嫌われる意味を知らない者達~異世界で始まった人生の迷い家~

ゼロのカラカラ

四話 出発準備

 剣を振るう。あまり好きではないが、何故か馴染むその剣で空を斬り続ける。

 転生して一週間後、他の部員は剣術の特訓をしているらしく、紫苑も参加することにした。元々魔獣を殺すことの為に呼ばれているので、それくらいは承知した。

 にしても、時代劇の人重い刀振るうの大変そうだな、と感嘆していた昔とは違い、実際手にして普通に振るえているこの力は、能力のせいだといわれた。努力してもそう言われるだけであり、もはや訓練する必要はないような気がした紫苑。それでもめげずに頑張る。

 他の部員の能力、村井は【体を癒す】、岩永【結界を張る】、大森【剣を振るう】、遠藤【身体を固める】、牧原【雷を放つ】、西島【空を穿つ】、そして田上先生【地を揺らす】というチート集団ができた。意外と弱い奴も頭をこじらせて特化に取り組んでいるようである。大森先輩に至ってはここの神殿侍(神殿騎士的なやつ)を打ち負かすという成長ぷりだ。他の部員も同じくらい強くなっている。

 一方で、紫苑の能力ははっきりいってしていない。剣術は大森先輩を指し抜いて一、二を争うまでには成長した。しかし、法術や魔術などには霊力や魔力が多いだけでそれ以上でもそれ以下でもなかった。

 法術。精神力を力に変える力、霊力を操り、理を捻じ曲げる術。霊術、という方が正しいのだが、現在の荘都において霊術とは「降霊術」となっており、難しい話になるのでパス。

 魔力。自然に存在するエネルギーを力に変える、魔力を駆使して理を捻じ曲げる。法術が内側からの力に対して、魔力は外側の力、ということだ。

 どちらも一長一短だ。霊力は「詠唱」という予備動作が必要でないのだが、「精神力」を力に変える為に疲労が大きい。対して魔力は「詠唱」が必要な上に魔法陣も展開させなくてはいけないこともある。しかし強みは外側の力を使うので、疲労は大きくない。

 どちらの側も基礎は抑えたし、光をともす程度なら使えるのだが、うまくそれらを操れないので実質役立たずの足で纏だ。

 一方、遠藤先輩は凛々しい美少女ぷりを殺し、【身体を固める】という能力と空手を駆使している。さらに法術でさらに身体を強化しているらしく、接近戦においては勝ち目はない。

 他人が羨ましく嫉妬するが、嫉妬したところで現状は変わりない。剣術が長けているのでそれを磨くことに専念する。

「毎日大変ですね」

 そう言ってタオルを持ってきたのはヒナイ サクラだ。支援役さながら、よく気が利いてると思う。ちなみに他の部員は法術の勉強中。

「法術使えないからね。その分他のところで賄わないと」

 休憩。サクラの持ってきたタオルを手に取り汗を拭う。

「三日後のの魔獣狩りを気にしてるんですか?」

 三日後は魔獣を狩るらしい。簡単なやつだが、ど素人チート集団に何が出来るのか。

「気にしてないことはないけど…元の世界に帰るためだ。鍛錬と思って頑張るよ」

「そうですか…」

 今までずっと帰りたい帰りたいと愚痴をこぼしている。この世界のことはどうでもいいと判断されたらしく、いつもこの手の話ではこのような残念そうな顔をする。

 それでもそんな顔してませんよ、とでも言いたげな顔に変化する。どうしたものかと少し驚く。

「でも、そう言いながら他の人と埋め合わせをする姿、とてもかっこよかったですよ!」

 三日寝ていたこともあり、それまで能力を知らずに鍛錬した他の部員と剣術で差をつけられた。すぐにそれを埋めようと必死になって苦労した結果だ。当然かもしれないが、毎日筋肉痛なのはきつい。

 かっこよかったです、と真正面に言われたこと(裏で言われたことがあるとかもないが)のない紫苑は照れながらそっぽを向く。

「…」

 努力したのは事実だ。しかし、特段誰かに見せるためでもなく、あくまで「元の世界に帰るため」だ。そのための可能性は今は捨てきれない。能力を発現し、法術魔術をマスターするまで、常に努力するつもりである。

 しかし、不意にその努力が見られてしまうのは慣れていない。軽い秘密主義な彼に、その場での対応のマニュアルはないようだ。

「照れてますね?弄り甲斐があります!」

「サクラ…覚えとけよ……」

「あ、そう言えば私あなたを教育しに来たんでした」

 お前今何つった?と言いたかったが、恐らくは裏の意味があるものと推測し、押し黙る。

「今からシオンを磔にして…」

「さーて、この鍛え上げられた剣術はどこまで通用するんだろう」

「あ、うそうそ!!!大嘘だから!!!だから笑いながらこっちに来ないでー!!!」

 しょうがないので刀を下ろす。肩で呼吸をするサクラは「走馬灯見た」とボヤく。何に怯えてんだか。

 サクラは気を取り直し、こほんと一度咳払いをする。

「シオン、『スキル』を知ってますか?」

「知らん」

 即答する紫苑に、ソウデスヨネ、と遠い目をしたのは言うまでもない。

 スキルとは能力の劣化版らしく、身につければ誰だって使えるらしい。それにも赤、青、白、緑、黄、そして黒の四つの分類があり、それぞれのセンスに合わせて習得できる。例えば俺は「黒」だから黒系統のスキルを使えるし、大森先輩は純粋な赤系統なので赤系統のスキルを使える。もちろん俺が赤系統を手に入れることも出来るが、黒系統を使うのに比べかなり疲れるらしい。ただ、普通の人はスキルを五つ覚えるのが限度だとか。

「それでですね、あなたには初心者用の白系統《陽灯》を覚えてもらいたくて…」

 《陽灯》とは空間の一点を固定し、そこから光源を放つスキルらしい。スキルの習得確認には任意に開ける「技系統」という、RPGでよくあるステータス画面を目の前に表示出来るらしく、それで頑張れとのことでした。

「待て待て、方法くらい教えてよ」

「…お金」

「ねえよ」

「じゃあ」

「ゲスだなお前!?」

 金でしか動かない侍女。殿からお金を貰っていたので(頑張れのお小遣いして)それを渡して修行が始まる。

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