第5話：違和感

ぼ、僕は・・・いったい・・・
・・な、何かが・・・・変だ・・・・

と、とりあえずこの状況を何とか誤魔化さなくてはいけない。

「ご、ごめんなさい・・・目が覚めて気が動転して・・ぼく、ぼく・・・・」

「・・れ、怜司君、無理もないよ。さあ、落ち着いて横になって。」
声を張り上げたアホ担当医だったが、我にかえったのか僕をなだめる。


「は、はい・・ほんとにごめんなさい・・・」
そして僕のその場しのぎの下手な演技に騙される。

しかし、何故だ・・・気付くと無意識に花瓶を持ち殴打していた。
そして、そこに全くの罪悪感や後悔は無く、むしろ・・・今とても清々しい気持ちだ。

今までに持った事の無いこの感情に快感を感じる面がある一方で、こんな感情を抱く自分がとても怖いと言う客観的な面もあり、とても複雑な心境だった。


と、その時だ。
何者かが心に訴えかけてきた。

「おい、聞こえるか？神だ。聞こえたら返事をしろ。」

神？！やはりあれは現実だったのか？！


「おい、返事をしろ！」

「聞こえてる！い、いったい今の僕はなんなんだ？」

ついカッとなり返事をしてしまったが、直ぐ我にかえり周りを見渡す。

一人で叫ぶ僕を、周りは見て見ぬ振りだ。
気が動転し幻聴でも聞こえてるヤバい奴とでも思っているのだろう。
ひとまず安心した。

「声に出すな！心の中で話せば私には聞こえる。わかったら心の中で"わかった"と返事をしろ。」
神が言う。

『・・・わかった・・』

「よし。まず、今回このような形で生き返ったお前に話しかける事は異例な事だ。
なぜだかわかるか？」

『・・いいや。』

「お前は記憶と感情を持ち現世に生き返った、言わば"人間"だ。
だが、今のお前からは"神間"の邪気も感じる。
こんな事は今まで無かった・・・初めての事だ。」

『・・どういう意味なんだ？・・・僕はどうなる？』


すると神は深妙な面持ちで重い口を開き始めた。
「・・も、もしかすると・・・今お前にとんでもない事が起こっているのかもしれぬ。」


『とんでもないこと・・・ど、どういう意味だよ？・・』

徐々に不安になっていく僕に、神が話を事を続ける。


え、えぁ・・・そ、そんな・・そんな事って・・・・


その話を聞いた時、僕は言葉を失った。