俺の異世界転生はチートスキルが無のようです

松竹梅の松茸

第2話 実は……

「ガサッ」

 不意に背後で音がした。明らかに自然の音ではない。ではなんの音だろうか、答えは簡単だ。
ここは剣と魔法の世界、科学の発展した現代日本とはまるで異なる世界。そんなファンタジーな世界だ、当然いるだろう。

そう、モンスターが…


 俺は恐る恐る振り返る。そこには、緑色の肌に短いが節ばっている手足、口からは牙が除き、目は黄色く濁っている、身長80cmほどの異形の者がそこにいた。
手にはナイフを持ち、品定めをするような視線を俺に向けている。
確信した、こいつは敵だ、と。

 逃げなきゃ!

 その言葉が俺の脳内を埋めつくした。立ち上がろうと地面に手をついた、その時

「グギャ」
 
 奴の目つきが変わった。獲物を狙うような鋭い目つきへと。逃げられない、分かってしまった。奴は俺を逃がすつもりはない、俺には逃げの選択肢は無いのだと。

 じりじりと、奴は俺との距離を詰めてくる。俺の死がじわじわと迫ってくる。
なんて、あっけないんだ。せっかく転生したのに、一瞬で詰んだ。

「…ははは……」

 もはや、笑えてくる。異世界で素晴らしい生活を送ってやろうと意気込んできたら、このザマだ。
どうせ、俺はここで死ぬ。逃げようとして殺されるか、黙って殺されるか、抵抗して殺されるか。この三択だ。
…………待てよ
逃げようとしたら殺される、黙っていたら殺される、それは不変だ。だが、抵抗しても必ず殺されるのか?
否、最後の選択肢にはわずかながら俺が生き残る道が残されているじゃないか。

「はぁぁぁぁ」

 ゆっくりと息を吐き出す。そして、思考を切り替える。まだ諦めるには早い、どうやって抗おうか、と。もう1度大きく息を吸って吐き出す。覚悟は決まった。

 周囲を見渡す、なにか武器になるようなものは……木の枝ぐらいか。なんとも頼りない。だが素手よりは何倍もマシだ。生き残るためだ、何だってやってやるさ。

 木の枝を握りしめ、奴と向かい合う。じっとりと手のひらは汗ばみ、口の中はカラカラに乾いて、心臓の音がやけに大きく聞こえる。
互いにタイミングをさぐり合う。1秒1秒がやけに長く感じられる。俺は枝を短剣に見立て、いざ奴に襲いかかろうとしたまさにその瞬間

ピコンッ

この場に不釣り合いな電子音に続き機械的な音声がが俺の脳内に響いた

『戦闘状態ヘノ移行ヲ確認。スキル《短剣術・超級》ヲ習得』

…何だって?
何だ?今の声は、それに《短剣術》だって?

 聞こえた声へと意識を向けた俺は致命的な隙をつくってしまった。
当然奴が襲いかかってくる。

「しまっ…」

既に奴は俺に肉薄していた。完璧に不意をつかれ、俺の心臓へと一直線に襲いかかってくるナイフを見つめていた。
……あれ?
なんで、心臓に一直線にくるって分かるんだ?
奴の剣筋がはっきりと予測できた。それに自分がどう動けばいいのかもはっきりと頭に浮かんでいる。
俺は困惑しつつも、浮かんだとおりに動いた。


バシッッ 
奴の手からナイフを叩き落とし、そのまま奴の目を枝でズブリと貫いた。紫色の気味の悪い液体が奴の目からぼたぼたと滴り落ちる。

「グギャァァアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

 自身の勝利を確信していたであろう奴は、突然の出来事と目を潰された痛みでうずくまる。
俺は奴の落としたナイフをその間に拾い上げうずくまっている奴の首を掻っ切った。

 奴はそのまま絶命し、俺は生きのびることができたのだが、安易に喜ぶことはできなかった。
なぜ、急に奴の動きが読めたのか……
俺にはスキルが無かったはずなのだ。 

 ん?スキル?……そういえば《短剣術》を習得したとかなんとか。
おもむろに自身のステータスを開き、その内容に俺は驚愕した。

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橘 成清 17歳 男 Lv 1→10

職業:無
称号:無(転生者)

〈基本能力〉
  体力:20→1000
  筋力:10→500
  防御力:10→500
  敏捷力:10→500
  魔力:10→500
  魔法耐性:10→500
〈スキル〉
  無
  短剣術・超級

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 なんだこれは!?能力が急激に増加している!?
それにスキルを手に入れたのに《無》の表示が消えていない。1体どういうことなんだ。
理解できないまま、スキル欄にある《無》に触れてみた。

……なんとスキルの詳細が表示されたではないか。

スキル《無》----------------------------------------------------------
 
  系統:無属性
  詳細:自身の経験、または戦闘においての自身の行
     動によってスキル習得する。自身の本気度合   
     いによって、習得するスキルの等級が変化す
     る。
     どの系統にも属さないため、全てのスキルを
     習得可能。
     自身の得た経験値は全てがステータス、スキ     
     ルに還元される。
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「………………」
言葉がでてこなかった。なんだこのスキル、とんでもないチートスキルじゃないか。

さっきは戦闘において俺は木の枝を短剣に見立てていた、それに死を覚悟していた。
それで、習得したのが《短剣術・超級》ってわけか。
なるほど、《短剣術・超級》のおかげで俺は奴の動きが読めたということか。

つまり、戦えば戦うほど俺はスキルも覚えてステータスも上昇する、というわけか
なら、これからやることは1つだ

「手当たり次第に戦ってやるよ」

俺はモンスターを探しに歩き始めた。




長くなってしまいました。初の戦闘シーンということで気合いが入ってしまいました…
アドバイスなどがありましたら是非コメントをよろしくお願いします。
     

コメント

  • 暇人001

    いいですね!とても面白いです!
    初めて作られた作品とは思えないほど主人公の感情がしっかりと伝わってきます!

    1
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