300年 吸血 鬼ごっこ

源 蛍

プロローグ? 〜300年前の約束〜

 戦乱の世、揺らめく橙の炎に包まれた小さな国。
 この戦いは人同士のものではなく、「人であることを終えた者達」との戦いである。彼等の好物は血であり、それも女性に限り、鋭い牙で吸い付くことから 「吸血鬼」 と呼ばれ恐れられていた。
 だが、この国は滅びかけると同時に吸血鬼達との戦いを始めたのだ。人々は武器をとり、彼等の対抗するも殆ど意味もなく倒れ死んでいく。もはや滅びることは免れない状況だった……

 そんな中、一際大きな建物の中、国の王女としてそれを見守る銀色で長髪の女性がいた。彼女の名はミルフィ。「聖女」と呼ばれ、吸血鬼達に狙われているのだ。
 聖女の血はなぜか吸血鬼達にとっても高貴なものらしく、一滴飲むだけで数年分寿命が延びるという言い伝えがある。……なぜだかは不明だ。
 
 「なぜこの国には貴方達がいるのですか? 貴方達がいなければこの国は生きていたはずです。今この国は死んでると言っても過言ではないでしょう」

 誰かに話しかけるように呟く王女の目の前にあるガラスの戸には、体色は多少黒っぽく、何より光り輝くような肩までくらいの金髪が目立つ青年が映っていた。彼は吸血鬼の一人、名をヴォルフと言う。

 「さあね、一人目が生まれたのがココだった……。それだけでしょう」

 着ていた黒くツヤのある異質なコートを脱ぎながら彼は答えた。そして物音も立てずそっと王女に近づくと、その大きくたくましい手のひらを王女の手に重ね、共に国の様子を覗く。

 「もしも私達な存在しなくとも、この醜くちっぽけな国はいずれ滅んでいたでしょう」


 「そんなこと分からないわ! 少なくとも、私がそうはさせません」

 ヴォルフは眉をハの字に曲げ、呆れてため息を吐くと右側に置いてあった皺も殆どなく、全く使用されていないように綺麗なベッドに座り込んだ。そのままミルフィを覗き込むように見ると、腕を強引に引き、抱き寄せた。

 「貴女の聖なる血を、この私に捧げて頂けませんか?」

 耳元で吹き込むように囁くヴォルフの顔は、生き血をすすり飲む悪魔のような表情だった。
 ミルフィは何かを感じたかのように一瞬瞼を閉じ、ヴォルフの腕を解き仁王立ちで彼を指差す。

 「血が欲しいのなら、この戦いを止めて見せてください。それが出来たのなら、私の血を分けて差し上げます」

 交換条件を差し出したミルフィの身体は小刻みに震えていた。ヴォルフはムダな足掻きと思いつつも、それを了解し、炎が燃え盛る町へ出て行った。
だが先程のミルフィの震えは怯えていたわけではなかったのだ……

 国の住民以外の全てを惨殺しミルフィの居た王宮の寝室へと戻ると、そこにいたのは先に見た威勢のよく元気な女性ではなく、冷たくなり、動く気配のない聖女の死体だった。
 彼女は肺に病を持っており、今回の戦乱の炎から出る二酸化炭素により、十分な呼吸が出来なくなり、死んでしまったのだ。
 ヴォルフは傍に寄ると彼女の冷えた手掴み、祈るようにそっと呟いた。

ーー300年後、貴女の血を頂きに参りますーー

……と。





 国は新たな国と変わり、戦乱を全く感じなくなった世の中となった新時代。
 あれから300年が経ったのだ。土地は広がり、建物も増え、文明は栄え、活気溢れる時代がやってきたのだ。

 ジリリリリリリリリリ

 AM:6時40分。司道家の中に大音量で響いたのは、肩にギリギリ届かないくらいの黒髪で身長は164㎝ほどのちょっとガサツさのある女子高生、凌菜の目覚まし時計だった。

 「だああああ! うるさい! もうちょっと静かになってくんねーかなぁ ︎」

 あろうことか目覚まし時計に睨みを利かせどなっている。
 ……自分に呆れていた。

 「やっべいっそげいっそげ! 待ち合わせに遅れる!」

 朝ご飯も食べず、制服は男子用を着用し、殆ど空のバッグを持ち、家に鍵もかけずにダッシュで飛び出す。

 「……また見たなあの夢……。私の前世、だっけな……。いいや、後で」

 意味深長な発言をしながら駆けていく凌菜と別に、深く長い眠りから覚めようとする、妖気漂う者がいた。


 こうして二人の運命の歯車はまた回り始める……


 







 大して書き方すらわかってないニワカでございますが、自作したストーリーを書きたくて、そして読んで頂きたくて作りました。
 それでもいいよと、快く受け入れてくれたらとても光栄です。
 この話は長くは続かないと思いますが、読んで頂けたらありがたいです。よろしくお願いいたします。

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