異世界は現実だ!

竹華 彗美

本能で迷子なのだ!

 第六章
 第131話、本能で迷子なのだ!


 迷子の女の子は話しかけても泣くだけだった。こういう時は

「いないいない〜…ばあ!!」
「えーん!!!」

 さらに泣き出してしもうた。こういう時女性陣がいると助かるんだけど……。完全に"犬のおまわりさん"状態だ。その後も泣き止ますために試行錯誤したが無駄で困っていると遠くにクルルさんの姿が!僕は走っていきクルルさんを呼んでくる。

「この子、迷子みたいで。こういうことは女性の方が専門分野じゃないかな?と思ったんですけど……」
「そうですか、そういうことなら任せてください!」

 そう言い女の子の頭をクルルさんが撫でると泣き止んだ。はや!嘘だろ?なんだこの違いは!僕が頭を撫でたら手どかされたのに!やはりそういう本能というのがあるのか?

「あなた、名前は?」
「キミカ。」
「キミカちゃんね!お母さんは?」
「いなくなっちゃった……」
「分かったわ、一緒に探しましょ。あきらさん、そこらへんを歩いてキミカちゃんのお母さん、探して来てください!私たちはあちらから探します!」
「分かりました!」

 さすがクルルさん。指示が早い。僕は言われた通りキミカちゃんの名前を大声で言いながら街を歩く。するとその通りを歩く駐在の兵士たちが僕に話しかけて来た。

「なんですか?」
「すみません、ここから住宅地に入りますのでなるべく静かな声でお願いします。」
「あ、今迷子の子がいてそのお母さんを探してあげているのですが……。」
「本当ですか!?それはそれはありがとうございます!その子はどこに?」
「もう一人、僕の仲間が連れながら探しています。」
「なるほど。わたし達も協力いたします!その子の名前は?」
「キミカちゃんです。」
「キミカ…了解致しました!わたし達は住宅地を探してまいります。あ、そうだ!あなたの名前は?」
「冒険者のかわごえ あきらと申します。」
「かわごえ…あきら?どこかで聞いたことのある……!!!あのかわごえ あきらさんですか?強魔族を倒したと名の高い!」
「は…」
「そうでしたか!これはこれは失礼いたしました!やはり優しい方なのですね!感激いたしました!では見つけられましたらご報告ください!報酬金をお渡しいたいます!」
「報酬なんて!大丈夫ですよ?」
「いやいやそういうわけには!わたしどもが怒られてしまいますので!では!」

 そういうと若いとは言っても僕よりは年上だがその兵士たちは走って行った。

 僕は道をUターンし、名前を呼び続ける。すると一人の女性が駆けてきた。

「キミカを見ましたか?」
「はい、ではあなたが?」
「はい。キミカの母です。わたしが目を離した隙に…」
「お母さ〜ん!!」
「キミカ!?」
「お母さん!…怖かったよ〜!」
「お母さんも心配したのよ!」
「でもね!このお姉ちゃんとお兄ちゃんが助けてくれたの!ありがとう!」

 満面の笑みでいわれこちらは安堵と共ににっこりとしてしまう。

「よかったです!…ではあきらさん、わたしはここら辺で。服屋でお金を払えずこちらに来てしまったので!」
「それは早くいきなさいよ!……でもありがとうございました。助かりました。」
「はい!」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。本当にありがとう!またね〜!」

 その言葉を聞き僕とクルルさんはその場を後にする。その後駐在の兵士さんたちに見つかったことを報告し銀貨五枚をもらった。こういうこともいいな〜と思った。


 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品