最弱最強の破壊者

うらら

襲撃Part1

5月になり、入学して1ヶ月が経った。だが、クラスでまともに話せる奴は舞しかおらず、おまけに舞に話しかけると周りの人(特に男子)からの視線が痛く、事実上、クラスで話しかけれる人がいないため、絶賛ぼっち中なのである。とても虚しく思っていると、クラスの女子が話しているのが耳に入ってきた。
「もうすぐ体育祭あるねー。」
「あー!そうだねー!私楽しみー!」
「私は運動苦手だから嫌かなぁー。」
「えー?楽しいって絶対っ!」
などと話していた。そういえば5月の中旬に体育祭があった気がした。クラス対抗の体育祭。種目は色々あった気がする。リレーや二人三脚、障害物競走や借り物競走など様々。正直言って中学校にはあまり行っておらず、ずっと神童さんの<ジョーカー>で鍛えたり、神童さんの部下であり、ジョーカーの副隊長である霧峰夢(きりみねゆめ)さんに勉強を教わっていたため、この手の行事は初めてなのだ。俺も興味があったため、どんなものか考えていると、聞き慣れた声が教室に響いた。
「ほら、座れー。HR始めるぞー。」
百合が教室に入りながらそういったため、みんな席に着いた。
「知ってるやつもいるだろうが、体育祭が5月15日に行われる。それに伴い、出る種目を決めてもらう。早い者勝ちだ。好きなものにエントリーしろ。」 
そう言いながら百合が黒板に種目を列挙していく。
そのあと、みんな各々に黒板に書かれた種目に名前を書いていく。俺はどうしようかと悩んでいると、舞が話しかけてきた。
「あんた、どうせ誰も誘ってくれなくて悩んでるんでしょ?しょうがないから私が二人三脚一緒にやってあげるっ!」
あまりのことに驚いてしまったが、確かにその誘いは有難い。事実俺はぼっちであり、舞の言葉は本当なのだ。少し悩んだがその誘いに乗ることにした。
「そう言ってもらえると助かるよ。でも、俺なんかと組んだら周りから変な目で見られるよ?」
俺が笑いながら言うと、舞が、
「構わないわ、あなたのこと理解してない人たちなんて実際にはどうでもいいもの。んで、やるのでいいのよね?」
と嬉しそうに言っていたので、周りにこれ以上冷たい視線で見られたくないとは言えなかった。そのため、俺は、
「んじゃ、よろしく、舞。」
と微笑みながら返すと、舞は黒板に向かっていき、チョークで舞の名前とペアの欄に俺の名前を書いた。その瞬間、周りの人(特に男子)から殺意のこもった視線を向けられた気がしたが、気にしないことにした。舞が書き終わった後、百合が、
「あー、あと、借り物競走もあるが、これは誰がエントリーする?」
と、思い出したように言ったので、クラスから立候補で男子が2人、女子が1人選ばれたが、枠がまだ1つ空いていた。その時、クラスの女子の1人が立って、
「最後の1人は舞さんがいいと思います。舞さん、運動神経抜群だし、学年でも人気高いので!」
と言ったので、舞は驚いていた。しかし、クラスはその意見に賛同していたため、舞は少し戸惑いながら、
「じゃあ、やります、、、」
と呟いた。それを聞いた百合が、
「よし!これで決まったな!んじゃ、体育祭の準備とかあるから、もし手伝ってもらいたいことがあったらよろしくな。」
と言い、教室を出て言った。体育祭まであと12日。1年生は準備を手伝わなくてもいいので、俺たちはそんなにすることないなぁ。そう思いながら隣の席の舞をふと見ると、少し嬉しそうに笑いながら、黒板の俺と舞の名前を見ていた。


ーヨーロッパの某所ー
「ライアン様、15日に日本の国立魔法学校ビクトリアにて体育祭が行われるとか。そこにはあの<破壊者バーサーカー>もおります。その日に襲えば、日本の魔法協会に痛手を負わせることもでき、<破壊者バーサーカー>も潰せて一石二鳥ではありませんか?」
多くの黒い仮面を被った男たちが大きな部屋に集まり、その中の1人が、ライアンと言う男に意見を述べていた。ライアンが、
「ほう?それは面白そうだなぁ。<破壊者バーサーカーにはこちらも被害を受けたことだし、体育祭を見学しに行ってみるのも悪くないよなぁ?」
と口の端を吊り上げながら喋ると、黒い仮面の男たちが一斉に喜びの声をあげる。それを見たライアンが、
「よし、これから日本に向かい、ビクトリアの豚共を体育祭に合わせて駆逐してやる。お前ら!俺らに喧嘩を売るとどうなるか教えてやるぞっ!」
と叫ぶと、より大きな歓声があかった。新九郎の知らないところで密かに事件は動き出していたのだった。


体育祭まであと1週間を切った頃。俺こと闘打新九郎は、グラウンドに来ていた。それも焔舞と共に。理由は簡単である。二人三脚の練習だ。舞はとても運動神経がよく、上手く出来るが、俺は力を使わず、なおかつ、舞のペースに合わせないといけないため、苦戦していた。舞が俺に話しかける。
「そんなんだと勝てないわよー?」
「いや、それは分かってるんだけど、こういうのには慣れてなくてさ。」
「え?二人三脚今回が初めてなの?」
「そうだけど?」
「中学とかは?」
「やってないよ?」
嘘はついていない。事実、学校にあまり言っていなかったため、やっていないのだから。
「へー、んじゃ、余計頑張らないとね!初めてだからこそ優勝したいじゃない!」
「そうだな、せっかく舞が誘ってくれたんだ。勝たなきゃな!」
そう俺が言うと、舞は微笑んだ。そして練習を再開した。舞のためにもしっかり練習して、勝ちたい。誘ってくれたのだから。そう思いながらやると、自然と呼吸があってきた。
「出来るじゃない!いいわ!この調子よ!」
舞は心底嬉しそうにしていた。その笑顔がとても可愛かった。それから放課後は毎日練習した。日に日にタイムは早くなっていき、心なしか、前よりももっと舞と打ち解けていく気がして、なんだか嬉しかった。こうして、あっという間に1週間が過ぎ、体育祭当日となった。

〜Part2へ続く〜

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