夢日記

日々谷紺

悲劇のドライブ

画材を積んだ外国人一行の車内。車は大きなキャンピングカー。筆やらペンやらを剥き出しのまま、筆洗バケツかペン立ての様な容器にいくつも差し込んでいる。それを使って何か描きながら進む。

「だらしないね、しまいなよ」
と、同行している私の母がいう。
「これがかっこいいんだ」
と、外国人のひとり。何がかっこいいのか分からない。

同車内に犬が乗っている。犬種はゴールデンレトリバー。私とその犬の飼い主は、車内の2段ベッドの上にいる。犬が飼い主を探して下で暴れている。ドンドンと振動が伝わってくる。
「もう、しょうがないなー」などと飼い主が笑っている。

すると、嫌な音とともに突如静かになる。
母が慌てて犬に駆け寄った。こちらからは様子が窺えない。犬は、広げっぱなしの画材が体に刺さって重傷だった。
「ああ、なぜしまっておかなかったんだ、なにがかっこいいんだ、ああ」
と激しく後悔している飼い主。そんな事より急いで病院へ、と自転車を外に出す母。なぜ今乗っている車で行こうとしないのか誰も疑問に思わない。

飼い主が自転車をこぎ、後ろに母、私と三人乗りで病院へ急ぐ。犬はどこへいったのか。飼い主は外国人のため地理感がなく母が案内している。

青い動物病院へ到着。その頃にはすっかり夜も更けていた。しかし犬は母のその場での適切な処置によって一命を取り留めたらしい。
母と飼い主と犬、そして医師が病室で話している。その病室がなぜか学校の理科室の様な部屋だった。ホムンクルスでも精製しそうな機器もある。

私は廊下の突き当たりの窓際で恐らく本を読んでいた。すると視界の端で、何か白いものが落下するのが映った。
どさっ、という音。

ふっと顔を上げ、窓の外を注視する。
隣接しているのは、動物病院ではなく人間の為の病院。病院なのにどうしてかベランダの迫り出したマンションの様な構造の、真白い建物だ。

下から、通行人の誰かの悲鳴が響いてきた。
「あーあー?あー!あーあー!」
とカラスのように間抜けな悲鳴を上げている。
あれは自殺だ。白い患者服を着た女がベランダから倒れ込むように落ちたのだ。

恐ろしくなり、犬達のいる病室へ行った。
全員疲弊しきって、動揺する私の言動を聞き流している。
犬はなぜか縮んでいた。 

20160125

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