最弱最強の破壊者

うらら

過去

HRが終わり、家に帰ろうとしていた俺を、百合が呼び止めた。
既に、HRが終わって時間が経っていたため、クラスには俺以外いなかった。
「お前があの新九郎だったのだな。」
そう言われたため、俺は帰るのをやめ、百合と話すことにした。
「あのとは、入試最低点のことですか?」
多分、百合はそれとは別の事を言っているのだろうが、あえて俺は違う事を口にした。もしかしたら過去がバレてないかもしれないからだ。しかし、百合はやはり知っているようで、
「そのことではない、まあ、お前が他の奴にバレたくないのかもしれんが、私はお前に興味がある。なぁ、破壊者バーサーカー?」
「そのことでしたら話すことはありません、失礼します。」
と言い、俺は足早にこの場を離れようとした。
「まぁ、また今度な」
と声をかけられたが、俺は返事をせず、教室を出た。


家に着くと時刻は午後7時を回っていた。
「今日はいろんなことがあったなぁ」
少しため息気味の声を漏らし、部屋着に着替えた。
風呂から上がり、夕食の準備をして、食事をし、部屋に戻ると、ふと棚の上にある写真に目がいった。
ずっと前に撮った父と母と俺の家族写真。
その瞬間、昔の記憶が蘇ってくるような気がした。

ー3年前、俺は自分に魔法の力があることを知った。能力はランクEに当たる身体系魔法だったが、父と母は喜んでくれた。
父が俺に言った。
「いいか、新九郎、お前のその力は人を救うために使うんだ。」
俺は素直に頷くと、父はニカッと笑った。
それから3ヶ月後に事件は起こった。
父と母とともに、飛行機で旅行に行った。しかし、その1時間後、テロ組織の<混沌の夜明けカオ・オロール>がハイジャックを行った。不幸にも俺と父、母を含めた約150人が人質となった。犯人は金と車、それから捕まっている仲間の解放を求めた。しかし、警察は一向に要求を飲もうとはしなかった。そのため、しびれを切らした犯人の一人が見せしめとして30分ごとに一人、人質を殺すと言い出した。そして、最初に選ばれたのが俺だった。俺をかばうように父と母は抵抗した。その結果、父と母は銃に撃たれて、帰らぬ人となった。その10分後くらいに特殊部隊が突入し、犯行グループは捕まった。
俺は自分を呪った。力の使い方を覚えておけば、父と母は死なずに済んだかもそれないと。そして俺はテロ組織<混沌の夜明けカオ・オロール>を潰すことを決意した。俺はまず、その犯人のアジトを探した。インターネットで調べたり、聞き込みをしたりと色々した。半年後ぐらい探し続けていると、ある日40歳くらいのガタイの良い男に話しかけられた。名前は神童闘志(しんどうとうし)。その男は俺と同じ身体系魔法<エクストラデーモン>の持ち主だったが、国の特殊部隊<切り札ジョーカー>の隊長であり、神童格闘術の継承者でもあった。それからというもの、その男の部隊に入り、力の使い方、魔力の制御、格闘術などを学んだ。そこで初めて気づいたことが2つあった。
1つは、俺の能力は<エクストラデーモン>の亜種であること。そしてもう1つは、俺の魔力量は常人の50倍であること。その使い方を学び、親を殺したテロ組織の壊滅に挑むことにしたのだ。
そして、アジトを<切り札ジョーカー>の構成員が見つけた。ボスの名前はライアン・カイザー、能力者であり能力は創造系魔法<ファブリケウティ>。その名の通り一度見た道具を生み出す能力。ランクはA。そして遂に、俺たちはアジトへ乗り込んだ。だが、ライアンはアジトにはいなかった。何処か別のアジトがあったのだろうか、そこには構成員しかいなかったのだ。俺は怒りをそいつらにぶつけた。その結果、五分で跡形もなくアジトは消え去った。文字通り跡形もなく。俺一人だけの力によって。のちに、身体系魔法なのにそれほどの力を有していたため魔法協会からは<破壊者バーサーカー>と二つ名をつけられた。
因みに、神童さんはビクトリア学園の理事長と繋がりがあり、それ故に、俺はこの学校を受けろと神童さんに勧められ、入ったのだ。
これらが俺の過去である。まだライアンは捕まっていないため、この手で倒したいのだ。ー


ふと過去を思い出した俺は、写真を元の位置に戻しベットに横たわった。目を閉じるとすぐに、深い眠りへと落ちていったのだった。


朝起きると、いつも通り支度をして朝ごはんを作り、学校に向かった。
教室に着くと、黒板に百合の文字で、「着替えて第1演習場に9時までに来い」と書かれていたため、クラスの人たちは更衣室に向かい、着替えていた。だが俺は学校にギリギリについたため、着替えるのが遅くなった。
「更衣室行くかー」
呑気に更衣室へ向かった。男子更衣室のドアを開けると、そこには下着姿の黒髪ロングで容姿端麗な方がいた。間違いない、焔舞だ。俺はもう一度、ドアに書いてある表記を見た。しっかりと「男子更衣室」と書いてある。だが、舞の方は顔を最大限にまで赤くして、
「変態ーっ!」
と言いながら強烈なビンタをお見舞いしてきた。その勢いに押され、よろけつつ謝る俺。
「悪かった、これはその、ほら、事故なんだっ。見るつもりはなかったし、ごめんっ」と深々と頭を下げて謝ると、スタスタと舞は着替えて出て行ってしまった。完全に怒っているだろう。そして謝ってから気づいたが、俺は悪くない。間違っているのは舞の方なのだと。だが、世間はどっちを信じるだろうか?成績優秀なものと最下位のものを。答えは言わずもがな。盛大にやらかしたと思った俺は急いで第1演習場に向かったのだった。


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