異世界は現実だ!

竹華 彗美

結界で蜃気楼なのだ!

 第三章
 第34話、結界で蜃気楼なのだ!


 僕は町長さんの話をよく聞く。

「順を追って話すと。
むかしむかし、この町はもっと栄えておったそうでな。何人か魔術師もいたそうなのじゃ。今はおらんがの。なぜ魔術師がいたか。それは砂漠からくる盗賊たちを追っ払うため、あとはこの町それから今は海のようになっているここからずっと行った先に帝国があるんじゃがその帝国の名はメンメル帝国。この町はそのメンメル帝国の領土なのじゃ。メンメル帝国と砂漠の国トミル王国は仲が悪くてな。戦争をしとった。今はしとらんがな。そしてこの町は二つの国の間の町、ということで戦争の一番の拠点となっていた。メンメル帝国はトミル王国よりも戦力は低い。なのでここでなるべく戦争を止めるために、かなり強力な魔術師がいたというわけじゃ。やはり剣より魔法というのは昔は当たり前だったからな。その力でなんとか守っていた。
 ところがある年、トミル王国は盗賊たちと結託し、この町に攻め込んできた。この町も多大な被害を受けた。なんとか一度は追い返すことに成功したものの次は危ないと思った数人の魔術師たちがちょうどここ、砂漠と海と思われているこの直線上に太陽の熱を一切通さず、気温を冷ますという結界を張ったのだよ。なぜそんなことをしたか。それは一人の魔術師が面白いことを知っててな。気温と地面の温度が極端に違うと光の反射で幻が生まれるとかなんちゃらとかいう話をしたんじゃ。それでその話を信じた魔術師たちが先の強力な結界を張った。そうするとどうだ。目の前は海のようになってしまったというわけだ。
 そこからは簡単。次攻め込んできた時には町からは皆結界内に逃げて町からは海にしか見えない場所で待機していた。まあ当たり前だがいきなりできた海が不審だと思ったのかトミル王国の兵士が何人か入ってきたが、その時にはすかさず殺してしまったので数日後トミル王国に潜入してみると、"メンメルは海と化した。水の神がトミルに恵みをもたらしたのだ!"とか"ニアーの町の住民は皆あの海に攫われて幽霊と化した。その証拠にあの海に行ったっきり帰ってこない兵士がいる。ニアーの町の住民の幽霊が海底へ引きずりこんだんだ"などと噂されていてニアーの町は幽霊の町と認識されるようになってしまった。
 まあそれからというもの平和だったのだがニ年前ほどにミンミル帝王がトミル王国に行き戦争の終結と平和友好条約を結んだ。そこからはトミル王国にはこの町の結界の話が伝わり幽霊の町からは脱却したんだけどな。でもまだ信じてる人がいるらしく全く困った話じゃよ。」
「なるほど……なんとなく理解できました。」

 まあ言ったところの蜃気楼だな。この世界も蜃気楼のような知識があるなんて少し驚いた。ワンストさんが言ってた幽霊の町の意味も分かったな。ということはあそこのおじいさんに僕はおちょくられたのか。知ってるのなら"ご冗談を"とか言えたかもしれないが知らなければ幽霊なんて信じられない話だろ。これは……。
 まあ……少し信じちゃったけど。
 信じちゃったけどね!!!!

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