている、神殿の玄関へと歩を進めるのだった。


いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
今回は少し短いです、すみません。
きりの良いところで、《最目》のプロフィールを書く予定です。
これからもよろしくお願い致します。

コメント

  • 鬼崎

    ↓コメントありがとうございます。励みになります!

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  • ノベルバユーザー206733

    おめでとうございます! 頑張って下さい(≧∀≦)

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